たそがれ清兵衛、四たび
「たそがれ清兵衛」を見てきました。四度目です。──音楽がすごい。月山が美しい。子供たちがかわいい。以登ちゃんなんて、陰の主役じゃない? 最初のカット。亡くなった母親のそばで大きく見開いた瞳が、全編を見つめているような気がします。あのあどけない瞳の記憶があるから、最後に凄惨なシーンが待っていても、ぼくたちはやさしい気持ちで映画館を後にすることができる。
アッ、おぉ。「たそがれ清兵衛」がキネ旬ベストテンを制覇したぞ! 当然とはいえ、うれしい。田中泯さんも新人賞を。よかったねえ。
いつも山田洋次作品を酷評する映画評論家某がいて、今回はどんな手口で貶めてくるのかと興味津々雑誌をめくったら、なんとこの度は彼も涙を禁じ得なかったようだ。でも、そこは年期の入ったアンチ山田。涙を流したのは自分がビンボー物語に弱いからで、映画の力のせいではない、ですってさ。笑わせてくれます。
ま、人それぞれの感じ方があって良いのだけれど、ぼくがいつも目頭を熱くするのはねぇ、まず、子供たちが「おとはんがいるから寂しぐね」と清兵衛に言い、彼が、「そうか。いい子だ」と答えるところ。
そして、これは誰もが滂沱するに違いない、朋江が清兵衛の母の詰問に(本当は単なるボケなのだけれど)「清兵衛様の幼なじみの朋江でがんす」と、涙ながらに答えるシーン。
さらには、「幸せの黄色いハンカチ」さながら、朋江が清兵衛の帰りを待っていて、清兵衛が「あなたがいてくださるとは」と朋江の手を握りしめる、あの気高くも美しいラヴ・シーン。
貧乏じゃないんだ。愛なんだよ、美しいのは。(2003.01.09)