swan song(仮)

ワールドトリガーの二次創作。オリジナル設定ふんだんに取り入れてます。
こういう話を書きたいなーという冒頭だけ詐欺。続き見たいって方が居たらきっと張り切ります(現金)
あんまり要素ないですが、風修にしたい意思だけはあります。




swan song


 哀しい声が、聞こえた気がした。

 

 石畳の回廊を複数人の人間が走っている。其処は古城を思わせるような古めかしい造りの建物だった。蔦が外壁を覆い、脆く崩れそうな部分を補強している。回廊の柱と柱の間から見える外の景色はスペインのサグダラファミリアを連想させるような細長い塔が幾つも重なっており、正しい道を知らなければ何処にも辿りつく事は出来ないだろう。

 乱星国家“ツォヌス”―――初めて聞く名前の、何処にも属さぬ小さな独立国家であるこの星を、修たちは訪れていた。風間隊、三輪隊、三雲隊による決して大規模ではない全く予定外の遠征だった。回廊を走る人間が全員ではないのは、風間隊と狙撃手たちは隠密トリガーで少し離れた位置から移動しているからだ。戦陣を切るのは三雲隊の隊長、三雲修であり彼らを誘導している近界民がさらにその先頭を走っていた。

 修の視界の正面を、濃いめの紺の外套をはためかせて走る近界民の名前はイーコスと言った。此処ツォヌスの星トリガーを護る“三人の騎士”の1人という事だった。年齢は分からないが微かに刻まれた皺が忍田や林藤よりも年上のようだと修は思った。所作も落ち着きを持った温和そうな男であるが、“蔦の棘”という黒トリガー使いだった。今回の遠征自体、彼が三門市を訪れた事に起因している。

 始まりは一週間前だった―――。

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