レポート:勝央まちづくりサロン『地域のライター育成』(8月20日)
この記事では8月20日に開催された、勝央まちづくりサロンの活動報告をさせていただきます。岡山県勝央町(しょうおうちょう)で「まちづくり」の立場から民間、行政、住民を巻き込んで、まちを元気にする取り組みを行っています。一般社団法人しょうおう志援協会が主催です。
2020年3月から開始し、毎月開催しています。最近は、これまで「SDGs」、「健康」、「姉妹都市」をテーマとして、楽しくお話をしてきました。感染症対策でオンライン開催が多いですが、感染が落ち着いたら、会場での開催もできればと考えています。ちなみに、前回2021年7月は「みんなが気軽に立ち寄れる場所とは?~多世代交流×子育て~」をテーマに開催しました。
1.今回のテーマは「地域のライター育成」
今回は、「地域のライター育成」というテーマで開催しました。「ライター」とは、記者のことで「市民記者」という感じの意味です(マッチとライターの「ライター」じゃありませんよ…^^;)。
話題提供されたのは、昨年度の勝央町のプレゼンイベント「あつまれ!プレゼンターの森」で発表をされた福田さんです。福田さんは、地域のローカル紙「津山朝日新聞」の記者さんで、私達「しょうおう志援協会」のイベントの取材でも良くお世話になっています。津山朝日新聞は、岡山県北(津山市、真庭市、美作市、鏡野町、勝央町、奈義町、久米南町、美咲町、新庄村、西粟倉村)を中心とした新聞社です。
昨年度、私達の会主催の地域活性化人材育成事業「オンライン発信塾」の取材から、参加者となり、その後、プレゼン大会でご自分の想いを発表していただきました。
プレゼン大会では、「美作国ライターズクラブ」構想について発表していただきました。美作、作州地域でで一人ひとりの住民が地域のことに目を向け、ことばとして発信することで地域の魅力が広がり、大きく育つ、という想いを伝えていただきました。
昨年度のプレゼン大会についてはこちらにまとめています。
2.美作国ライターズクラブ構想について
今回、福田さんのこのプレゼン大会で発表していただいた内容をもっと応援したいと考え、お招きしました。会の冒頭では、福田さんに改めて「ライター育成」の動機についてお話を聞きました。
ライター、ジャーナリスト、物書き、呼び方は何でもいいですが、地方における文筆業仲間がほしい。言葉に生命を吹き込み、言葉で地域に活力と潤いをもららす仲間がほしい。
この福田さんの言葉に思いがこもっていると感じました。新聞業界全体が勢いがなくなる中、特に人口低下が予測される地域の地方紙としての新聞社として「新聞はおわこん?」という絶望にも近い気持ちを抱くこともあるといいます。広告収入を得ようにも、SNSやインターネット広告が広がる中、企業の広告の形も変わってきています。一定のユーザーはいますが、それでも、このまま何もしないと、数年後はどうなっているか、そんな不安を感じながら、でも日々の取材や誌面作成に追われているという福田さんのお話、かなり切実な状況、それでも、「言葉」の力に可能性を感じているということが伝わってきました。
そして、この事態を打開するのが、ライターさんの育成です。記者のノウハウを住民にレッスンすることで、記事を書いてみたい人が増えれば、紙面が充実し、魅力的になります。ライターさんがたくさんいることで、これまで以上に地域の魅力が伝わり、広がります。ライターさんも、副業として収入を得ることができれば、家計にプラスになります。副業解禁が進む中、win-winの構想です。
今回のサロンは、このライター育成構想の実現に向けて、参加者で一緒に考えました。
3.今の時代の紙の魅力とは何か?
アイデアを出していく前に、「そもそも紙の魅力って何なの?」「本当に、新聞っておわこんなの?」ということを確認していきました。紙の魅力を確認することで、より具体的なアイデアが出ると考えたからです。参加者からはこんな意見が出てきました。
・デジタルと併用できることがあれば、より魅力的になる。
・紙だから感じる質感がある。
・本当のお気に入りの本は紙で購入する。
・デジタルと違って、自分の手元に残る。
・新聞では、広告から情報を得られる。
・デジタル版の新聞記事は、紙版のものよりも内容が要約されていることがある。
・編集後記のような、記者さんの独自記事や感想も知ることができるのが新聞の魅力。
・紙なら、記憶に残りやすい。探す時も「あのあたり」ってイメージできる。
・書いてもらった人は記念とし大切に残したいものになる。
4.こんなライター育成の仕組みがあれば面白そう
紙の良さが確認できたところで、今度は、住民(町民)にライターになってもらうにはどうすれば良いかということを考えていきました。現実的な話、ライターさんにとって魅力的な仕組み、マネタイズなどの仕組みまで作っていないと、なかなかうまくいきません。
まずは、「こんな記事を取り上げては?」という内容で、参加者から出た意見をまとめてみます。たくさんの意見が出てきました!
・プロの人の書く文章はすっきりして分かりやすい。学んでみたいという人はいるのでは?
・自分のことでなく、自分の仕事のお客さん、パートナーの記事を紹介するならできるかも。
・自分の書いた記事やSNSが新聞社に拾ってもらうことで、モチベーションになるのでは。地元有名人にもお願いしてSNSを紹介すると盛り上がりそう。
・カテゴリーを魅力的に感じる形で分類して、記事募集の投げかけを行う。
・「ネタあります」という段階でも情報をもらえると役立つということであれば、関わってくれる人も増えるのでは。
・必要な要素に対してポイントをつけて、一定のポイントだと原稿料が上がるようにすると書く人が分かりやすい。
・高校生や中学生、学生が書いた記事が載るようになると嬉しくなり、読者が広がるのではないか。
・地方の郷土史の記事が魅力であるので、こうした記事をまとめる際に情報募集をすると良いのではないか。
その後は、マネタイズについて話をしました。現実的に、団体の枠組みを法人にするのか、任意団体とするのか、津山朝日新聞の一事業とするのか検討しました。どこからの収入を得るかによって、異なるということで、広告費、購読料、寄付、公的資金、助成金などにより、適した立場に違いがあることが分かりました。新聞社の一部とすれば、自前の新聞でも堂々と広報もできるので、それも強みになるかと思います。
収入源としては、こんなアイデアが出ました。
・レッスン料で運営費を賄うスクール事業としてやっていく。
・これまでの取材で撮っている写真、実際に紙面に載るのは1、2つですが、多くのストックがある。取材を受けた方がそういった写真をインターネットから購入することができれば、資金の一部とできるのでは。
・今の時代ならではのサブスク、会員制で、記者さんのスキル、情報を得る仕組みも資金源になるのでは。
こうして考えると、ローカル紙ならでは、インターネットと連携して顔の見えるサービスを展開できるかもしれませんね。
5.言葉を考えるって「優しさに包まれる」
最後に福田さんに感想をお聞きしたところ、「優しさに包まれる気持ちになった」という嬉しい言葉をいただいたのが印象的でした。参加している私達も、地域の新聞という仕組みを大事にしていきたいという気持ちは一緒で、どうすれば良いか考える中、優しい気持ちをもらえたように感じます。
SNSやインターネットで画像や文字の発信が簡単になりましたが、世間では心がすさむようなことばもたくさんあります。地方のローカル紙は、身近な良いニュースに光が当たり、そこに生活が感じられます。
私も、今回のサロンを通じて、そんな文化を大切にしていくことができればと思いました。今の時代ならではのデジタルの良さも活用しながら、共生していくことができれば、私たちの心が豊かに、優しく暮らしていけることと思います。
福田さんの想いを実現できるように、今後もできることがあれば、一緒に取り組んでいきたいと感じました。
お読みいただきありがとうございました!