オンラインショップ・セレクション ひなた農園10(最終回)
少し書くことをお休みしている間に、春が来て梅雨になってしまいました。梅雨と言っても毎日猛暑ですが。
始めにお伝えしたい事があります。去年の6月から書かせていただいていたコラムですが、今回の号で最後にさせて頂くことになりました。短い時間でしたが、農家のお母ちゃんの独り言のようなコラムを見てくださりありがとうございます。今回は少し長い文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
今年は息子が小学校1年生になりました。初めての小学校、新しいお友達、色々な事を心から楽しめていない息子。そして、4月になって急に「保育所行きたくない」と言い出した娘。
日向家にとって2021年4月は変動の始まりでした。
保育所ボイコット中の娘と毎日畑に通い、一緒に仕事をする日々が始まりました。それなりに1人で遊び、ちょっとお手伝いもしてくれます。そして1時間に1回はお腹空いた~という娘に間引きのニンジンを抜いて、タオルで少し拭いて「はいどうぞ」とあげていました。娘は気に入ったらしく、それから毎日4本は生でかじっていたと思います。小さすぎるニンジン、大きすぎるニンジンはあまり好きではないらしく、中ぐらいの大きさの物が柔らかく甘くて美味しいらしいです。子供は素直で味に敏感!確かにそのサイズのニンジンは甘くて柿のようでとても美味しかったのです。
そんな娘との大変だけれど楽しい畑生活ですが、途中今度は息子が、
「妹はお休みして僕は学校に行って…そんなのズルイ!!」
と言い出し、これまた大変でした。こんな時、母は一喜一憂せず、ドンと構えていたいのですが、現実は踊らされまくりで…でも必要な時に必要な事が起きていて、1つクリアーすると、1つ大きくなれている気がします。
4月、5月とお休みすることが多かった娘ですが、何かの拍子にスイッチが変わったみたいで、今は保育所がとっても楽しいらしく毎日行きたいと言っています。
畑での新しいことといえば、4月に竹チッパーをいう粉砕機を購入しました。この機械は竹をパウダー状にもすることができ、このパウダーを発酵させると乳酸菌がたっぷりの土壌改良剤が出来上がります。竹林は放っておくとどんどん広がり、田舎では大問題です。竹を切って焼くのも一苦労で、竹林をどうしていったらいいのか、悩みの種でしたが、最近は竹が宝のように見えてきます。竹パウダーを畑に使用すると、乳酸菌が土中の微生物を活性化し、農作物の成長促進、食味・糖度アップ、病気・害虫被害の減少等に効果があると言われています。今年は、竹パウダーを乳酸発酵させて、さらに美味しい野菜ができればと思っています。他にも畝に敷き詰めて、ビニールマルチの代わりにしています。色々実験しながらですが、活用していきたいと思っています。
ひなた農園では去年から大量に出るビニールマルチ(畝の上に敷く黒いビニールのシートの事です。抑草や地温を上げる効果があります)のゴミを無くそうと努力しています。竹チップをマルチの代わりに使用し、あとは生分解のビニールマルチを使い、土に還しています。そんなこともあり最近、プラスチックごみについて色々調べています。
皆さんご存じですか?プラスチックゴミでリサイクルされているのは全体の9%、焼却場での処理は12%(燃やすと大量の二酸化炭素が出て温暖化につながるためやみくもに燃やせないそうです)そして残りの8割は埋め立てだとか...。私はそんなに大量のプラスチックが処理できず放置されているなんて知りませんでした。一部は海に流れ出し海洋汚染につながります。プラスチックは土にはかえりません。時間が経って劣化するとマイクロプラスチックになり、生き物すべてに影響がでるのではないかとされています。安くて便利なプラスチックですがこのまま作り、使い続けていくと大変な事になってしまいます。最近は企業もこの問題に色々取り組んでいますが、私たち消費者1人1人の意識を変える事もとても重要だと思っています。
そんな考えから、5月よりひなた農園の野菜の梱包もビニールの個包装から、新聞紙にくるんだものを鮮度保持袋にまとめて入れる梱包に変えてみました。野菜の梱包を変えてもたかが知れているのかもしれませんが、これをすることによってより多くの人がプラスチックごみについて考えてくれたら嬉しいなという思いを込めて変えてみました。
先日、息子にプラスチック問題のドキュメンタリーのテレビを見せてみました。その上で、オモチャや日々の生活の中でプラスチックはあまり買わないようにしよう!!でも0にすることは難しいから、どうしても欲しいものがあるときは、すぐにゴミにならないよう長く大切に使えるものにしようと話しました。その後、事あるごとに「これはプラスチック?」と聞くようになったり、百均に行ってもおもちゃを欲しがらなくなったり、変化が面白いです。これからの未来を背負って立つ子供たちにこそ、こういう環境の問題をちゃんと伝えていきたいと思っています。写真はビーチクリーンに参加した時の物です。
そして最後に、ひなた農園の目指すところはどこだろう?と考えてみました。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、私たち夫婦は東日本大震災の後、食や生き方を考え直し、有機農家になる事を決意しました。その頃は「これからの時代、何が起こっても、自分が安心して食べられる物があれば大丈夫。そしてその野菜たちをセットにして販売しよう」と思い始め農家になりました。8年の間に、子供が2人産まれ、猫も2匹、犬も2匹増え何だか賑やかになりました。そんな中で最近、「明るい未来につながるものでありたい」と思うようになりました。
例えば微生物がたくさん住む土を残したい、栄養たっぷりで心も体も元気になるような野菜を届けたい、そして未来の希望である子供たちが元気に健康で大きくなれる環境を作りたいと思うようになりました。そしてその中でも、子供たちの為にできる事を色々考えています。
皆さん血液脳関門というのをご存じですか?簡単にいうと、良いものと悪いものを区別する脳の関所の様なもので、環境化学物質など有害な物が脳に入らないようにしてくれています。ただこれが機能し始めるのは6~12歳頃からと言われており、小さい頃に例えば添加物や残留農薬が多い物をたくさん食べると脳関門を通過してしまい化学物質は脳に溜まってしまいます。脳に溜まった化学物質は様々な病気を引き起こす可能性があります。
小さい頃の食生活が大切だというのはこの血液脳関門がまだ働いていないからで、子供にはなるべく脳に影響がない無農薬の物、添加物が含まれてない物を食べさせてあげたいなと思います。
最近全国で、学校給食を無農薬の食材にしてほしいと活動をしているママたちがいます。その方達の話を聞いていると私たちにも何かできないか考えるようになりました。ただ、小学校や中学校に野菜を卸したいと思っても、最近の給食はほとんどがセンターでまとめて給食を作っていて、到底うちで賄える野菜の量ではありません。でも、うちの子たちが通う保育所の給食なら対応できるかも!と思い所長先生に聞いてみると、こころよく引き受けてくださいました。こうして去年の年末から保育所への野菜の提供が始まり、今年は保護者会で食育の勉強会までしてくださる予定で、こうなったらいいなと思った小さな一歩がどんどん広がっています。
そしてもう1つ、子供が土の上を裸足で無邪気に遊べる環境を作りたいと思っています。去年・今年と新型コロナウイルスが流行っているので、できていませんが2019年から子供たちに泥んこで遊んで欲しい、農業を肌で感じて欲しいという想いから「畑で遊ぼう」というイベントを行っていました。最初は虫や土に触れることに戸惑う子供もいますが、最後には夢中になって畑で遊んでいます。コロナウイルスが落ち着いたらこのイベントも再開し、普段土に触れる機会が少ない子供たちが無邪気に遊べる場所を提供したいと思っています。
農業を始めて感じたことは、自分の体を作るものとして、日々食べる物はとても重要だということです。そしてそれと同じくらい地球の未来を背負って立つ子供たちの健康や幼いころの経験もとても大切だなと思っています。明るい未来のために、今後も楽しみながら色々できたらと思っています。
これまでひなた農園のコラムを読んで下さり、本当にありがとうございました。
ご縁に感謝です。
ひなた農園 ひなたみか
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映画監督松井久子が編集長となり、生き方、暮し、アート、映画、表現等について4人のプロが書くコラムと、映画づくり、ライティング、YOGA等の…
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