稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.21
ノスタルジーが漂い詩情が溢れ
かそけき存在を愛おしみたくなる
合田ノブヨのコラージュ世界
「Flower Names/少女」
花の名前を持つ少女たちがコラージュの中で遊んでいて、「エリカ、ローズ、マルグリット、ヴァイオレット。野に少女たちが花咲きます」と書かれた、展示のキャプションを目にした時、ノスタルジーが漂い詩情が溢れ、何とも幸せな気分になった。普段は表に出さない、自分にとって最もインティメイトで繊細な感性が、心の奥底に仕舞い込んだ小箱から顔を覗かせたのを感じた。
コラージュ作家の合田ノブヨさんによる『花ぬすびと』展が、恵比寿駅から徒歩2分の隠れ家的なギャラリー、シス書店にて開催中。押し花と奏でる新作展である。押し花のコラージュ作品とともに、ガラス箱やマッチ箱を使用したオブジェが展示され、ギャラリーはさながら迷宮の入り口といった佇まい。
Galerie LIBRAIRIE6
ノブヨさんは1972年、東京生まれ。画家・合田佐和子(1940-2016)の次女。父は「耳」のシリーズで知られる彫刻家の三木富雄(1937-78)。1992年から毎年個展を開催。単行本、新聞、雑誌などの挿画も手がける。これはノブヨさんが5歳頃、リビングのソファで猫とうたた寝しているところを、母親が撮影した写真だそう。
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