CHLに参加しました:「考え方」を考える不思議な研修
この記事では2020年度に参加した研修会の感想をまとめたいと思います。CHLというのは、一般社団法人 Medical Studioが運営する「コミュニティ・ヘルスケア・リーダーシップ(CHL)学科 」のことです。
私は職場の上司がこの研修に2019年度に参加しており、理事長の理解もあり、2020年度に私に参加させてもらいました。
研修の内容に関しては、上述のホームページをしっかりと見ていただければ分かります。(興味のある人は、ざっと目を通していただければ、その後の私の記事をより分かっていただけるかなと思います。)ここのでは、研修のざっくり概要と、私なりの感想をまとめてみたいと思います。
1.研修の概要:ほぼ1年のボリュームのあるカリキュラム
このCHL、4月にあった説明会からオプションの講師研修やアイデアピッチまで入れると、ほぼ1年間のプログラムでした。例年であれば、会場研修で2日間の合宿を3回するところ、今回は、コロナ禍もあり、オンラインのみでの開催となり、合宿分のカリキュラムを小分けにして研修プログラムを進めていくこととなりました。
受講生は、医師をはじめ、看護師、私と同じ理学療法士、社会福祉士、介護事業者、NPO職員さんなど、幅広い方が参加されています。この研修では、立場や肩書きを超えて、みんな「さん」づけです。(たぶん、普通に働いていて気軽には話せない方もたくさん参加されていたと思いますが、そんな方とも、同じ受講生として議論させてもらいました。)
毎月、課題図書と課題があり、月に2・3回、zoomでディスカッションをするという何ともストイックな研修です。約1年関わっていたら、職場でも家庭でもいろいろあります。その分、受講生さんとは、1度も会っていなくても、苦楽を共にした「同士」のようになりました。
2.研修の醍醐味は、答えがない課題に取り組むこと
この研修の「不思議」なところは、ディスカッションする地域のケース課題と質問が用意されているけれど、「その答えはない」というところです。一般的な研修と違うため、私ははじめは混乱し、モヤモヤしました。
この「答えがない」というのは、実際に医療従事者が地域で活動する際の現実でもあります。では、「答えのない」課題をどう整理し、変化に導くのか、そのプロセスを磨くのがこの研修会というところでしょうか。
キーワードは「批判的思考」「複眼的視角」「メタ視点」です。議論する際には、その「課題の意味」について考えるところから始まることもあります。「そもそも、この課題の議論ってなんでする必要があるの?」など、一見遠回りしたような議論から、課題の本質を探ります。チームになったメンバー同士の経験や価値観を活かし、ケースに向き合うということを繰り返しました。
ケース課題は全部で6つあります。私の参加した年度で8年目で、ケースは同じものを毎年使っているようです。このケースは、あえていろんな議論があるように設計されていて、毎年参加者が違えば議論する内容も違うそうです。
3.研修のおかげでオンラインの時流にタイミング良く乗れたかも
今年度は、初のオンラインでの開催で、地域を超えた方と交流しました。ちょうどオンライン研修などが増え始めた段階で、メンバー同士で深い議論をするにはどうすれば良いか、試行錯誤する日々でした。「共有ツールはこんなのがある」、「アイスブレイクはこんな風にしては?」など、いろいろやっていきながら、オンラインの会議のファシリテーション能力自体も次第に身についたように感じます。数か月経ったころには、自分の周りの人に比べ、自分がオンライン会議を使いこなせていることを知り、良かったと感じました。別の記事に上げたわたし自身が開催したオンライン研修をする際にも、ここでの経験が活かされました。
オンライン上で議論する時間は延長せず時間厳守で行いました。そのため、決まった時間以外には、スラック上やグーグルドキュメント上で文章でやり取りをしました。ここでも、相手に伝わるように文章を考えるのは、トレーニングになりました。時に「活動のビジョン」や「チームとは」など、抽象的なテーマも話し合います。相手に伝える難しさを感じましたが、「現実の職場や地域でも、日ごろからこうした意識をしないと、すれ違いになっているのかな」、と振り返るきっかけに感じました。
4.研修の成果を感じるのは、数年後?
この研修の主催のメディカルスタジオの講師さんは、この研修の意図として、この研修で受講生と一緒に悩み、考えて、議論するというトレーニングを通じて、地域でリーダーとして活躍してほしいと言います。それは、教科書にあるような知識とは違って、考えるプロセスです。答えのない地域の課題の中で、それでも何か良い方向に変化をもたらすために考え、実践して、考え、実践する繰り返しの中で、研修の経験を活かしてほしいと言います。
私の受けた回で、8年目でしたが、3~5年以上前に受講した方にチラホラ「受講したことが役に立ったと感じた」という声があるそうです。逆に言えば、受講が終わったばかりの段階では「何を得たのか良く分からない」という意見も一定数いるそうです。
私にとっては、この1年、6つのケース課題に取り組む中で、自分の身の回りの課題も、ケース課題と同じように、客観的に考えられるようになりました。6つのケースは、さまざまなトラブル事案を抱えた課題です。スタッフのトラブル、お金のトラブル、いろんなトラブルがケースにありました。私の周りでトラブルが起きた時、「なんとなく4番目のケースと似ているなあ」なんて考えたら、起きた事象と自分の感情とを少し切り分けて捉えることができるようになり、精神的に安定して過ごせたように感じます。
5.意見を受け止められることは、お互いのこころを豊かにするはず
最後に、このCHL研修で感じた一番よかったこと。それは、どんな意見でも受け入れる研修であるということです。先ほども書いたように「答えのない」課題をメンバー同士で議論していきます。その過程では、どんな意見でも、みんなのヒントになり、気づきになります。それぞれが意見を言いっぱなしではいけないので、みんな、意見を受け止めながら、自分の意見を言うようになります。
私は、面と向かって自分の意見を述べるのがプレッシャーで、どちらかというと文章で自分の考えをまとめる方がプレッシャーが少ない人です。でも、この研修を通じて、お互いに相手の考えを引き出し、受け止め、整理する練習をしていきました。私自身、考えを伝える恐怖心のようなものが次第に薄れていったように感じます。たぶん、このような受け入れる姿勢を身につけることも、意見をきちんと伝えられることも、地域のものごとを進めるには大切なことなのだと思います。
それにしても、良く考え、良く話した1年でした。まだまだ消化不良で、モヤモヤも残る不思議な研修です。議論の中でついていけない内容もたくさんありました。でも、それで良いということなので、これからは現実で課題と向き合う日々を送っていこうと思います。
この記事を2021年度の受講生募集に合わせて書こうと思っていましたが、書くのが遅くなったのですでに募集が終わってしまいました。興味がある方は、来年度を目指してもらえたらと思います(2022年度でこの研修は終了とのことなので、気を付けてください)。お読みいただきありがとうございました!