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歌ごころを大切にしたインストルメンタルのお手本 〜 クラズノ・ムーア・プロジェクト
(3 min read)
Eric Krasno, Stanton Moore / Krasno / Moore Project: Book of Queens
古くからの友人だったソウライヴのギターリスト、エリック・クラズノとギャラクティックのドラマー、スタントン・ムーアが組んだ新プロジェクトによるアルバム『Krasno / Moore Project: Book of Queens』(2023)は、インストルメンタルによる女性歌手曲カヴァー集。
超有名曲もそうでもないのも混じっているので、以下にオリジナル歌手名を一覧にしておきました。もしよかったら気になったものは元歌をぜひさがして聴いてみてくださいね。
1 エイミー・ワインハウス
2 シャロン・ジョーンズ・アンド・ザ・ダップ・キングズ
3 ケイシー・マスグレイヴ
4 ビリー・アイリッシュ
5 ブリタニー・ハワード
6 ペギー・リー
7 アリーサ・フランクリン
8 H.E.R.
9 ニーナ・シモン
二名のほかにはオルガン奏者がいるだけのシンプルで伝統的なトリオ編成がアルバムの根幹。曲によりゲスト・ギターリストがいたりサックスが参加していたりで、演奏はグルーヴィ&かなりソウルフルに決めています。
こういった音楽がレトロなんだっていうのは、ジャケットのふちが年月が経ってこすれた紙のようになっていて、さながら中古レコード・ジャケにみえることでもよくわかります。この手の趣向、最近みかけるようになっていますよね。
中身も、まるで1960〜70年代の香りがプンプンしています。あのころこうしたインスト音楽いっぱいあったじゃないですか、それが甦ったようなフィーリング。ブルーズ、ジャズ、ソウル、ロックのバンド・インストを基調としたこの手のものは、いつまでも輝きを失わない不変のものなんだなあと本作を聴いていると実感します。
個人的には5「Stay High」(feat. コーリー・ヘンリー)、6「Fever」(feat. ブランフォード・マルサリス)、7「A Natural Woman」と続くあたりの流れが好きで、ラスト9「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」での奔流のようなもりあがりもすばらしい(feat. ロバート・ランドルフ)。
いずれの曲も三人+ゲストによる演奏はあくまで歌心を大切にしているのがとってもよく伝わってきて、原曲の持ち味を存分に活かしながら歌うがごとくつむぎだすインプロ・ソロには、インスト・ブラック・ミュージックの醍醐味が詰まっています。
(written 2023.4.18)