誰(た)がために音は鳴る?
こんにちは、辻村です。金曜日は軽い話題を書こうと思っています。
「リモートワークとか在宅勤務で良いところは何か?」と考えたとき、「オフィスよりうまいコーヒーが飲めること」というのは世界共通のネタのようです。しかし、好きなときに好きな音楽を聴きながら作業できるのもその一つではないでしょうか?今回は、オーディオマニアではない私がスピーカーを探す中で知ったちょっとしたお話についてです。
スターバックスはインドではお金持ちの飲み物?
最近はマシになったのでしょうが、以前は、オフィスのコーヒーは「まずいコーヒー」の代表でした。
オフィスでは誰かしらコーヒーを飲みます。会社によっては朝誰かが自主的に入れ、あるいは、業者の人が入れてくれます。ところが、時折飲む人はいるものの、全部はすぐにはなくなりません。午後のコーヒーなんて酸化して飲めたものではありませんでした。あまりにも各国でまずかったのか、「オフィスで美味しいコーヒーは飲めないよね」というとどこの国の人もたいてい笑います。まあ、世界的にそうなのでしょう。
「少し美味しいコーヒーを」ということで世界中で人気が出たのがスターバックスです。スターバックスになれきった日本では、タリーズやブルーボトルコーヒーなども出てきていますが、インドではあまり数を見ませんでした。「なぜだろう?」と思っていると上司があるとき電話会議でこんなことを話してくれました。
私(冗談で)「家のコーヒー切らしたらからスターバックスで仕事していい?」
上司「(笑いながら)かまわないけど、他のインドのスタッフには言うなよ?」
私「え?なんかまずいの?」
上司「インドじゃスターバックスは高いから、スターバックスでコーヒー飲みながら仕事なんて、金持ちだと思われるよ(笑)」
何回かネタになっていたので、単にからかわれていたというわけでもなさそうです。
バンガロールは物価が高いとはいえ、それでも探せばお昼は40ルピーくらい(2019年現在の価値で約60円)で食べれるところもあります。スターバックスのメニューも現地にあわせて、多少安くはなっているでしょうが、カフェラテのグランデは税金別で 420 円です。お昼ご飯 7〜8 回分がコーヒー1杯と思えば高いですよね?
2016年の新生銀行さんのサラリーマンのお小遣い調査によると、男性の昼食代は平均600円を切っているそうです。います。あなたは「1杯およそ 5,000円のコーヒー」飲みますか?
仕事をしながら音楽を聴く
上司との電話会議を終え、コーヒーをすすりながら「自由にコーヒーやお茶を飲めるのはやはりメリットだよなあ」とぼーっと考えていました。そしてMacで自分を「あげる」ための一曲、ブラームスの交響曲第2番をかけたのでした。
考えてみれば、ヘッドフォンを使わないで好きに音楽を聴けるのもメリットだよな
クラシックを聴かない方はご存じないかもしれませんが、ブラームスの2番は、かっこいいメロディがちりばめられている曲の一つです。最近のMacは音が随分良くなったと感じます。ちゃんとステレオですしね。それなりに音は出ます。いつの間にやら金管楽器の息継ぎまで聞こえる録音になっている iTunes、まあまあ聞けます。
一方で、あたりまえですが、ハープの高くて繊細な音から、ティンパニーやベースの重低音までをすべてカバーするのはちょっと荷が重すぎます。人間の声だとマリア・カラス(ソプラノ歌手)のハイCなんかも辛いわけです。
・ビゼーのカルメンを歌うマリア・カラス 2'17位から
(YouTubeのビデオです。一番高いところは6分くらいからです。)
・シューベルトのアヴェマリアをうたうマリア・カラス (YouTube)
そんなわけで「世界最高の音」といかないまでも、少しいい音で聞きたいなぁという欲求はあります。そこで、スピーカーを探し始めたわけです。
お風呂でお気に入りの音楽を聴きたい
探すとなったら色々欲が出てきて、一つが「お風呂につかりながらお気に入りの音楽を聴きたい」というもの。まさかケーブルを引き回すわけにも行かないので、Bluetooth接続で、防水という条件で探してみると、意外と選択肢が少ないのです。
最後まで候補に残ったのはこの子たちで、音を実際に聞いたのに、この記事を書いている時点で、かれこれ1ヶ月ほど決められずにいるという優柔不断さ。
・Bose Soundlink Mini 2
・JBL Charge 3 (*1)
・Sony SRS-XB32
(*1) もたもたしていたら、なんか JBL さんから Charge 4 がでるみたいです。
低い音が出ない!
「さてどんな音がいいか」そんなことを考えていると、久しぶりに友人とご飯を食べに行く機会がありました。飲んべえではないけれども、彼と出かけるときは居酒屋でもなんでも行って話し込むのです。彼はちびちびお酒を飲みながら、私はいつも通りウーロン茶で仕事のこと、プライベートのこと、趣味のことを話します。
しばらく音楽聴けてなかったんだよねぇ。久しぶりに電源入れたら、音が出ないんだよ。
とても耳のいい人で、アンプもスピーカーも自分の好みのものをそろえている人。無駄に高いもの買うことはしないけど、妥協できないとせっかく買ったものでもすぐに売ってしまうような人。その彼がこんな風に言うのです。
電源入れたらさ、ビオラから下(の音階)全部聞こえないんだよね
ビオラの出せる一番下の音から下が全部聞こえなかったというのです。音域的にはベースやドラムのビートが聞こえない範囲。致命的です。
新しいアンプを買おうと思ったけれども、いいと思っているアンプがあまりにも高い。そこで、中古屋に足を運んだそうです。ところが、店員に何台出してもらってもあまりにも気に入ったものが出て来ないので、「金に糸目はつけないから一番いいのを出せ」といったそうです。(普段は冷静な人ですだが、こういうときは意外と大人げない人です。)
一番いいと言われているアンプと、一番いいと言われているスピーカーで聴かせてもらっても、どうもしっくりこない。そこで、持っているアンプのメーカーと型番を伝えたところ、おずおずとおくからビニールにくるまれたアンプを出してくる店員。それは20年前の製品です。
電源を入れる。
すっとバイオリンの音が立ち上がってくる。
「これだ!」とそう思った彼は早速購入したそうです。
さて、疑問が一つ。なぜ最近の製品ではなく、彼は古い製品の方を気に入ったのか?店員さんはこんな話をしてくれたそうです。
アンプもスピーカーも録音した音を素直に出しているわけじゃないんです。メーカーによって味付けというか、多少音のメリハリとかが違いますから。
実は、1990年代の後半くらいに低音の効いた音が出る製品が売れた時期があるんです。メーカーも商売だから「売れるから」と手軽に買えるものはみんなその味付けになったんです。メーカーの音を決める人が変わると味付けは変わると言うけれども、変わる理由には、流行っていうのもあるわけですよ。
2000年くらいからあとは手頃に買えるアンプはみんなそんな感じです。
(音が)上から下まで綺麗に出るアンプは、あるにはあるけど、高い。これだってもう純正部品はありませんからね、今回はこの値段で出せますけど、次に選ぶときはお客さん苦労しますよ。
誰(た)がために音は鳴る?
時代時代に売れるものは変わります。それは当然のことだと思うけれども、選択肢がなくなるのは困るなと思います。赤字になってしまっては作り続けることはできないのだろうけども、気に入っているものがなくなるのは悲しい、
好きな作家さん、好きな音楽、好きな絵画。
なくなってからその価値に気がつくものは多い。
「誰がために音は鳴る?」
もしそれがあなたのためだと思えたら、
少しだけやせ我慢をして、
少しだけ余分にお金を払ってみるはどうでしょう?そうすることで、あなたの好きなものが少しだけ長生きするかもしれない。
私には、そんなに悪いお金の使い方ではないと思えるのです。
参考文献
・スターバックスコーヒージャパン ビバレッジメニュー
・新生銀行 2016年サラリーマンのお小遣い調査結果
・ビゼーのカルメンを歌うマリアカラス 2'17位から
・ヤマハ 弦楽器の種類と違い
・Bose Soundlink Mini 2
・JBL Charge 3
・Sony SRS-XB32
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