気になる男の気になる話

 やっぱり気になる男は気になることを言うものだ。雑誌記事でSteve Jobs(スティーヴ・ジョブズ)単独インタビューを読んで思わずうなってしまいました。ただの経営者じゃありませんよ、彼は。ただ者じゃないからかつてAppleから放逐され、ただのただ者じゃないからAppleに復帰して、Appleを蘇らせたんじゃないかな。
 このインタビューは実に含蓄に富んでいて、彼の哲学、人格、そして仕事とが見事に美しく一体化した様を見ているような気がします。ある意味では、男の理想とでもいえるのかも。カリスマですね。
 たとえば彼は、窮地に陥り自信を喪失していたAppleに復帰したとき、みんなにこう語ったといいます。

ことごとく正しい判断を下す必要はないんだ、十分な数が正しければいいんだ、だから硬直してしまうな……

ブレント・シュレンダー(山崎理仁訳)「スティーブの3つの顔/Steve Jobs単独インタビュー」、「MACPOWER」一九九九年一月号所載

 必要なときに、必要な人に、必要なアドバイス、必要なサジェスチョンが出来るというのは大変な才能です。多くは喋りすぎてしまうんですね。あるいは要求しすぎる。
 これは仕事ではないけれど、自分の学生時代を振り返ってみると、やはり上手くいっていたときは勉強の内容をしぼっていたし、ダメだったときはあれもこれもと手を広げすぎていたものです。
 深夜遅く、そして朝は早くから何冊もの参考書を前にして一生懸命に勉強してた頃は、時間ばかり長くて成績はさっぱりでした。ところが、目標をはっきりさせて、試験に出ること、不得意な分野にフォーカス(!)して量的にも時間的にも少な目に勉強したときは、成績が上がりましたね。結局、全部わかる必要はなかったのです。十分なだけ理解できていれば。
 どうやら問題は、自分の哲学を持つ、ということのようです。仕事にせよ勉強にせよ、およそ自分の人生には自分の哲学が必要だということ。それさえしっかりしていれば、決断を正しいものにできる。いちばん良くないのは、決断を忌避(きひ)することですよね。自分に自信がないと、人はよく結論を先送りするものです。あるいは他者にゆだねたりね。
 Jobsは、「ビジネス上の決断で後悔はない?」と尋ねられてこうこう答えています。

もちろん、違うふうにやりたかったことは無数にある。でも、人生で最も後悔するのはやらなかったことだと思う。人が本当に後悔するのは、あの娘をダンスに誘わなかったことさ。

前掲書

 いかにもJobs。うまいし、わかるなあ。ぼくもこの点では後悔が多いからねえ……。


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