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「医」食住の力で暮らしのインフラづくり【LDLバディ・インタビュー 柿原孝一郎さん】

 今回は、私の所属しているまちづくりの実践者コミュニティー「Locally Driven Labs(以下、LDL)」のメンバーの柿原孝一郎さんを紹介したいと思います。LDLはまちづくりの第一人者木下斉さんが所長を務めます。LDLの説明はメンバーの岡崎さんがまとめている記事をご覧ください。

 これまでのLDLメンバーのnote記事はこちらにございます。

 LDLには様々な地域、分野でまちづくりの活動をしている魅力的なメンバーがいらっしゃいます。現在、定期的にメンバー同士でバディーを組んでお互いに情報交換し、情報交換をしたり、相乗効果を図っていたりします。

 今回、12月にLDLに参加した柿原孝一郎さんにとっては初のバディーとしてマッチング(?)されました。柿原さんはいろんな業界を経て、現在医療業界に関わっているとのことです。医療職の私にとって興味深々でお話を伺いました。

1.柿原さんのご経歴「医食住」

 柿原さんは長崎県のご出身で大学が熊本県。お仕事歴は大手建設会社から始まります。公共事業系のゼネコンで、地方の原子力施設の施工にも関わる大きな仕事にも関わって来られました。

 その後、飲食業界に転身し、地方食材を活かした食事の提供をできるお店の展開に関わりました。飲食店の事業立ち上げに関わり、リゾート関係にも関わります。イタリアなど海外でのお仕事にも関わります。こうしたお仕事を通じて、地方との絡みが深くなっていきます。食事業においては健康を重視したタニタ食堂にも関わっていたといいます。

 そして、2022年より、医療業界で挑戦を始めます。医師不足の過疎地に医療を届けるための事業会社で事業開発に携わっています。

 柿原さんのお仕事のスタートは建設関係で「住」、次の仕事が「食」、そして、現在の「」。柿原さんのご経歴、この3つを合わせて「医食住」がキーワードと表現されていました(うまい!)。また、広く暮らしを支えるという意味で「インフラ」全体に関わっているとも表現されていました。

2.業界を超えて来て医療業界に感じること

 せっかくなので、柿原さんに他業界から医療業界に来て感じていることを聞いてみました。

ーーー(柿原さんのお話より)ーーー

 医療業界に来てみて、「予防」「ヘルスケア」は未開の領域と感じています。民間でいうと、KDDIやLINEなど他業種ががんばっています。先進的で素晴らしいと思いつつ、過度な装飾による価値訴求と顧客誘因が先行してしまい、本質的に健康に資するサービスに育つかどうかを心配しています。

 10年後を考えると、価値を重視する包括するプレイヤーが出てくるのではないかと考えています。ビジネス重視だと、トクホなど、エビデンスの土台が微妙な感じになってしまい、そうしたものは、メディアを活用して盛り上がりはしますが、結局長くは続かないのではと感じます。以前仕事で関わったタニタ食堂の経験からもまだまだ改善の余地を感じます。

 プロダクトアウトな技術専攻は事業として上手くいかないことも多いですが、健康に関してはサイエンスを大事にしていきたい。そして、人のQOLを高める、感情的なもの。より価値があることを提供できれば。まだ、医療業界に来たばかり。3年目からそんな取り組みができればと考えています。

3.世界の価値観と日本の違い

 飲食の仕事のころから、海外の視点を持っている柿原さん、飲食に加えて医療に関しても、日本との価値観の違いを意識するようになっているようです。

ーーー(柿原さんのお話より)ーーー

 ビジネスの価値観はヨーロッパの方が、温故知新的なことをうまく使っていると感じます。腹落ちしているものにはしっかりコミット。そして、芸術、感覚的な右脳の人の地位が高い。しっかり事業化できる。例えば、パルマハムなど、超ド田舎のものが一流ブランドになる。本質的価値をしっかり引き出し、表現して、売り込むことができている。(筆者追加:装飾ブランドもヨーロッパが強いですね)

 一方、アメリカ的な価値観では、歴史がない分、PRに強みがある。それにより、歴史がなくても表現でPRできる。医療の数値化、サプリメントの普及など、アメリカの強みはあるが、QOLや感情に働きかけるものはヨーロッパの価値観に比べると弱いかもしれない。

 日本においては、先ほどのトクホのように、どっちつかずの表面的な感じがして、業界が成熟していない感じがしています。

 今後の医療にとって大切なことは、医療的な介入をしたことに対してでなく、結果に対しての報酬ではないかと考えます。医療の質へのニーズが高まる中、患者が自分で知れる情報や、患者が主体的に感じる情報を重視されるようになると感じている。それは、一律なものではなく、個別最適な医療です。徐々に患者、医師の差が少なくなる。医療業界の人も感受性を高める必要があるのではないでしょうか。

 世界から日本は注目されています。それは高齢化が進んでいるから。東アジア、特に中国はこれから急激に高齢化が進みます。新しい職場でがんばっていきたいと考えています。

4.インタビューを振り返って

 柿原さんとお話する中で、医療業界の中にいると、医療のことを知っているようでとても狭いものだと感じました。病院や福祉の中の人と話していると「お先真っ暗」的な話ばかりですが、民間としてどんどん進んでいるITを駆使していくと、とても可能性のある部分もあることに気づきました。

 医療やヘルスケアに関する文化的な価値観の違いも興味深かったです。脱施設化が進んだのはヨーロッパですし、集約型の医療が進んだのがアメリカという違いは何となく私もこれまでいろんな人から聞いた話からイメージができます。

 柿原さんがこれまで業界は違えど「事業開発」という部分で一貫してお仕事をしておられます。そして、事業開発の視点で世界と日本に関わる中で感じた経済文化の違いが、医療にも共通しているというところは、目から鱗で、面白く感じました。

 興味を持って調べてみると、例えばこちらのサイトでは、

・ヨーロッパは「歴史の文化/文化人類学」
・アメリカは「リピートの文化」
・日本「のれんの文化」

ブランディングとマーケティングの違いとは? わかりやすく解説! より

 と記載されており、柿原さんの言われることと近い意見もありました。「のれんの文化」って医療でいうと「有名な病院の先生が言うから安心」みたいな感じですかね?関連して、LDL所長の木下さんも、欧州のブランディング力について述べている記事もありますね。

  今回、改めて、医療とそれ以外の業界のことが、まったく別のものではなく、点と点がつながって線になっていくように感じました。LDLの魅力のひとつがこのようなことだと感じます。医療福祉の財源を考えると、地方行政、地方経済のこととも関わります。今後もいろんな方との対話を通じて、成長していきたいと考えています。

 今回の報告は以上です。お読みいただきまして、ありがとうございました!

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