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稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.13

没後35年、伝説の画家
鴨居玲の絵に魂が震える
晩秋の日本庭園に囲まれて

没後35年を迎えた洋画家、鴨居玲の展覧会は現在『静止した刻』展が久留米市美術
館にて12月6日まで開催中だが、田園調布にあるみぞえ画廊東京店でも、約15点が
展覧され、孤高の画家の軌跡をたどることができる。

鴨居玲は1928年石川県生まれ。金沢美術工芸専門学校(現・金沢美術工芸大学)洋画
専攻科卒業。宮本三郎に師事し、早くから才能を認められるが、制作に行き詰まり
南米へ。1969年『静止した刻』で第12回安井賞を受賞し、一躍脚光を浴びるが、心臓の病気と創作に悩み、たびたび自殺未遂を繰り返し、1985年死去。

みぞえ画廊東京店は、田園調布駅改札(一つ)を出て、左側のロータリーをケンタッキー・フライド・チキンに面した道に進み、そのまま坂を登って宝来公園に突き当
たったら右折し、200メートルほど行った右側。徒歩7分。イチョウ並木の住宅街
を抜けると、京都の料亭のような日本庭園を臨む一軒家がある。

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                             みぞえ画廊の玄関

玄関からは、もう鴨居玲の『蛾』が見えている。『蛾』は鴨居がブラジルに渡ってからしばしば取り上げたモチーフ。彼は「蛾を、人間がしゃべることの虚しさの象徴として描いている」と過去に語っているが、描かれた男たちはすぐ近くにいるのに、向き合ってすらいない。余白の大きさが心象に重なって感じられる。

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