Swiftと連携したステーブルコインPJでグローバル市場を取りにいく話
Datachainの久田です。
Datachainは本日、Progmatと共に、Swift(国際銀行間通信協会)と連携し、ステーブルコインを使ったクロスボーダー送金基盤の構築に向けたプロジェクトを発表しました。
Swiftの名前は、ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁の手段として耳にされた方も多いでしょう。国際的な金融取引を独自のメッセージ通信網を使って実行している組織で、世界200以上の国と地域にある1万1000超の金融機関を結んでいます。
世界の国際金融取引を事実上支えるSwiftと、日本のテックスタートアップであるDatachainがプロジェクトをご一緒できる機会を得られ、大きな責任を感じています。
プレスリリースはこちら。
Datachainは2018年の創業時から、「日本発」の「グローバル×ディープテック」として「デファクトとなるインフラ」をつくることを目的に、技術と事業機会のR&Dを続けてきました。
「デカコーン(企業価値100億ドル以上のスタートアップ)になるには、グローバル×ディープテックで勝つ必要がある」とよく言われます。
ただ、それは非常に難しいことです。ファーストペンギンとして、いち早く大きな技術変革を実現しなければなりません。
しかし、Swiftとのプロジェクト実現により、Datachainとしてデカコーンを目指す大きな一歩を踏み出せたと考えています。理由は2つあります。
1つは、ステーブルコイン(法定通貨などと価格を連動させたデジタル通貨)に関しては間違いなく、日本が世界をリードしているという点です。
日本は2023年6月、先進国で初めて、ステーブルコインを規制する改正資金決済法(ステーブルコイン法)を施行しました。
欧米の先進国も法整備の検討を進めていますが、まだまだこれからです。その意味で、世界に先駆けてルールメイキングをされた方々の功績は非常に大きいと思います。
そして何より、日本では、国際的な金融機関とともにステーブルコインを使った国際送金の商用化に向けた取り組みが始まっています。それは他国にはない動きです。
2つ目の理由は、クロスボーダー送金市場が、2022年時点で182兆ドル(約2京8,000兆円)という莫大な規模になっているという点です。
そこで起こるイノベーションを、Datachainを含めた日本企業が牽引していこうとしている。そのインパクトをどれほどの人がご存知でしょうか。
当然、それだけ巨大な市場なので、今後一気に競争が激化していくことは間違いありません。ステーブルコイン以外の決済向けデジタル通貨を発行していく動きもあります。
それらを踏まえると、日本のアドバンテージはおそらく半年か1年程度。巨大なクロスボーダー送金市場をめぐる雌雄は、2024年から2025年のあいだに決するでしょう。
このnoteは、雌雄を決するこの大勝負をともに戦う仲間を集めたい、という想いで書いています。
Datachainにジョインいただける方も、外部のパートナーシップなどの形でご一緒できる方も、ご関心を持っていただけるなら、時間をおかず、すぐ私たちにご連絡ください。
いかに早くプロダクトを正式ローンチし、いかに最初に大きなシェアを取るか。スピードがセンターピンです。
Datachainでの仕事の意義や報酬などについては、下記にて別途まとめていますので、よろしければご覧ください。
それでは、ステーブルコインなどに詳しくない方にも、できる限りわかりやすくまとめてまいりますので、読んでいただけると嬉しいです。
この記事のサマリ
Datachainは、インフラ/プロトコルレイヤであるインターオペラビリティ(相互運用性)と、アプリケーションレイヤであるステーブルコイン関連の開発をしている会社
ブロックチェーン上で発行されるステーブルコインは、法定通貨と価格が連動するため決済手段として使いやすいというメリットがある。ステーブルコインによってグローバル金融の形が大きく変わろうとしている
DatachainがSwiftと連携できた理由は3点。1. 主要国初のステーブルコイン規制が整備されていること、2.国際的な金融機関が主導していること、3.Swiftや銀行が不可欠であるというアイデアを示せたこと
現在Datachainおよび日本はステーブルコインにおいてリードしているが、実用化されるプロダクトをローンチしないと意味がない。そのためには、ともに戦う仲間が最重要
Datachainについて
Datachainは「世界を透過的にひとつのネットワークとして扱えるようにする」というパーパスを掲げ(こちらについては想いがあるので、機会があれば別記事で)、これまでブロックチェーン技術のR&Dおよび実用化に向けた開発を行ってきました。
特に、異なるブロックチェーン間を繋ぐインターオペラビリティ(相互運用性)技術のインフラ/プロトコルレイヤの開発を主軸にしてきました。
その結果、Datachainは、ブロックチェーン間の通信方法として標準化されているプロトコルのうち、最大かつデファクトのIBC(Inter-Blockchain Communication)を用いたインターオペラビリティ技術において、世界最大のコントリビュータに成長しました。すでに技術的な実績を重ねているという点で、グローバルで大きなプレゼンスを持っています。
ここ1年で、他社とのパートナーシップも強化しています。
まず、ブロックチェーン間で取引可能なクロスチェーンブリッジ開発を行うTOKIとパートナーシップを締結しました。クロスチェーンブリッジの共同開発を進めており、2024年にローンチする予定です。
さらに、日本の3大メガバンクグループをはじめ、日本を代表する金融機関などと共同で、デジタルアセット市場におけるナショナルインフラの構築を目的とするProgmat(プログマ)を設立しました。
Datachainはスタートアップとして唯一、同社に参画しており、ブロックチェーン技術に関する領域を担っています。Progmatとは現在、今回発表したSwiftにおけるクロスボーダー送金事業に、共同で取り組んでいます。
また、Datachainはインターオペラビリティ以外にも、アプリケーションレイヤとして、ステーブルコインのコントラクトやクロスボーダー決済プロダクトの開発も行っています。ですので、ブロックチェーンの会社とはいえ、Web2のバックエンドやフロントエンドを支えてきたエンジニアの方も活躍しています。
以上が、簡単ですが、Datachainの紹介になります。
もっと詳しく事業内容をお伝えしないと、具体的に何をしている会社かわかりにくいかもしれません。
ですが、まずはいったん、インフラ/プロトコルレイヤであるインターオペラビリティと、アプリケーションレイヤであるステーブルコイン関連の開発をしている、くらいのざっくりした捉え方で理解していただければ大丈夫です。
それでは、次の章から、ステーブルコインとSwiftとのプロジェクトについて解説していきます。
ステーブルコインが変えるグローバル金融の形
ステーブルコインとは、円やドルといった法定通貨などを裏付け資産とし、それと価格が連動する通貨のことです。ビットコインなどの暗号資産と異なり、たとえば1コイン=1ドルといった形で価格を安定させることができるため、実社会での決済に適していると言えます。
そして、リアルワールドの送金において、最も有望な市場であると言われている領域が、国をまたいだ国際送金=クロスボーダー送金です。
新興国に送金する際に着金まで3-4日かかったり、外国送金の手数料が5,000-10,000円と高額だったりと、特有の“障壁”があることをご存知の方も多いでしょう。
法定通貨を用いる現状のクロスボーダー送金では、国家をまたぐ際に、コルレス銀行と呼ばれる中継銀行を複数経由することで送金コストが高くなり、送金に時間がかかる傾向があるのです(主要国同士の外国送金は早いです)。
一方、ステーブルコインの場合は、コルレス銀行が必要ありません。
仮に送金先が新興国だとしても、ブロックチェーン上でトランザクション(取引)が実行されれば、複数のコルレス銀行をまたぐことなく、即時かつ安価な決済が可能になると期待されています。
クロスボーダー送金の課題である「送金コスト」「着金スピード」「アクセス」「透明性」については、G20も2027年までに解決すべき目標と位置づけています。この4項目において、ステーブルコインは大きく貢献できるでしょう。
シンプルに言えば、ステーブルコインによって「早い、安い、便利」というメリット、具体的には24時間365日間稼働し、送金・着金がいつでも高速かつ安価に行える状況が将来的に実現できると考えています。
海外へ出稼ぎに出ている新興国の方も、母国に安価かつ高速に送金できるようになるでしょう。
今回のSwiftとのプロジェクト名は『Project Pax』。Paxはラテン語で「平和」という意味です。ステーブルコインによって、新興国との貿易が大幅に増大し、経済格差が縮まることで、世界平和の実現に貢献したい、という想いを込めて命名しました。
次に、市場についても少し触れさせてください。
ステーブルコインの発行残高は現在、世界で25兆円以上あります(多少の変動はありますが)。急成長しているとはいえ、法定通貨の残高に比べ0.5%程度の規模に過ぎません。
ご自身や周囲を見渡しても、ステーブルコインを利用している人はほとんどいないと思います。ステーブルコインは実社会でなく、暗号資産取引などクリプトでの利用にほぼ限られているからです。
ただ、そのようなクリプトのユースケースだけであっても、ステーブルコイン領域で大きなシェアを獲得している企業の利益は莫大です。
例えば、ステーブルコイン発行額で世界トップの香港Tether社は、2024年の第1四半期だけで、純利益が約7,000億円に達しています。一方、日本の3大メガバンクは、同期間(2024年1〜3月)の純利益で合計約6,300億円となっています。
両者を比較すると、日本ではほとんど誰にも知られていないTether社の収益性の高さがわかるでしょう。
それはTether社だけの話ではありません。ステーブルコイン市場は2028年に、現在の15倍以上となる400兆円以上の市場規模に成長すると予想されているのです。
ここでは、現在のようなクリプトユースケースでなく、実社会の法人間やリテール決済が成長を牽引するでしょう。
冒頭で触れたように、現在行われている法定通貨によるクロスボーダー送金の市場は、2022年時点で182兆ドル(約2京8,000兆円)という莫大な規模になっています。
今後数年でその10%がステーブルコイン化するかもしれないと言ったら、ステーブルコイン市場の大きさがイメージできるのではないでしょうか。
ステーブルコインによって、グローバル金融の形が大きく変わろうとしているのです。
簡単ですが、ここまで今回のプロジェクトの意義や事業機会のインパクトについて、お伝えしてきました。
冒頭でもお伝えしたように、日本が主導していける大きなチャンスがあることの価値が、少しでも伝わってくれたら嬉しいです。
DatachainはなぜSwiftとの連携プロジェクトを実現できたのか
ステーブルコインの意義や機会について理解はしたけれど、ではなぜそのような重要な領域で、日本発の企業であるDatachainやProgmatが、Swiftと連携したステーブルコインプロジェクトを実現できたのだろう?と疑問に思うかもしれません。
それには、3つのポイントがあります。
主要国で初めてステーブルコイン規制ができたこと
国際的な金融機関が主導していること
Swiftや銀行が不可欠であるというアイデアを示せたこと
3点目については、少し補足が必要かもしれません。
web3界隈の方にとって、ステーブルコインの利点のひとつに、銀行などを必要としない、P2P送金があるということはご存知でしょう。
個人間や少額の送金であれば問題ないかもしれません。でも、高額な法人間の決済において、少なくとも現状は、銀行やSwiftの存在が不可欠だと捉えています。
国際金融秩序を保つためには、マネー・ロンダリングやテロへの資金供与を防ぐことが不可欠であり、銀行が重要な役割を担っているからです。
また、企業や個人がWallet(ステーブルコインや暗号資産を管理するためのソフトウェア)を保有、管理するハードルも高く、Walletの鍵を紛失して全資産を失ってしまうかもしれません。そうした事態は、実社会では許容しがたいでしょう。
さらに言えば、銀行にとっては法人間送金のビジネスをステーブルコインに完全に取って代わられることは許容できないでしょうし、企業からしても、まだまだ法定通貨での決済や融資などの取引が多い現状では、銀行との関係性は重要です。
他にも挙げ出したらきりがないくらい、銀行の存在は大きいのです。
今回のプロジェクトでは、ステーブルコインを導入する銀行が、追加のシステムやオペレーション投資を抑えた上で、ステーブルコイン送金対応を実現できるよう、設計していきます。
実現すれば、既存のオンラインバンキングの追加機能として「ステーブルコイン送金」というメニューが登場し、送金する側の企業や個人がそのメニューを選択するだけで送金できるようになるかもしれません。
何かイノベーションを起こすには、既存のステークホルダーにとっての影響を、定性/定量的に整理し、共創していく必要があります。
技術によって、これまで不可能だったことが可能になりますし、その構造変革によって、改善の延長にはない「ベネフィット」が生み出せます。
TradFi(伝統的金融機関)とステーブルコインの共存について、具体的なアイデアをSwiftに世界で初めて示せたこと。それが今回のプロジェクトに繋がったと解釈しています。
この一年でステーブルコインの雌雄が決する
最後に強くお伝えしたいのは、「これからの1年で勝敗が決まる」ということです。
現時点で「ステーブルコインにおいて日本がリードしている」ことはお伝えした通り、間違いないでしょう。「Swiftと連携したクロスボーダー送金基盤の共同検討が始まっている」ことのインパクトも非常に大きいです。
また、さらに多くの金融機関や企業との座組みも、これから形になっていきます。
ただし、世界中の人に、安心/安全で、安価で、高速で、便利なステーブルコイン決済プロダクトを開発し、お届けしないと、何の意味もありません。
世界で初めて、リアルワールドで、銀行や企業/個人が広く利用可能な、スケールする製品をローンチしなければなりません。
また、ステーブルコインだけでなく、トークナイズド・デポジットという、預金型のデジタルマネーとの競争もあります。
例えば、JPモルガンのJPMコインは、2023年時点で1,500億円/日の取引量があり、2024-2025年にはその10倍の1.5兆円/日にまで成長するとされています(同行の取引全体の1%に相当)。
ステーブルコイン市場で世界初の製品をローンチするために最も重要なのは、ともに戦ってくれる仲間を集めることです。
ブロックチェーンのコア開発を担っていただく方はもちろんですが、人数としてはアプリケーションレイヤの開発をお任せできる多くの方々が必要です。
ブロックチェーンに関する経験や、現時点での知識については問いません。従来のWeb開発において、技術的なチャレンジをしてきた方と一緒に、新たなチャレンジをしていきたいと思っています。
また少数ですが、BizDevやコーポレートなど、ビジネスサイドの方も全力募集しています。
最後に、Datachainの魅力を3つお伝えします。
1. グローバル×ディープテックで、デカコーンを目指せるチャンス
技術/プロダクトの方も、ビジネスの方も「技術を軸に大きな事業機会に対して本気で取り組めるようなチームを探していた」という方とご一緒したいです。
優れたプロダクトを開発し、ユーザーに届けることができれば、非常に大きなチャンスを掴めるでしょう。
2. 技術やプロダクトに没頭できる組織
Datachainは、受託開発でなく、自社プロダクトを開発する会社です。
また、技術が要の製品であり、UXはもちろんですが、技術そのものにディープダイブしていただける組織だと思います。
コア開発には、世界的なエンジニアがこれから多く集まってくるでしょう。成功すれば、まさに世界中の人が毎日利用するプロダクトを開発できます。
決済はあらゆるビジネス活動の根幹となるイネーブラーであり、これを基盤にさまざまなデジタルアセットやアプリケーションが生まれてきます。
詳細は、別途こちらのリンクをご覧ください
3. 報酬について
優れた方には、それに見合う高い報酬が必要だと考えています。
エンジニアの給与を従来から大きく引き上げ、国内IT企業で最高峰の水準を目指します。
また、実際にデカコーンとなった際のSO(ストックオプション)は、これまでとは桁違いの価値になります。
詳細は、直接メンバーより、お話しさせてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
興味をもっていただけた方は、ぜひ以下のURLから、カジュアル面談またはウェビナーにお申し込みいただけると嬉しいです。私やDatachainのメンバーから、より深いお話をさせていただきます。
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