稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.18
ミュンヘン在住“ピアノの詩人”
大田麻佐子さんが奏でる
ポエジー溢れる自由な世界
ミュンヘンに暮らすピアニスト、大田麻佐子さんのこの動画をFacebookで見つけた時、心臓を鷲掴みされた。ベルリン芸術大学ピアノ科を最優秀で卒業後、現在はヨーロッパを中心に、クラシック、現代音楽、即興、パフォーマンス、劇音楽や映画音楽の作曲など、ジャンルを超えた幅広い演奏活動を行い、2016年ミュンヘン・ギージング文化賞第1位受賞、2019年同市より、音楽芸術奨励賞を受賞。ミュンヘン文芸新聞では「ピアノの詩人」とも評されている彼女に。
YouTube 動画 Masako Ohta - innere Landschaften
Video by Benedikt Schulte
大田麻佐子 内なる風景 をプレビュー
ドイツでの生活が30年以上になる麻佐子さんに、なぜドイツで暮らし続けているのか伺ってみた。
「桐朋学園大学で出逢えた恩師、ジョルジー・シェベック教授の薦めで1985年にベルリン芸術大学に留学し、風土とメンタリティが自分にあっているなあと感じる居心地の良さと、自分の中で悶々と探していた道が、なんだかここにある気がして、それからずっとドイツに住んでいます」
その間、結婚、出産、離婚などを経験し、娘さんの家族や良き友人たちにも恵まれているという。実際はどんなふうに暮らしているのだろう。
「湖で泳いだり、山道をハイキングしたり、美術、現代舞踏、演劇界の友人たちとコラボをしたり、お互いに観賞して、刺激を受け合ったり。おっとりとした小さな都会ミュンヘンで、幸せを感じつつ暮らしています。ヨーロッパ内でのコンサートなど、移動が便利なのも長所です。そして、学生時代を過ごしたベルリンは、今でも私の大好きな第2の故郷です」
ミュンヘンのイギリス庭園で娘さんとお孫さんたちと
photo by Eva Marlene Etzel
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