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TKGの女神たちに捧げる、ぎこちないオタ芸

「あんたが死んだらただのゴミよ」

これは収集物がある者にとっては、
何よりも恐ろしいひと言だ。

私が直接言われた訳ではないが、
とても胸に刺さるひと言だ。

今集めているのは、
主に鉄道グッズ、文房具、切手、
焼き物、器。

いざとなれば、売ってしまえば
幾分かはお金になるかもしれないが、
死んでしまうと、
それをするのは、後に残された者だ。

となると、手元に無い方が楽と言える。

かといって、ミニマリストの様に、
必要最低限しか手元に措かないのは、
何だか物足りない。

物はとりこになると、
なかなか抜け出せない。

しかも、部屋が広くなればなるほど、
まだスペースがあるからと
次々に溜まる。

これは物体の容量だが
心の容量も同じことが言える。

空っぽだった心が
満たされてる体験をした。

12年ほど前に仕事のつらさから逃げだし、
秋葉原の卵かけご飯を出すお店に行った。

黄色と白を基調としたユニフォームで、
白い天使の羽がついている可愛い服だ。

秋葉原独特のお迎え方で、
一瞬たじろいだが、カウンターへ座る。

そう、ここは、
とあるコンセプトバーだった。

声優を目指す子達が、給仕してくれながら
アニメや声優について思う存分語り、
お客も知っていること全てを語る。

オタクにとって、夢の様な場所だ。
桃源郷と言っても過言ではない。

メニューに卵かけご飯は
TKGということを初めて知った。

トッピングもめんつゆ、様々な調味料、
全国の醤油が取り揃えてある。
九州の甘い醤油があるのも、
ポイントがかなり高い。

おすすめを教えてもらい、
めんつゆ、ネギ、ニンニクをチョイス。

これが美味いのなんの!

以来、私の中での卵かけご飯、
TKGはこれ!と決まった程だ。
たまにネギを切らすが、

今でもそうだ。

それから、声優を目指すためには、
歌やダンスも割と
必須になってきた頃で、
そのお店から、
5名のユニットグループが誕生した。

私は、彼女たちに夢中になった。
もちろん、他の子たちにもだ。

話すと何時でも安らぎを与えてくれて、
歌やダンスからはエネルギーをもらえる。

音楽からも離れていた私に取って、
復活させてくれた、恩人たちとも言える。

今思うと、彼女らは
ミューズ(音楽の女神)だった。

そして、仕事が終われば、昼寝し、
1時間かけて会いに行き、
終電を見送り、4:30までお店にいる。

イベントがあるときは、
参戦して最前列で
ぎこちないオタ芸を彼女らに捧げる。

ツーショット写真や、
お店で出してくれるオリジナルカクテルも
お供えの様に増えていく。

オタ芸の掛け声、作法を教わったのも
ここの常連さんからだ。

名前も知らない
常連のお客さん同士も、
心の結束で結ばれている。

が、あまりお互いのプライバシー領域には
踏む越えない、ちょうどいい距離だ。

そんな心理的安全が
確保されていたからこそ、
ここまで夢中になれたのだ。

今では、彼女たちも卒業して、
それぞれの道を進んでいるだろう。

私も福岡在住なので、
おいそれとは行けない。

でも、ひょっこり顔を出すと、
常連さんがカウンターに居て、

「あぁ、ひささん、お久しぶりです」

と言ってくれそうな気がする。

いしかわゆき著
『書く習慣』1ケ月チャレンジ

Day14 これまでに夢中になったモノやコト

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