見出し画像

渡辺翔太とヒュニンカイのコラボに見る日韓アイドル歌唱力の差異(優里「ベテルギウス」)

少し前になりますが、7月6日に放送された『THE MUSIC DAY』(日本テレビ系)でのコラボ企画で歌唱した渡辺翔太とヒュンカイの歌唱を拝見しました。
巷でずいぶん議論がされることになった今回の歌唱について、歌声の評論を得意とする立場から、2人の歌についての分析を行いたいと思います。
また、物議を呼んでいる日韓のアイドルコンセプトの違いについても、後半に考察しています。
7000文字を超える記事になりました。
多くの方が読みやすいように、記事前半を無料で公開し、後半部分だけを有料で提供します。


2人の歌声分析

私の特技の中に、「声鑑定」というものがあり、「話し声」や「歌声」の特徴から、その人の性格、性質などを分析するものがあります。それとは別に声の外見的特徴である音質についての分析もあります。青春出版社の方で連載しているシリーズ「人生を変えるJ-POP」の中でも、扱った歌手の音質鑑定を何人か掲載していますが、この「音質鑑定」をすると、だいたい、その歌手の歌声の特徴というものを知ることが出来ます。今回は、2人の歌声について、それぞれ、私が感じた特徴を書かせて頂き、その後、そこから歌唱力についての差異について書いていきたいと思います。

1.渡辺翔太の歌声の音質鑑定

彼の歌声の特徴は、複雑な響きを持ったやや幅のある歌声ということが言えます。
いわゆるストレートボイスとは全く異なり、細かな幾つもの響きを持った歌声であることがわかります。
また、声の幅はそれほど太くもなく細くもなく、中ぐらいの幅です。音色としては、甘い優しい響きをしています。
歌声の色彩感が強く、濃い響きを持つ歌声です。全体に細かなひだのような響きを持つ歌声と言えるでしょう。そういう響きを持つ歌声というのは、ストレートボイスに比べると音程が揺れやすくなる、という特徴を持ちます。
声域的には、高めのバリトン(男声の中音域)という印象です。

2. ヒュニンカイの歌声の音質鑑定

彼の歌声の音質は、ストレートボイスです。
ストレートボイスというのは、響きにビブラートを持たない直線的な響きの声質のことで、多くの人に見られる特徴です。
声の幅は中ぐらいで、それほど太くもなく細くもありません。
音質的には、色彩は、無色に近く、濃厚な色合いを感じさせません。どちらかと言えば、透明性の高い歌声を持っていると言えるでしょう。
また、声の中心に芯になるような響きを持っています。この芯の存在によって、音程は非常に安定したものになります。
声域的には、テノール(男声の高音域)でハイトーンボイスであることを感じます。

このように2人の歌声の特徴を並べてみると、違いがよくわかるのではないかと思います。
そして、オリジナルの優里は、テノールのハイトーンボイスのストレートボイスです。
即ち、オリジナルの歌声に近いのは、ヒュニンカイであるということです。

『ベテルギウス』の楽曲の特徴

優里の『ベテルギウス』の楽曲の特徴として、全体に非常に高音域の曲である、ということが言えます。
曲全体のキーポジションが高い部分でメロディー展開がされているのです。
これは、優里自身がハイトーンボイスのテノールの歌声の持ち主であることから考えれば、彼自身が一番歌いやすい音域で楽曲を作っていることがわかります。
さらにこの楽曲の特徴として、後半のサビの部分になると、どんどん音域が高くなり、大サビに向かって、さらに高音域へとメロディーが展開していくのです。また、高音域の音が何度も何度も繰り返され、連続で音が連なっていくのが特徴です。
即ち、高音域をメロディーが行ったり来たりするというメロディーラインの作りになっているのです。その為、歌手には非常に喉に負荷をかける楽曲であるとも言えます。
優里は、自分自身が歌うことを想定して楽曲を作っていますので、彼はその音域が十分に出せるということであり、高音域での連続のメロディーにも耐えうるだけのスペックを持っているということなのでしょう。

このような楽曲の特徴と、上記の2人の歌声の特徴を比べて考えてみると、この楽曲は、ヒュニンカイ向きであるということがわかります。
音域的にも声質的にも、彼の歌声には適した楽曲だったということです。
それに反して、ハイバリトンの歌声を持ち、ビブラートボイスを持つ渡辺翔太にとっては、音域的に非常に負荷のかかったメロディー展開だったということが想像できます。また、連続の高音域のメロディー展開は、彼のようなビブラートボイスの持ち主には、歌声の音程のコントロールという部分で非常に難しい楽曲ということが言えるのではなかったかと思うのです。

その為、2人のコラボ部分の歌唱を聴くと、上のパートをヒュニンカイが歌い、下のパートを渡辺翔太が歌うというパート割りになっています。
また、そこから続く高音のサビの部分をヒュニンカイが1人で担当しているということからもわかるように、ヒュニンカイの持つ音域的には、この歌はそれほど大変ではなかったということなのです。
しかし、それよりも低い声域を持つ渡辺翔太には、かなり音域の部分でハードルが高かったかもしれません。

物議を呼んでいる2人の歌唱力について

上記のようなことを前知識として知ってから、2人のコラボを聴いてみると、2人の違いがよくわかるのではないでしょうか。

そして、歌唱力の点で分析すれば、以下のようなことがわかります。

ここから先は

5,154字

¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?