『イラクとアメリカ』

 岩波新書久々のヒットでしたね。『イラクとアメリカ』(酒井啓子)。まずもってタイムリーな企画だし、その内容も正確・冷静。フセインとブッシュの「生さぬ仲」を、事実の積み重ねからあぶり出します。

「アメリカかフセインか」という二極対立構造への単純化が進むなかで、家族の半分をフセイン政権の弾圧で亡くし、残り半分をアメリカの空爆で亡くしたような市井のイラク人たちの、「どちらももうたくさんだ」という声は、どこにも届かない。(214〜215頁)

酒井啓子『イラクとアメリカ』、岩波新書、214~215頁

 どこまで本気かはブッシュの腹の内ながら、アメリカ(政府)は対イラク戦の準備に余念がありません。またしても全世界が、好むと好まざるとに関わらずこの愚かな遠心分離機に放り込まれ、そしてそのなかで、罪の無い普通の人々が命を落とすことになるのでしょう。不毛な二極対立を乗り越える手立ては、無いのでしょうか?(2002.10.15)


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