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稲木紫織のアートコラムArts & Contemporary Vol.26
2019年、33歳で早世した画家
黒坂麻衣さんの“最後の個展”
スパイラルガーデンで開催中
「海辺の馬」
ほわ~っとした乳白色で、半透明のヴェールに包まれているような独特の色彩感。
どこか幻想的でノスタルジーを感じさせる、静謐な佇まいの絵を最初に見た時の感動は今も忘れない。後に親友となった画家、黒坂麻衣さんは惜しくも自ら命を絶ってしまったが、彼女の最後の個展『夢の中の風景』が、6月30日から南青山のスパイラルガーデンで始まった。
スパイラルガーデンの会場
本展は、遺作展第二弾にあたる。2020年、第一弾の時は、作曲家武満徹の著書タイトルをもじって『色、透明と測りあえるほどに』と題した小文を、案内状に寄稿させていただいた。「ミルクが混じったような半透明の独特な色彩。様々な物語や映画のワンシーンを彷彿とさせるのに、語り過ぎないゆえに溢れ出んとする詩情の美しさ。黒坂麻衣さんの儚げでありながら訴えかけてくる絵は、微睡ながら見る乳白色の夢みたいなのに、心の奥底に真っすぐ降りてくる。静謐で内省的だが、清冽。イノセントな佇まいに魂が浄化されていく」と。
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