漫才ネタ「ゾンビ」その1
大和「どうもドグラ・マグラです」
大山田「よろしくお願いします」
大和「あのね、もう僕ら結成から六年経ちましたね」
大山田「気づいたら中々の年月が経過してましたねぇ」
大和「でしょ、ほんで、流石にばれてると思うんですけど、改めて告白したいことがあるんですよ」
大山田「なんですか?」
大和「まあ全然大したことじゃなくてね、大山田さん気づいてると思うんですけど、僕ね」
大山田「なんですか?」
大和「めっちゃ、車酔いするじゃないですか」
大山田「あぁ、まぁ、酷いね」
大和「酷いでしょ。ほんまに昔からなんですよねぇ?」
大山田「お客さんに言うな。僕らの車事情とか知らないでしょうが」
大和「すいません。まぁでもほんまに酷くてね」
大山田「この間も、テレビのロケで車乗ったけど、大和くんずっとこんなんでしたもんね」
大山田(首を上に向けて座るポーズ)
大和「科学的根拠は全然ないんですけどね、こう、首を上向けて天井を向いておくと、気持ち楽になるんです」
大山田「あれですね、気道を確保してる感じあります」
大和「でしょ。ほんで目はつむったまんま」
大山田「何でですか」
大和「なるべく景色を見ない方がね、刺激がなくて酔いにくいんですよ。窓から見える景色なんかがちょっと身体に良くないんです」
大山田「まぁまぁそれはわかりますよ。ただ、ちょっと納得できないこともあってね」
大和「何よ」
大山田「まぁいつも同じポーズで車乗ってますけど、何でしょうね、大概、愛想悪いじゃないですか」
大和「うーん」
大山田「共演者さんとかと僕が話してて、大和君に話振ったら『うーん』とか『はい』しか言わないですし」
大和「それもね、誤解されたくないんで言いますけどね、話は好きなんです。けどね、しゃべることによって喉元を運動させるとね、ちょっと車酔いが酷くなる」
大山田「どうやら車酔いのプロフェッショナルらしいですね」
大和「あまりにも不名誉で、無意味で、身体に悪い」
大山田「プロフェッショナル」
大和「もう保育園通ってた頃からこんな感じでしたね酷」
大山田「そうなんや」
大和「恐らく三半規管が弱いんでしょうけれどね、お婆ちゃんの運転で、和歌山の紀の川市から、隣の隣の和歌山市まで一時間くらい車乗ったんですよ。で、退屈やったから買ってもらったばかりのウルトラマンの大百科をずっと読んでたんです。そんでようやく目的地に着いて、お婆ちゃんが用事を済ませてる間も車に乗って待ってたんですけど、突然ね、戻しちゃいまして」
大山田「あらま」
大和「もう朝食に食べたものやら道中飲んだカルピスやらが、ウルトラマンコスモスの見開きのページをまっしろにしちゃってね」
大山田「酷いね」
大和「まだそのページの臭いを覚えてますもん」
大山田「それが最初の車酔いエピソードですか」
大和「そうですねぇ、車酔いエピソード…残念なことにほとんどがね、吐瀉物と共にあるもんですから」
大山田「バリエーションがしょぼいね」
大和「まぁ学校生活だとね」
大山田「はい」
大和「修学旅行、社会科見学、ちょっと遠目の遠足、乗り物に関わるイベントは高確率でリバースですよ」
大山田「まぁそうなるでしょうね」
大和「その上ね、忘れ物癖がそこそこ酷かったせいで酔い止め忘れたり」
大山田「あれですよね。小学校なんかだったらイジメに発展しかねないですね」
大和「幸い、ゲロリン的なあだ名とは無縁でした」
大山田「優しいクラスメイトだったんですね」
大和「後ね、小学生のサッカークラブに入ってて、たまに遠征なんかもあるわけですよ。で、保護者さんの、大きめの車に乗り合いで行くんですよ」
大山田「チームメイト同士で」
大和「そうそう。車の中はもう楽しい雰囲気でね、備え付けのプレーヤーで、トムとジェリーなんか見ながら行ったり…そんな中で私独りだけはもう」
(先程のポーズ)
大山田「はしゃぎたい盛りでしょうに」
大和「幸いね、やんちゃなやつばっかりだったので雰囲気悪くなったりはなかったんですけどね」
大山田「てっきり、こういう車酔いって成長するに連れて収まるもんやと思ってたんですけど、違うんですか?」
大和「違うんですよ。それどころか年々酷くなってるんですよ」
大山田「酷く?」
大和「高校生のときなんですけど、僕ね、自宅から駅まで自転車で走って、電車で3駅先の高校へ通ってたんです。それである時ね、自転車が壊れちゃいまして」
大山田「あぁパンクとかよくありますね」
大和「いや、あれなんですよ、普段ね、自転車はちょっと狭めの車庫の隅っこに止めてあったんです。それである時、お婆ちゃんが返ってきて、車庫に車を入れるときにめきゃめきゃめきゃってね」
大山田「潰れたの」
大和「潰れました。もう、再起不能」
大山田「可哀想に」
大和「まぁそれでしばらく、お婆ちゃんに駅まで送ってもらう生活が始まったんですけど、お婆ちゃんが運転中よく喋るんですよ」
大山田「酔うのに」
大和「相槌返さないと不機嫌になるしね」
大山田「可哀想に」
大和「まぁある意味思い出ですよ」
大山田「あれは、他の乗り物はどうなの」
大和「他ねぇ、僕昔ね、新大阪の専門学校通ってて、夏と冬に帰省してたんです」
大山田「実家はあれですよね、和歌山県」
大和「そうそう」
大山田「結構近いよね」
大和「御堂筋と、南海高野線と、ローカル線乗り継いで三時間くらいかな」
大山田「何でしょう、広島とかそのへんやったらもっと時間かかるやろうけど、和歌山やったら割と楽じゃないですか」
大和「電車は大丈夫なんですよ。通学してたときも全然酔いませんでしたから」
大山田「なるほど」
大和「で、20歳になって初めての帰省ですよ。南海電車の中で、こう座って、ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』を読んでたんですけどね」
大山田「ええ」
大和「ゲロ酔いしましたね」
大山田「まだ若いのに」
大和「比較的若くはあるんですけど、しかし年齢を感じましたね」
大山田「可哀想に」
大和「日に日に三半規管が雑魚になってますから。ほんでね、多分あんまり知られてないことやと思うんですけど、僕みたいに三半規管が雑魚な人ってね、車だけじゃなくてゲームにも弱いんですよ」
大山田「ゲーム、テレビゲーム?」
大和「そうそう。何か最近なんかゲームの技術も物凄い上がってね、年々リアルになっていくじゃないですか」
大山田「なってますねぇ」
大和「だからこう、ゲームキャラクターの視点でやるゲームなんかやってるとね、ものの数分で嘔吐の気配が来るんですよ」
大山田「雑魚いですねぇ」
大和「それが年々酷くなってるもんですから、最近なんか全然ゲームできてないんですよ」
大山田「あなた結構ゲーム好きやのに」
大和「ほんまにねえライフワークですから」
大山田「漫才に次ぐ?」
大和「漫才は劣る」
大山田「漫才越されちゃうと困るんですけどね、せっかくやからやって見ます?」
大和「あ、今ここで?」
大山田「コントなら酔わないでしょ」
大和「確かに」
大山田「それにコントのネタになって都合がいい」
大和「あんまり業務の感じ出さない方がいいけどね」
大山田「どんなゲームで行きます?」
大和「じゃあちょっとね、ゾンビゲーム」
大山田「アクションゲームってやつかな」
大和「そうそう。国のエージェントの男がね、悪の組織にさらわれた大統領の娘を救うためゾンビの群れに立ち向かうんですよ」
大山田「やってみましょうか」
次回へ続く