稲木紫織のアートコラムArts & Contemporary Vol.37
Ruth van Beek Exhibition
恵比寿の書店POSTにて開催中
オランダの美術家の独創的な世界
この作品が裏面全体となった個展の案内状が、渋谷区の書店&ギャラリーであるPOSTから届いた時、一目で気に入ってしまった。枠からはみ出した尻尾だか鼻だかわからない突起物はそのまま、ポストカードのサイズを飛び越えて、ちゃんと飛び出している。尻尾とか鼻とか言ったけれど、生きものかどうかすら定かではない。そんなルース・ファン・ビークの日本初個展が開催中だ。
ルース・ファン・ビークは1977年、オランダ生まれ。アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーで絵画を専攻し、後に写真科へ移る。雑誌『TIME』などに作品が取り上げられる。2013年、『British Journal of Photography』が選ぶベスト写真家20名に選出。代表作〈The Arrangement〉のシリーズで脚光を浴びる。写真集に『The Hibernators』『The Arrangement』など。
これらの作品を見て、写真家? と思うかもしれないが、中心はコラージュ作品で、その素材となるのは、古い雑誌や専門書などの写真の頁である。彼女はそういった写真の切り抜きを膨大にコレクションしており、どの頁がどんな作品になるかは、まさに実験による化学作用のよう。いわゆる正統派の概念にとらわれない作風が、彼女の持ち味なのだ。
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