希望あふれる未来を照らす、星と夜行列車の光 〜 さだまさし 「天狼星(シリウス)に」
↑YouTube にリンクします。曲をお聴きいただけます。
夜行列車
深夜、目的地へと人を運ぶ遠距離交通。
この列車を舞台にした作品は数多いですね。同じ夜行ならバスもありますが、列車とは空間の広さが違う。空間=舞台と捉えるなら、それは広いほうが物語の舞台としては、よりふさわしい。
この夜行列車、高度経済成長を遂げた日本では、東京から地方へと向かう路線で描かれることが多い。中央から地方へ。現在の居住地から地元へ、故郷へと。といった風に、その移動の目的は種々あれど、そこにドラマやそれぞれのストーリがあることは想像に難くない。
それぞれの物語
「津軽海峡冬景色」という曲も東京から地方への物語。私は上野発の夜行列車で北へ帰ってきた。一人で。そして一人で、人々が寝静まった暗闇の中を行く、津軽海峡を渡る連絡船に乗り込む。これだけで背景の物語が浮かんできますよね。
さだまさしさんも、若かりし頃、長崎へ向かう夜行列車に乗り込んだことがあったそうですね 。この時は、辛い帰郷だったようです。バイオリンの夢やぶれだったかと思います。
帰郷という言葉には、「北の国から」のとあるTVシリーズ「帰郷」といい、どことなく、辛い悲しいイメージがありますが、一方では、幸せな帰郷もあるはずです。
天狼星(シリウス)に
シリウスというのは冬の夜空にひときわ大きく輝く星。天狼星とも書きます。
闇になる時間が早く長い時期。そんな夜には、星の輝きは辺りを照らす光であり、希望の象徴ではなかったでしょうか。
そして、人が寝静まった闇の中を、故郷へとひた走る夜行列車の車窓から漏れる灯も、闇に浮かぶ一筋の明かりとなって、希望の象徴となります。
この、さだまさしさんの楽曲は、お父さんよりも愛する人ができてしまった娘が主人公。彼女は愛する人の住む故郷へと夜行列車で一人向かう。
幸せな旅路ですが、反対を押し切って出てきたのか、お父さんのことが気がかりだったりする。
窓から見上げる空にはシリウスが見えた。
彼女はシリウスの光と、闇を駆ける夜行列車が作る一筋の光に守られて、きっと幸せな生活を手にするはず。
この曲を収録したアルバムは『夢の吹く頃』というタイトル。込められたのは、「誰もが自分を後押ししてくれる希望の風が吹くのを待っている」という思い。
この曲の主人公である彼女には、希望を持った大いなる風が吹いてきている。そんな風に思います。