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年賀状仕舞いに思う


”年賀状仕舞い”


旧知の友人や親戚から、「今年で年賀状仕舞いを致します」という年賀状が何枚か届いた。

まだ60代。

年賀状仕舞いをするということは、人との関わり合いを終えるということ。

親戚付き合いや友人との関係も終え、自分周辺の最小限の人間と環境の中で生きていくということなのだろうと思う。

まだ60代!

え?

それでいいの?

ほんとにそれでいいの?


と思う。


日本の平均寿命は男女とも80代。
女性に至っては、90近い。
まだ20年以上もあったりする。

そんな長い時間をどうやって過ごしていくのだろう。


時々、ふと、思う。


もし、コロナが無くて、あのまま音楽を教えていたら、今頃、私はどんな生活をしていただろう。


毎年、恒例のコーラス大会に出て、その為の準備と練習。
家で細々と近所の人にピアノや歌を教えている。

年に一度か二度、小さなコンサートを開く。
それもいつまで歌えるだろうかと出なくなっていく歌声と向き合いながらの日々。


夫の年金と自分の少しばかりの年金。
音楽を教えているパート程度の収入を足して、やりくりしながら、毎日、これといった目標もなく、

自分の夢も人生もだんだん諦めていく。

そんな毎日だったのかもしれない。


コロナが起きて5年。

すっかり人生が変わった人も多かった。

私も音楽を教える、という仕事は全て失って、家族全員が自宅待機で家にい
る。
そんな時間にパソコンにただ向き合っていた。

仕事を全て失って、手元に残ったのは、パソコンとブログだけ。

時間は山のようにある。

ただ、ひたすらに書いていた。

そんな毎日。


あの時、ブログもパソコンもなければ、私には、きっと旧知の友人のように、60代で年賀状仕舞いをしようと思ったかもしれない。

長年、関西のオペラ界で主役を張ることが多かった親戚の男性歌手のように、

「60になったので、そろそろ終活の準備として年賀状仕舞いをします」と書いていたかもしれない。


昨年、20年ぶりにある知人に連絡を取った。

彼とは、娘や息子の中高時代に一緒に保護者会役員をした仲。

税理士の彼に仕事の税務上の相談をしたくて、連絡をしたのだ。

「お前、えらいことになってるやんけ〜」

彼には、写真入りの年賀状で現在の仕事と連載のQRコードを送っていたのだった。

「俺、年賀状見て、ビックリしたで!
そいで、なんや、なんかあったんか?」

20年のブランクなど風の如く吹き飛ばし、彼はまるで昨日出会ったかのように話し出す。

「いつでも困ったことあったら、電話、かけてこいや」

彼の奥さんとも保護者会で知っている私は、子供が卒業した後も、ずっと年賀状だけは交換し合う仲だった。



彼曰くえらいことになってる(笑)私は、これから、たくさん、彼にお世話になっていくことだろう。

人生は長い。

一旦切れてしまったように見える縁でも、細々と年賀状でさえ繋がっていれば、

また縁が復活することもある。


私は年賀状を送り続けようと思う。

年賀状仕舞いをした人達にも。

いつお世話になるかもしれない。

人生は長いのだから…



アメブロでこの15年、いろいろ書いてきましたが、今年からは、noteの方に主力を移そうと思います。
音楽記事とは別に、コラムという形で、こちらにも時折、エッセイを書いていきたいと思います。
また、過去に書いた小説を別アカウントで公開していましたが、それもこちらに統合しようと思いますので、アップしましたら、興味のある方は、読んでみてください。
小説は、またチャレンジしたいものの1つです〜


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