国語科は国語を学ぶ教科ではない

 国語科は、言葉を使う経験を通して言葉を使う力を高める教科です。が、そのことを理解していない教師が多すぎるように思います。
 国語科は国語を学ぶ教科だと思われていますが、それは、カリキュラム論的に言うと、誤解です。そういう誤解を多くの教員と教員以外の人々がしているように思います。
 国語科は言葉を使う力を伸ばす教科です。話す力、聞く力、書く力、読む力、言葉で感じたり考えたりする力を伸ばす教科です。
 国語科では、国語科に限らない全教科・領域・分野に関する物事について、話したり聞いたり話し合ったり、書いたり読んだり、発表したりする経験を通して、言葉による表現力や理解力が伸び、言葉による認識や思考や感覚・情感が豊かになります。
 その学習方法を英語で言うと「learning by doing」(by John Dewey)という学習法であり、日本語では西尾実が「行的方法」と呼んでいます。あらゆる内容を、聞いたり話したり読んだり書いたりすることを通して学ぶ経験を通して、言葉の力が伸びるのです。
 さらに、国語科では、言葉が意味する内容そのものについての学びも成立します。だから、国語科で気を付けなければならない点は、言葉そのものに焦点を置いて、その言葉が表している意味内容を排除してはならないという点です。
 なぜなら、言葉から意味内容を排除したとたんに、その言葉でなくなるからです。言葉から、その言葉が意味する内容を除去したとたんに、その言葉は単なる形だけになるからです。
 国語科は、国語を学ぶ教科ではなく、国語を通して世界を学ぶことを通して世界観を豊かにする学びと、言葉の力が伸びる学びとが、一体として、同時に成立する教科なのです。
 その証拠に、国語科の教科書の内容範囲は、国語についての知識内容に限定されておらず、あらゆる分野・領域の内容が含まれています。わかりやすく言うと、国語科はミニ総合科なのです。別の言い方をすると、国語科には、人生があり、地球があり、宇宙があるのです。
 国語科で学ぶことは、そういう広い内容を、言葉を通して理解したり表現したりすることそのものです。そういう意味で国語科は、内容教科ではなく、実技教科なのです。
 さらに目を広げると、国語科以外のすべての教科・領域および全生活の場が、言葉を学び、言葉の力を伸ばす学びの場になっています。国語科だけが言葉を学ぶ教科ではないのです。
 残念なことに、そのことに気付いている人が、今の日本には少なすぎます。国語教育を専門にしている人々の中でも、国語科のこの特色に気付いていない人がいます。
 だから、国語科で何を教えればよいかがあいまいであったり、国語科で何を学べばよいかがあいまいであったりするという、残念な現状があるのです。

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