若手医師が陥りがちな犬の道、指導医の役割はイシューの提示
生成AIに思いつきを言語化してもらうシリーズ。
以下のコラムでは、「犬の道」的な考え方に陥ることを避けて本質的に成長するためのヒントをまとめるとともに、“イシュー”を提供できる指導医の重要性について掘り下げます。「イシューからはじめよ」を未読の方に向けて、概念をかみ砕き、医療現場での具体的な例を交えながら解説します。
「犬の道」とは何か?
ビジネス書『イシューからはじめよ』で提示される“犬の道”とは、「問題の本質を考えずに、がむしゃらに努力や作業量を増やすことで成果を得ようとする」やり方です。医療現場では、患者数・症例数をやみくもにこなす、漫然と文献を読む、慣習に盲従して覚える、といった姿勢がこれに相当します。こうした努力は一見すると成長しているように感じられる一方、質的な向上や再現性あるスキルアップには結びつきにくいのが問題です。
医師トレーニングにおける「犬の道」の例
1. とりあえず頑張る
当直や夜勤、日常業務をこなすことで「やっている感」は得られるものの、具体的な学びや成果を振り返らずに突き進んでしまう。
2. 数を稼ぐこと自体が目標になる
症例数や手技の回数を追い求めるあまり、「どんな種類の症例で何を学んだか」という内省が不十分になる。
3. 漫然と勉強する
参考書や論文を大量に読むことに満足してしまい、「今まさに解決したい疑問は何か」を意識しない。
4. エビデンスの乏しい慣習を盲信する
ローカルルールや“先輩がそうしていたから”といった理由のみで手技や判断を覚え、根拠を説明できないまま続けてしまう。
「イシューからはじめよ」が提案するアプローチ
書名の通り、まず「イシュー(本質的な課題や問い)」を定義し、そこから逆算してアクションを取る考え方です。具体的なステップとしては次の通りです。
1. 本質的な問いを設定する
• 例:「この手技が効果的になる病態は何か?」「なぜAよりBという治療を選択したのか?」
2. アウトカムを想定する
• 例:「この選択によって患者の予後やQOLはどのように改善するのか?」
3. 仮説を立て、優先順位をつける
• 例:「Aの可能性を第一に検討し、除外できればBを検証していく」
4. 検証し、フィードバックを得る
• 例:「実際に試した結果を振り返り、想定外の要素を洗い出す」
良い指導医がもたらす“イシューの価値”
若手医師が本質的に成長するには、自分自身の問題意識だけでなく、指導医が適切な“イシュー”を提示してくれることも重要です。たとえば次のようなやり方が効果的です。
1. 具体的かつ重要な問いを投げかける
• 「この症例の最もクリティカルなリスクは何か?
• 「この患者さんの状態を変えるキーファクターは何か?」
指導医が適切な問いを示すことで、若手医師は「何を優先して考えればよいか」を明確に把握できます。
2. 問いの意図を明確に説明する
• 「この問いは診断精度を高めるうえで重要だから考えてほしい」
• 「ガイドラインの内容を深く理解するには、この視点が欠かせない」
なぜそのイシューが重要なのか背景を丁寧に伝えることで、若手医師の理解とモチベーションが高まります。
3. 自分で調べる道筋を示す
• 「まずは関連する主要な文献を当たってみよう。特にAやBの論文は有用だからおすすめだよ」
• 「エビデンスを探すときにはこのデータベースを使い、検索ワードはこういう設定がいい」
何をどう調べればいいかの“ナビゲーション”をするだけで、若手医師の学習効率は大きく上がります。
4. ディスカッションとフィードバックを行う
• 「調べた内容で仮説は立てられた?その根拠は何?」
• 「実際に臨床判断に使えるか検証してみよう」
イシューに対して主体的に取り組めるよう促す一方、途中で振り返りやヒントを与え、納得感を深めるサポートを行います。
医療現場での実践ヒント
• 日々の業務で1つでも“イシュー”を言語化する
「○○の患者さんにおける最優先課題は何か?」など、簡単な問いから始める。
• “学び”の目的を明確にする
勉強会や論文検索の前に、「何を明らかにしたいのか」を先に書き出しておく。
• チームや指導医に意図的に質問する
「なぜこの治療方針を優先したのか?」という質問を交わす中で、より深い理解や新たな視点が生まれる。
• 記録と振り返りを習慣化する
週に一度、自分が取り組んだイシューとそれに対する結果をノート等にまとめ、次の目標を立てる。
まとめ
多忙な医療現場では、つい「犬の道」的な努力や根性論に陥りがちです。しかし、質的な成長を目指すには、やみくもにがんばるだけではなく、「何が本質的な課題か?」を見極めることが不可欠です。また、若手医師は自分自身の疑問を持つだけでなく、指導医から適切な“イシュー”を提供してもらうことで、学習の視点や思考の幅が大きく広がります。指導医も意識してイシューを提起し、若手医師が自ら考えて答えを導けるよう伴走することで、チーム全体としてのケアの質やスキルが高まっていくはずです。ぜひ「イシューからはじめよ」の考え方を活かし、短期的な“数”ではなく、再現性のある本質的な力を鍛えるトレーニングに取り組んでみてください。