子どもたちの歌声
十一月一日そして二日は、子どもたちの通う学校の文化祭があって、ぼくも応援に行って来ました。
まず一日は小学校の学芸会。感心したのは三年生の合奏と歌でした。うまい……わけじゃない、でも、子どもらしい素朴な表現が、ぼくたち大人のひからびた心に慈雨(じう)のように染みわたります。
翌日は中学校の合唱コンクール。そう言えばぼくたちの頃にもあったな、と思いながら、可愛い顔だちの子もガラの悪い(失礼!)子もそれぞれ一生懸命に歌う姿を見ていると、技術うんぬんの話よりも、まず感動してしまいます。
そのトキになると、みんな決して「嫌々」じゃないんですね。休憩時間中にも、会場のすみに集まっては自発的に最終チェックをしている。クラスが一つの目標に向かってぐんぐんまとまっていく。目標を持つと、人は生き生きしてくるんです。同じ目標を持つ人が集まると、エネルギーが満ちあふれるんです。
ぼく自身は、学校時代はずっと美術に取り組んで来ました。大学では実際に製作こそしなかったけど、やはり美術が専攻でした。美術って、やればやるほど孤独になっていく芸術です。ゴッホとゴーギャンのように。
でも、音楽は違うんですよね。音楽はハーモニー。独唱もあれば独奏もあるけれど、それでも音楽は、人と人の心を繋ぎます。
大山に今年度開校した第五中学校は、三校が統合された学校だからいろいろ問題はあるに違いないけれど、今回の合唱コンクールを見ていると、「みんなけっこうやってるじゃん」と思えてきます。
こんなに良い時間を持てるなんて、みんな幸せだな。いや、いちばん幸せなのは、素敵なハーモニーに包まれて会場に座っていた、ぼくたち大人(先生、親、地域の人々)だったのかもしれない。ありがとう、子どもたち。あの時ぼくたちの心は、君たちの隣にいたんだ。(97.11.3)