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「書き出し祭り」について思うところ

物議を醸しそうな話題シリーズです。

小説家になろうにて、定期的に開催されている匿名企画があります。それが書き出し祭りです。2024年-2025年の年末年始をまたいで、現在第二十三回が開催中です。私もこちらに参加しています。

https://ncode.syosetu.com/n7949jv/

このあと企画内容・応募要項から思うところや、問題点だと思うところを述べるつもりですが、ざっくりどんなお祭りかを説明しておきます。
まず、前の回の書き出し祭り終了後、参加者(作者)の募集が行われます。これはグーグルフォームにて作者名などを記入して応募する方式。最初期は少し違いましたが、最近は先着100人を募集するということで落ち着いています。
そこからしばらく期間が空いたのち、「原稿募集期間」に入ります。この空白の期間や、原稿募集期間の間に、参加権を得た100人が原稿を用意し、事務局に提出します。この時作者本人と事務局は作者と作品を紐づけることができますが、そのほかの人間にはお祭り期間終了まで匿名性が保たれます。アマチュアだけでなく、すでに書籍化を果たしたプロも多数参加していますので、ここで匿名性を保つことによって、フラットな状態でバトルができるということです。
「原稿募集期間」は通常2週間であり、この間に提出された作品は基本的に先着順で掲載されることになります。累計100作品を先着順に並べ、それを25作品ずつ4分割することで、第一会場~第四会場を設立します。例えば26番目に原稿の提出が確認されれば、第二会場の1番目に掲載される、というわけです。原稿募集期間が終了すると、事務局による整理の後タイトルとあらすじがリストで公開されます。最近はこの時点で「どんな話か」「タイトルとあらすじの出来がいいのはどの作品か」を吟味する、いわゆる「タイあら感想」が出回り始めます。
そこから1週間は、タイトルとあらすじのみ公開された状態が続きます。そしていよいよ、本文が公開され、書き出し祭りスタートとなります。通常、本祭の期間は2~3週間ほど。この間、どの作品がよかったかを投票するフォームが各会場に設置されます。祭り期間が終了すると、これを集計し、各会場ごとの上位、そして総合順位を決定し、祭り全体が終了となります。このサイクルをだいたい年に3回行っています。

さて、だいたい書いてしまった気もしますが、ここで改めて公式の企画内容・応募要項の説明を引用します。

【 企画の目的 】

魅力的な書き出しを考えて、読者を最初から魅了できるように練習しましょう
完結を考えないからこそできる大胆で魅力的な書き方ができると想定してます。

【 読者さんへ 】

気になった部分、とても気に入った部分感想やTweetいただけると、作者がとても参考になり喜びます。
また、各話最後に投票リンクがあるので、ぜひ投票も協力いただきたいです。

【 概要 】

文量は「2,800字以上4,000字」まで。
ジャンルは「二次創作」と「18禁」以外、なろうの規約に触れないかぎりなんでもOK!
考えて、とありますように未公開新作限定です。
Twitter上にて先着順で事前募集を行います。
投稿締め切りは12月14日まで。

また、著者名は『クローズド状態』で掲載します。
これは著名作家さんとの不公平をなくすためです。

先入観で評価が変わったり、そもそも読む人の数が変わってしまうからです
企画終了後には、自作品の告知をOKとします。

掲載順番は【投稿先着順!!】です!

同一日に予約投稿で一斉投稿の予定です。

【考えられるであろう質問】

Q1 すべて読まないといけないのか? 感想は必須?
A1 ご自由にどうぞ ただ、同じ土俵に立って比べられるこの企画、宝の山だと思ってます。

Q2 感想欄に返信したい。
A2 肥前までご連絡ください。「○○の投稿者からの返信コメント」として感想返信させて頂きます。

Q3 Twitterやブログ、自分の活動報告で紹介したり、感想を書いても良い?
A3 どうぞご自由に! 積極的に広めていきましょう!

ただ、企画期間内に自作品がどれかという広告はお止めください。(会場まではOK!)
(参加した旨は積極的に広報お願いします)

Q4 公開後に修正・改稿してほしい箇所を見付けた!
A4 ご連絡ください。修正します。
誤字脱字修正フォームから該当箇所を修正いただくほうが、スムーズです

Q5 その後の物語を書きたい!
A5 “祭り”終了後からでしたらどうぞお書上げ下さい。
ただ、連載のご予定のある方は事前に運営までご連絡頂けますと幸いです。
その際は、連載についてこちらからも告知をご協力します

Q6 複数の作品が出来ました!
A6 複数作品での参加は次回掲載をお待ち下さい。

その他、気になる点や質問は企画人(肥前文俊)又は書き出し祭り事務局(TwitterID:@kakidashi_fes)までお声がけください。


意外と自分の理解で書いた文章の方が詳しかったかもしれません。
さて、いろいろ思うところを書く、と宣言しましたが、私が言いたいことを一つにまとめるとすれば、

「書き出し祭りは中途半端に知名度が上がりすぎてしまった」

これに尽きると思います。
知名度が上がること自体は全くもって悪くないのですが、それによる弊害が今のところ大きい、と私は感じています。その詳細をいくつか説明したいと思います。

①企画内容・応募要項への理解が様々な人が参加するようになってしまった

要は、理解の足りねえ人間が多く参加するようになってしまった、という悪口です。上で「原稿募集期間」終了後、事務局の整理が入ったのち、タイトルとあらすじが公開されると述べました。この事務局の整理というのは、本当に100作きちんと提出されたか、また参加権を得ていないのに勝手に提出した人がいないか、という確認作業。文字に起こしてみると、結構大変な作業だなと思います。原稿の提出忘れや遅れ、いわゆる「原稿落とし」ならまだ救いがありますが、参加権を得ていないのに勝手に出してくるような倫理観の人間まで相手にしないといけないのは結構きつい。私の書き出し祭り初参加は第二回なので、最初期からの流れの変化は何となく分かるのですが、途中から原稿提出フォームに「参加権を得ているか」のチェックボックスが追加されています。これはつまり、過去に参加権を得ていないのに提出してきた、あるいはそれに準ずることをした人間がいるということで。100人の枠が2、3分ほどで埋まっていた少し前なら、参加権を得たものと勘違いしていたという言い訳も通用するでしょうが、いまや前半50人は一瞬で埋まるものの、後半50人は3時間くらい経っても空きがある状態なので、仮にこのトラブルが起きたとすればそれが悪意である可能性の方が高いのではと考えます。

また原稿落としも救いがあるようでない。その人の今後のためには間違いなくなりません。普通の社会人なら締め切りを守らないなんて許されませんからね。締め切りは守る、ダメそうなら早めに報告して参加権を他の人に譲る。基本だと思います。そんな甘えが許されているのは作家界隈だけだと思います。

知名度が上がると、必然的にいろんな価値観や倫理観を持った人間が参加するようになるので、ジレンマに近いところはあるのですが。もっと爆発的に書き出し祭りの知名度が上がれば、自浄作用が働き始め、応募要項を知らない・守らない人間は排除されるでしょうが、そこまでに至っていないというのが現状と思います。ツイッターアカウントを持っている物書きでも、書き出し祭りの存在を知らないという人はまだまだ多いです。

⇒対策としてはやはり、知名度を上げるというのが一番でしょう。ただ過去の参加者や関係者が必死に広報しても、なかなか広まらないというのが正直なところ。そこで、この後の話にもつながってきますが、25作品×4会場制ではなく、例えば「25作品×2会場制」にして、規模を絞るというのはいかがでしょうか。
1回あたり100作品というのは意外と負担が大きいものです。事務局はもちろんですが、参加者も100作品読んだり、その中から刺さりそうな作品を探す作業は結構時間を取られます。先ほども述べましたが、最近の回は後半50人の参加がなかなか埋まらない状態ですので、思い切って1回あたりの参加者を50人に絞ることで、事務局と参加者双方にとって負担が減るのではないかと思います。また、本家の規模が縮小しますので、参加権を得られなかった人が集まるような、有志によるアレンジ企画が増えることが期待できます。例えばジャンルを異世界ファンタジーに制限した匿名企画とか。書き出し祭り本家の運営手伝いをするのはハードルが高いが、軽い個人企画として書き出し祭りの真似をやってみたいという人は、観測する限りでは意外といます。これによって、「どういう企画なんですか?」→「書き出し祭りのアレンジ企画なんですよ」という導線が生まれ、本家の知名度が上がることが期待されます。

②小説に対する考え方が様々な人が参加するようになってしまった

これに関しては、私自身がどちらかというとマイナーな考え方だという自覚がありますので、ヒール視点で話を進めることになります。ご了承ください。

書き出し祭りは物語冒頭の出来を競うお祭りでありながら、その中身はかなり自由です。「完結を考えないからこそできる大胆で魅力的な書き方ができると想定してます」と書いてある通り、最初から最後まできちんと組み立ててから冒頭を書く必要はありません(もちろん、組み立てた方が確実ではありますが)。冒頭におけるインパクトを優先して、短編のような締め方になっていたとしても、評価されないことはあれどルール違反ではないのです。祭り期間終了後、作品を連載するかどうかも作者の自由ですし。

また、プロアマ関係なく参加しているお祭りなので、作品に対する考え方も人によって当然違います。みんながみんな、これで売れたい、書籍化したいと思って作品を出しているわけではないはずです。少なくとも私は違う側で、小説で金が稼げる、少なくとも生活の足しになるほどお金がもらえる種類のものではないと思っています。そこまで夢のある趣味ではないし、夢を見たって仕方ない。夢のような体験をさせるのは作品の中だけで十分だし、私は鬱展開の方が得意なので、作品内の方がより絶望に満ちていたりして、夢もへったくれもありません。

私は思いついたネタがどれくらいの人に刺さるのか、というのを確かめるために書き出し祭りに参加しています。活動期間が長くなるにつれて、感性が錆びついていないかを確かめるためとも言い換えられます。
これでプロになってやろうという気はないし、会場や全体の上位を狙う気も(あまり)ありません。もちろん上位である方が嬉しいのは当然ですが、万人受けするネタではないことを分かって出していますので、逆に上位に来ると首をかしげることになりそう。私自身、他人の作品をかなり選り好みする方なので、逆に自作が一部の人にしか刺さらないというのは当然あることだろう、と意識しています。

⇒ただこれは対策するような話ではなく、多様性がある今のままでいいと思っています。作家とて人間なので、出力が安定しないのは当然ですし、プロでも自分の考えたネタがウケるのか試してみる場として、あるいはアマが一発下克上を狙う場として活用されるのは、理想に近いと考えます。むしろアマだけ参加可にするとか、連載の一話であることを意識するようルールを厳しくするとかやってしまうと、書き出し祭りのマンネリ化を加速させてしまいかねません。

③シンプルにマンネリ化している

悪口のようにも見えますが、これは事実だと思います。先ほど私の初参加が第二回だと述べましたが、第二回の開催時期は2018年下期頃。6、7年もやっていればマンネリ化するのは必然です。始まったばかりの頃は、個人レベルではすでにあった企画かもしれませんが、これだけの規模で行われるのはおそらく初めてだったのでしょう。「プロアマ入り交じって、匿名で書き出しの魅力を競う企画。なんて面白そうなんだ」と思っていた方も多いのではないでしょうか。ただ、ほとんど形を変えずに23回もやっていれば、そんな新鮮さはきれいさっぱりなくなります。今でも一定程度、新規の流入はあるようですが、もう何度も書き出し祭りに参加している経験者が多い状況です。かく言う私も今回が7回目の参加。そろそろベテランと名乗ってもよいくらいだと思います。

新規の流入はあるようだと書きましたが、常に新規層が入ってきて、新しい風が吹き込まれるようであれば、マンネリ化はしにくいでしょう。知名度が中途半端に上がったことにより、勝手知ったる人間は増えたものの、新規の流入がそれほど活発ではなく、「もっとこうした方がいいんじゃないか」と書き出し祭りのシステムそのものに提言をする人がほとんどいない。その結果、ほとんどずっと同じルールで年3回繰り返すだけとなっていて、マンネリ化している。このように予想できます。

⇒これに関しては、少しでも新しい試みをどんどん取り入れていくことがよさそうです。過去、第二十回の時に特別会場が設けられ、合計125作品だったことがありました。(確か、ジャンル指定だった気がする)
以下はあくまで、私が面白そうだなと考えていることになりますが、列挙します。

○「書き締め」の特別会場設置:冒頭ではなく、ラストシーンあるいは中盤の最もアツいシーンで競い合う
○「2話」の特別会場設置:そのままの意味。派生イベントの「書き出しコロシアム」で実施済み?
○書き出しの文字数制限変更:もっと長くするのは(個人的に)しんどいので、短くする方向の回を一度やってみるのも面白そう


ここまでいろいろ、今の書き出し祭りが抱えていそうな問題について書きましたが、きっかけは今回の作品を完全ランダムで読んだ時に、あまりにも合わない作品に連続でぶち当たってしまったことでした。自分のストライクゾーンが激狭なことは理解していたつもりなのですが、それにしたって合わなさすぎる。しかも「これホントに小説って呼んでいいのか?」という作品にまで当たってしまい、すっかり疲れてしまいました。それだけ小説ではない、別の分野にバックグラウンドがある人間が参加するほど、書き出し祭りの知名度が上がったという見方もできますが。ただ、すでに書き出し祭りのことを知って参加もしたことがあるという人に、今一度自分の倫理観が正常かどうか、確かめてほしいところです。このままでは難民に破壊されてしまった欧州諸国よろしく、書き出し祭りは衰退の方向へ向かっていくのかもな、という気がしています。

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