大企業発の社内ベンチャー
私の所属している会社は、いわゆる大企業と呼ばれる分類に属します。転職したことはありませんので他の会社のことはよく分かりませんが、恐らく大企業ではどこの会社でも「次なるビジネスアイデアを創出するために・・・」とか、「次なる飯の種を・・・」といって経営陣が若手や中堅社員を動員した”部門横断的”で”日常業務とは関係ない”といった枠組み(研修、実習、ワークショップ、フォーラム、など呼び方は沢山あるでしょう)を実施されているものと思います。私の所属する事業部でもそのような取り組みがあります。そして、筆者(中堅社員)である私も今年度、参加しております。
また、一方で若手メンバーが参加する部門横断的な取り組みに事務局側の立場としても参加しています。そこで私自身は、いつも厳しいというか、批判的なコメントばかりする意地悪な先輩を振る舞っています。別に意地悪がしたいからしているわけではありません。私からすると、どうしても若手が出してくるアイデアはすべて投資家の視点が欠落しているのです。すなわち、事業部長や社長の立場で考えたときに、やってみろ、と言える情報が揃っていないのです。
・そのアイデアを聞いた金持ちは、面白いと言って投資してくれると思うか?
・そのアイデアは、他のビジネスに投資するよりも魅力的か?(リスクとリターンの関係は市場期待を上回るか?)
・そのアイデアは、長期的な投資を前提とする出資者にとって継続的・長期的にも成り立つビジネスか?
・そのアイデアは、結果が出ないかもしれない最初の数年において、投資家に対して「順調に行っているか否か」を判断してもらうために、どんなマイルストーンを設定するのか?すなわち、結果(主に収益)が出ていない時期にも、将来の輝かしい状態を想像させる中間指標を到達できているかどうか
・そのアイデアは、自社の強みを生かせそうか?
などなど挙げればキリがありませんが、「こうやったら儲けられる」みたいなチープな思いつきアイデアでは、どうしてもこれらの疑問を乗り切ることができません。
上場している大企業からすれば、社内ベンチャーに投じる資金は大きくないかもしれません。しかしながら、社内ベンチャーとはいえ間接的には、その企業の株主の納得するビジネスを行う必要があるのです。
この感覚は、実際に投資をしてみて、株主になってみると理解できます。自分自身の稼いだ諭吉さんを、他人に預けるわけです。企業は、その諭吉さんを使って得られた収益や、諭吉さんそのものを活用してビジネスをするわけですが、わけのわからぬビジネスアイデアに諭吉さんを捨てている、、、と思われたら株主は、その企業から離れるかもしれません。どんな些細な活動であっても、出資者からすれば「私の諭吉さんを大事に使ってください」と思ってお金を預けるわけです。
社員に強制するべきことではないでしょうが、程度の大小はあれ、社内ベンチャーをやろうと思うのであれば、提案者本人が投資家の目線を持っているべきだと思います。特に大企業に勤める社員は、安定志向が強く、私の周囲を見渡してみても持株会を除いて自ら株式投資をしている方は少数派と思います。人によって、銀行預金や個人年金(結局、個人年金は株式に運用されていたりするのですが)と言った形でなんとなく貯めているケースもあります。”株式会社”と名のつく組織から給料をもらいながらも、投資の本質を理解しないのは完全に”使われる側”に成り下がっているような気がします(たとえ管理職やホワイトカラーの仕事であったとしても)。身銭を切って投資をしたことがない人間が、投資家の視点で質問してくる経営陣を”なんちゃってアイデア”で説得などできるはずがないのです。
私自身は、投資をするようになってから給料の見方が変わりました。「諭吉さんよ、銀行で眠っていないで、もう一働きしてくれないか?」と思いながら投資していますし、飲み会で参加費を払うときには「諭吉さんよ、こんなかたちで俺と別れることにあってスマンな・・・」と思います。20代の頃は、飲み会に限らず無駄遣いの多いタイプの人間でしたが、投資をするようになってからは「無駄遣いをしない!」と言ったネガティブな動機で支出を抑制できるようになったのではなく、「諭吉さんと不本意に別れることなく、さらに働いてもらうため」という前向き(?)な感覚で自然と支出を抑制できるようになりました。
少し話が逸れてしまいましたが、社内ベンチャーであれ、定常業務であれ、金と時間をかけてビジネスを進めようとするということは、そこに投資家の目線がいるということです。これを理解しておらず、目の前の仕事をこなすことに秀でた人間(皮肉を込めて”使われる側”)だけを集めてもビジネスアイデアは産まれないと思います。
社内ベンチャー成功のために必要な社員のマインドセットや基本的な視点が投資家の視点であるとしましょう。本気で社内ベンチャーを実行しようとするならば、その社員に対しては投資家が得る・被るであろう利益・損失が報酬であるべきと思います。社員が出資するのもアリですし、別会社を作って株式報酬という形で与えるのもアリだと思います。いずれにしても、安定を求める大企業社員に対して、旧態然とした給料の仕組みでは、無責任なビジネスアイデアしか生まれず、それであれば冒頭に述べた枠組み(研修、実習、ワークショップ、フォーラム、など呼び方は沢山あるでしょう)を企画すること自体全く無意味なことです(そこに時間をかけるぐらいならば、”使われる側”に徹してもらった方が良い)。
と、色々と過激な意見を言ってしまいましたが、企業勤めの方で思うことがあればコメントください!
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