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Ado「モナリザの横顔」(Kアリーナ)とファントムシータ

12、13日に横浜のKアリーナで開催されたAdoの「モナリザの横顔」を拝見しました。
今季ツアーのファイナル(振替は除く)でしたが、Adoがプロデュースしたというガールズアイドルグループがライブの前にお披露目で2曲、パフォーマンスをしました。
そのことと合わせて、記事にしたいと思います。


ライブレビュー

当日のセトリ

当日のセトリは、もうあちこちに出回っているのですが、一応、こちらにも記録として。

1日目(10月12日)
アリーナ横浜 Day1セットリスト
1.心という名の不可解
2.逆光
3.唱
4.ウタカタララバイ
5.リベリオン
6.過学習
7.空いたくて
8.フェイキング・オブ・コメディ
9.ハングリーニコル
10.MIRROR
11.ルル
12.アタシは問題作
13.クラクラ
14.ショコラカタブラ
15.抜け空
16.夜のピエロ
17.オールナイトレディオ
18.Value
19.立ち入り禁止
20.FREEDOM
【アンコール】
Hello Signals
あのバンド
初夏(新曲)

2日目(10月13日)
1.心という名の不可解
2.逆光
3.唱
4.ウタカタララバイ
5.リベリオン
6.過学習
7.空いたくて
8.フェイキング・オブ・コメディ
9.ハングリーニコル
10.MIRROR
11.ルル
12.アタシは問題作
13.クラクラ
14.ショコラカタブラ
15.抜け空
16.夜のピエロ
17.オールナイトレディオ
18.Value
19.立ち入り禁止
20.0
21.FREEDOM
【アンコール】
Hello Signals
あのバンド
向日葵
初夏(新曲)

これらを見てもわかるように、2日目は2曲ほど多かったんですね。私は1日目に拝見しました。

セトリからもわかるように、今回のライブでは、誰もが知っている『うっせぇわ』『踊』『新時代』が抜けていて、熱心なファン以外では馴染みの曲があまりなかった、という印象を持ちました。
ツアーファイナルということからも、今回のツアーの集大成という意味合いが大きいものでしょうから、アルバム曲中心ということなのでしょう。

相変わらず、MCはアンコールの前の最終曲までは一切なく、19曲を連続で歌い飛ばしていく強靭な喉を披露していました。
圧倒される歌声ですが、今回は、長時間、エネルギッシュに歌える発声とはどういうものなのか、ということを知りたくて、彼女の歌声を注意深く聞かせて頂きました。

歌声の秘密

今回、彼女の歌声を聴いていて感じたのは、地声と裏声の切り替え点が安定していること。
常に彼女は、この2種類の歌声を使っているのですが、地声は顔の前面に声を当てて発声していくベルティングボイス。
そして、高音部は、裏声と地声のミックスボイスを多用しています。

元来の彼女の声は、ソフトで太めの幅のある声をしています。
ハスキーさは全くなく、全体に艶のある濃厚な色彩の歌声です。
また、歌声の幅もベルティングボイスとミックスボイスではほぼ差がないために、同じ太さの歌声が、低音部から高音部までズドーンと通り抜けて行く、という印象を持ちました。ただ、声の切り替え点、転換点はハッキリしているタイプです。
低音部から高音部まで、音域に関係なくシャウトする特徴のある叫び声は、完全にベルティングボイスのポジションです。
これにヒーカップ唱法を加えたものが彼女の歌い方の特徴ですね。
その為、強靭な歌声が出るのですが、声門を強く閉じることによって生み出される歌声で、彼女の場合、非常に声門を強く閉じることの出来るタイプなのだという印象を持ちました。
これは、持って生まれたもの、声帯と周囲にある筋肉の特徴だと思います。
いずれにしても、その強さを保つために、長時間、強靭でエネルギッシュな歌声を維持出来る、ということなのだと思います。

また、MCの声のポジションは全体的にミックスボイスのポジションという印象を持ちましたので、普段から、彼女は、意識的に鼻腔に声の響きを当てて、声帯を守っている、という印象を受けました。
地声では話さない、ということなのでしょう。地声で話すことは、声帯に大きな負荷をかけることになるからです。

彼女の思い

MCでは、国立の時と同じように「日本」「文化」「VOCALOID」というキーワードが並びます。
「日本の良さ」「日本の文化」「ボカロ音楽を伝えたい」というメッセージが発せられ、世界ツアーを経験したことで、その気持ちはさらに彼女の中で強くなった、ということを感じました。

私は昨年9月に大阪城ホールで拝見したライブで彼女が、「これから私は世界を狙います」「グラミー賞を取ります」と宣言し、自分の思いを吐露したMCが非常に印象に残っています。
彼女のライブは、その時、初めて拝見したのですが、若い彼女が、「日本の文化」や「日本の良さ」というものを世界に自分の音楽を通して伝えたい、と話していることに、非常に感銘を受けました。
Ado(アド)という名前からも彼女が日本の古くからの伝統文化というものを意識していることや大切にしていることをあらためて感じさせられたものです。

今回も国立の時も、彼女は、一貫して、昨年のMCと同じ思いを話していましたが、世界ツアーというものを経験して、一層、それが現実化し、具体的に彼女の中でイメージ化出来たのではないでしょうか。
熱い思いや、胸に秘めた思いがたくさんありすぎて、まだ上手く言語化できていない、という印象を持ちましたが、会場のオーディエンスには十分に伝わったと思います。
彼女がそれを実現していくのを楽しみに拝見したいと思いました。

ファントムシータ


今回、彼女がプロデュースしたというガールズアイドルグループ「ファントムシータ」のお披露目がありました。
4000人の中から、オーディションで選ばれたという5人のグループですが、Adoが選ぶだけあって、メンバー達は、強靭な歌声のボーカルグループです。
いわゆる日本に多く存在しているガールズアイドルグループとは、歌声一つを取っても、完全に一線を画した別物、という印象を持ちました。

日本のガールズアイドルグループは、〇〇坂が主流の「可愛い」「ダンス音楽」集団のグループという印象を持ちます。しかし、「歌」「歌唱力」という点に於いては、音楽好きな聴衆を満足させられるものか、と言えば、十分とは言えないでしょう。
しかし、Adoが作った「ファントムシータ」は完全にその部分に於いても、十分に満足させるものを持っているように思いました。
中毒性のあるフレーズが中心となっているメロディーラインの楽曲に、どこか懐かしさを感じさせるようなレトロな音楽。
それなのに、強靭な歌声とヒーカップ唱法。
「歌唱」という点において、完全にAdoと同じ路線を感じさせました。

歌唱力や独特のビジュアルという点、そして、初ライブは日本武道館という新人には異例の場所ですから、それだけでも、どれだけ彼女達に対する期待が大きいか、ということがわかります。

Adoがプロデュースしたファントムシータが、今後、どのような音楽を提示していくグループになるのか、非常に興味深く、見守りたいと思いました。


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