三浦大知『能動』に見る歌声の多様性
三浦大知の新曲『能動』のMVが公開されました。
赤と黒を基調としたMVの世界観の素晴らしさもさることながら、楽曲に使われている彼の歌声の多様な種類を聴くことが出来る優れた1曲になっています。
三浦大知と言えば、ダンスパフォーマンスのレベルの高さが圧倒的ですが、近年、歌唱力が格段に伸びていると感じます。
今回公開された『能動』では、彼の多種多様な歌声のレベルの高さがあちこちに顔を覗かせ、MVの世界観の確立に大きな役割を担っていると感じます。
彼の歌声の分析とそこから見えてくる彼の音楽への向き合い方について記事にしました。
冒頭部分だけを無料公開します。
歌声の進化
私は彼の歌声をソロ転向時のデビュー曲からアルバムも含めて全て聴いてきました。
その中で感じるのは、彼が年々、歌の実力を上げているということです。
こんなことを書くと、ファンの方に叱られそうですが、彼がソロに転向した当時は、決して彼は歌が上手いとは言い切れませんでした。
やはり三浦大知の魅力は圧倒的なダンスパフォーマンスにあり、ダンスの振りにつられて、歌声が「ふらつく」という現象は少なからずあったと感じます。
この「ふらつく」というのは、いわゆる誰の耳にも不安定に聴こえる歌声というよりは、響きの芯が抜けてしまっている、響きが安定しないということを指しています。
特にそれは、ファルセットの音域に関して言えることで、彼のファルセットは長い間、響きが安定しませんでした。
それは、ヒットしたバラード曲『ふれあうだけで』で非常に顕著であり、実際にライブで聴くと、安定した歌の時もあれば、ファルセット部分になると響きが抜けてしまって頼りなく聞こえる時もある、というように、その日その日の彼の調子に左右されることが多かったのではないかと感じます。
私が彼の歌をリアルで初めて聴いたのは、2017年10月に行われた「朝日ドリームスペシャル2017」でジェジュンやEXILE TUBEと一緒に出演した時のことでした。
この時のことは、今までも何度か記事に書いたことがあるのですが、この時の彼の見事なパフォーマンスや音楽に対する姿勢が強烈に私の中に印象として残り、その後、私は彼のファンになり大知識人になりました。
ですから、その時のことはハッキリ覚えています。
多くの楽曲を彼は歌いました。今なら、どの曲を聴いても十分わかるのですが、この時、私は三浦大知という人の楽曲をまるで何も知らなかったのです。
その中で唯一、聞き覚えのある曲が、『ふれあうだけで』でした。
おそらくCMソングとして流れていたものを何度も耳にしていたのでしょう。ですから、この楽曲が聞こえてきたときは、「あ、知っている」という印象でした。
しかし、このときの彼の歌声は、CMで聴き慣れたものとは違い、ファルセットの部分で極端にボリュームダウンしてしまう、というものだったのを覚えています。
その為に、いつも聴き慣れていた歌声と実際の歌声は違うという印象を抱きました。それでもそれをカバーして余りあるほどの彼のパフォーマンスや、何より、「一緒に音楽を楽しみましょう」という彼のスタンスとメッセージがこちらに伝わってきて、ファンでなくても十分に楽しめる空間を作り出しているのが魅力的だったのを覚えています。
あんなに楽しい空間を私ははじめて経験したのでした。
それからは、一気に彼のファンになり、毎年、必ずツアーを拝見しています。
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