読書記録72(LIFE SHIFT2)2/2
第4章 探索
・大人の学習では、新しいスキルに馴染むよりも、見慣れたものを新しい視点で見ることの重要性が大きい。そして、古い思考や行動を捨てることが大きな比重を占めるようになる。
・イギリスでは年間の総欠勤数が7000万日近くなっており、このうち病欠の最大の原因は不安、抑鬱、ストレス関連の症状などによる精神の不調である。WHOの予測によると、2030年代には、抑鬱が最も大きな疾病負荷を生む病気になるという。
・移行の過程では、つねに何等かの探索が必要である。テクノロジーの進歩と長寿化の進展に伴い、人生で経験する移行の回数は必然的に多くなる。しかも、人生の様々なステージで新しいタイプの移行を経験しなくてはならない。
・中年期(30代~)では、お金を貯めて中年期に半年間なり1年間なり仕事を中断し、新しいスキルを学んだり、家族と過ごしたり、地域コミュニティの活動に携わったりする場合もある。また、次のキャリアの土台になる趣味や関心テーマを見つけるための探索を行う場合もある。
・年齢が就職に与える影響は大きい。ある調査によると、62歳を超える大卒者が失業しても2年以内に再就職できる割合は50%、25~39歳では80%を超す。このような状況では、多くの高齢者が職探しを断念して労働市場から退出していくのも不思議ではない。
・上述を打破するためのカギを握るのは、年齢を重ねるにつれて強化されるタイプの知能、すなわち結晶性知能(個人が長年にわたる経験、教育や学習などから獲得していく知能)を最大限活用すること。
・ある出来事に対する人の評価は、その出来事における最悪の経験と最終の経験に大きく左右される場合が多い。よって、よい人生を生きられたと思えるかどうかは、最晩年の経験によって決まる面もある。
・人生最後の移行を遂げた人たちは、情緒面で価値を見出せる活動の比重が大きくなる。高齢者が肉体は衰えるが、幸福度が高まるケースも珍しくない。
・自分の思い描いている人生の好ましい要素を最大化するには以下について自分に問うことがよい。
①私は十分に探索をおこなっているか?
②私は人生の計画を修正するのに役立つ人的ネットワークを築けているか?
③私はどのように感じるか?
④十分に学習できるか?
第5章 関係
・家族・友人、その周りには人的ネットワークが存在する。それは仕事と娯楽の両面でメンターやロールモデルの供給源となり、学習のプロセスで重要な役割を果たす場合がある。前のステージではぐくんだ人間関係を維持し、それに投資し続けるために、より多くの努力と積極的関与と目的意識が必要とされる。
・結婚について。アメリカ女性の結婚年齢の中央値は1890年で22歳、現在は28歳である。スウェーデンでは現在、男性は37歳、女性は34歳となっている。また、結婚しない選択をする人も増えている。1970年代の日本では50歳を超す未婚の男性は50人に1人だったが、現在は4人に1人に達している。女性も33人に1人から7人に1人である。
・結婚年齢が遅くなるに伴い、子どもをつくる年齢も遅くなっている。第一子をつくる平均年齢は、日本では31歳、アメリカでは27歳。イギリスでは20歳未満の女性の出産率よりも40代女性の出産率のほうが高い。
・出生率が下落する結果として、訪問したり、世話をしてくれる親族がほとんどいない高齢者の割合も高まる。
・上述があるが、人間の本質は愛することと愛されることにあるという点は変わらない。カップルがマルチステージの人生に対応するための調整は容易ではなく、選択肢も増えるから、相互依存を強める必要がある。
・女性たちは何歳で結婚と出産を経験するかにより、キャリアを築くかどうかかが大きく左右されている。そして、キャリアを選択した女性は結婚している人の割合が小さく。結婚している場合も結婚が遅かった。また、職をもっている女性の40%は子どもがいない。
・カップルは2人で突き詰めて対話し、自分たちが何を望むのかを話合い、どのような生き方が可能なのか。そして今後可能にしていけるのか、というストーリーを共有する必要がある。内省が不可欠である。
・その話し合いを成功させるためには、相互の信頼関係が不可欠である。パートナー同士の関係のあらゆる側面に言えることだが、これも努力して磨いていく必要がある。
・近年は一人で暮らす人の割合が増えている。フランスでは2030年までにすべての世帯の半分が一人暮らし世帯になるという予測がある。
・大半の人は、現実世界の人間関係とコミュニティを通じて交際相手を見つけている。2017年の調査では、40%近くのカップルがオンラインで知り合っている。
・人間関係に関する計画を点検する。項目は以下のとおり。
①十分な時間を確保できているか?
②どのような未来を望むか明確に話し合ったか?
③適応力をもてるか?
④コミュニティとの関わりに時間を費やす用意はできているか?
⑤様々な年齢層の人たちと一緒に過ごす用意はできているか?
第6章 企業の課題
・職業人生を長く延ばすことの大きな妨げになっているのは、年齢と資金を結びつける暗黙の常識である。多くの企業では、在職年数が長くなるにつれて給料も上がる。その結果として高齢の社員は高給取りになり、景気が悪くなると真っ先に解雇されやすい。
・ミスを犯す確率全般は年齢の高い人の方が少し高かったものの、大きなミスをする確率は若い人のほうが各段に高かったのである。年齢を重ねた人たちは、長年の経験と結晶性知能のおかげで問題に対処し、問題を抑え込む方法を心得ていた。
・日本では2012年以降、生産年齢人口が500万人以上減っているが、就労者数は450万人近く増えている。これは、女性と65歳以上の雇用が増えた結果である。
第7章 教育の課題
・これからの教育に求められるのは、子どものうちから必要な情報を見つけ、曖昧で不確実な状況に対処し、発見したことを分析・評価して問題を解決する力をはぐくむこと。
・これからの時代にとりわけ重要になるのは、実験をおこなって、リスクを伴う行動に踏み出したり、経験から学習して、ほかの人たちと協働したり、独創的な問題解決策を考案したりするなど、もっと複雑なスキルである。
・大人の教育の方法論。子どもを対象とする従来の教育方法論を「ペタゴジー」と呼ばれるのに対し、大人への教育の方法論を「アンドラゴジー」と呼んでいる。アンドラゴジーはいくつかの要素を満たす必要がある。それは学習計画の設計と成果の評価に学習者自身が関わること、学習者が実践を通じて学べること、課題解決を重んじて実生活と関連づけること、学習者の仕事や私生活に直接役立つ内容であること。
・マルチステージの人生の核を成すのは、しっかりとした自己認識をもち、みずからの価値観と目的と意欲を折に触れて見直すこと。長寿化の時代には、大人になってから再び人格形成の機会を得ることが重要な意味をもつ。
・私たちは知らないことを学ぶために教育を受ける。しかし、適切な選択をおこなうために必要な知識をもっていない、「情報の非対称性」に陥ることがある。よって、このような状況に置かれた人は既に知っている講座を受けたり、友人から勧められた講座を選ぶことが多い。
第8章 政府の課題
・1990年~2015年の期間に行われた研究から、人生全体に占める不健康期間の割合は1990年以降あまり変わっていない。よって、不健康な状態で生きなければならない年数は増加している。
おわりに
・人生が長くなる半面、人生で多くの移行を経験するようになる結果として、ひとつひとつの活動の期間やステージを短期化する。これからの変化を前提にすると、次の5つの行動をとることが重要になる。
①先手をうつ。
②将来を見据える。
③「ありうる自己像」を意識する。
④可変性と再帰性を意識する。
⑤移行を受け入れる。
・人は独りぼっちでは社会的開拓者になれない。また、人生に一貫性と安定をもたらすうえで深く強力な人間関係が果たす役割はきわめて大きい。
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