がんと『運動』
皆さんは習慣的に運動をされていますか?
運動した方が良いのは知っているけど、仕事が忙しくてなかなか身体を動かす時間がないとか、疲れてしまって運動どころではないとか、今日は天気が悪いとか、腰が痛い膝が痛い・・・
運動をしない理由は、探さなくてもいくらでも出てきます。
それらのしない理由をなんとか振り切って、運動したはいいものの、次の日筋肉痛になってしまって長続きしないなどなど
健康の時ですらそんな感じの方が多いのですから、『がん』になってしまったら尚更、運動とはほど遠い感じになってしまうのも無理はないかもしれません。
『がん』と診断されると、多くの方は
「頭が真っ白になった」
「まさか自分が・・・」
「これからどうしたら良いのだろうか?」
などなど
現実を受け入れられるようになるまで数週間かかると言われていますから、その間に
「がんのことは忘れて、今日も運動しよう!」
というような猛者はなかなかいらっしゃらないのではないかと思います。
診断に至るまでも、種々の検査で絶食や入院が必要になったりしますから、
「今日は検査で疲れたから、運動は無理だな」となるかもしれません。
その後がん治療が始まります。
手術となれば、傷の痛みが癒えるまでなど、なかなか元のように運動できるようになるまではそれなりに時間がかかってしまいますし
抗がん剤治療となると、副作用のため、治療中は運動する気になれない方も多そうです。
ある研究では、
がん治療終了後でも、患者さんの活動量は診断前の20-30%程度までしか回復しないとされています。
さらに、がん治療中だと、診断前の10%程度しかないと言われています。
(あくまでも平均値です)
10%、つまり診断前の10分の1しか活動していないというデータです。
70歳以上の日本人の平均的な1日の歩数は5000歩くらいですので、10分の1ですと500歩ということになります。
もちろん、活動量の話ですから歩数だけの問題ではないのですが
とはいえ、がん治療中は、ほぼ日常生活の中で必要最小限度の活動しかしていないくらいになってしまっている現状があるようです。
疲れやすいからとか、やる気が出ないといって、運動をしないでしまうと、体力はどんどん低下してしまいます。
体力が低下してくるとさらに疲れやすくなったり、気持ちが落ち込んだりしやすくなってしまい、さらに運動がしにくくなるという、典型的な悪循環に陥ってしまいます。
この悪循環がつづくと、そもそも日常生活に支障を来したり、がん治療そのものを継続することが難しくなってしまったりしてしまうかもしれません。
がん治療を行う目的は、身体を弱めることではなく、普段通りの日常生活をより長く送れるようにすることだと思いますので、本末転倒です。
運動をする人の方がしない人に比べて、そもそもがんになりにくいことが知られています。
また、運動する人の方ががんの再発率が低いこともよく知られています。
さらに、活動量が多い人ほどがん治療による予後がよいという結果も大腸がん患者さんの研究で出ています。予後が良いということは、がん治療の効果が長く持続して、その結果としてより長く生きられるということです。
また、抗がん剤治療の副作用である倦怠感なども、運動をしない理由になりがちですが、実際には習慣的に運動している人の方がより軽度になります。
つまり、『がん』にとっても、運動する人(活動量が多い人)の方がより良い結果になるということがいろいろな研究で証明されているということです。
「そんなこと言われても、運動なんてできないよ!」と思われる方も多いかと思います。
それは多分、運動といわれて
ジョギング(マラソン)、水泳、エアロビクス、サッカーなどをイメージするからではないかと思います。
これらは運動の中でも『高強度運動』とされており、運動初心者にはハードルが高過ぎるかと思います。
もちろん、これらの運動を昔からやっていて、大丈夫という方は行ってもらってもよいのですが、やはり問題になるのはこれまであまり運動習慣がなかった方だと思います。
そういう方は『中強度運動』や『低強度運動』などのより低いハードルのものから開始することをお勧めいたします。
最終目標としては、中強度の運動を週に150分となりますが、いきなりここから始めると三日坊主になりがちです。
何かを習慣化しようと思った時、成功しやすいのは
●ハードルをぐっと下げましょう
低強度の運動を週に1回、5分でも良いので、行うことから始めましょう。
低強度運動の代表は『散歩』です。
速く歩こうと思わなくて結構です。ゆっくりじっくり、周囲の風景でも見ながらお散歩してみましょう。
遠くに行く必要はありません。家の周りで十分です。見慣れたご近所の風景でも、ゆっくり観察していると思わぬ発見があったりします。
こういうと、雨の日は散歩できないじゃないか!とおっしゃる方がいます。
『傘』という文明の利器を使ってください。
ゆっくり5分くらい歩くだけなら傘で十分です。
そのくらいで風邪を引くような体力であれば、がん治療を行っていくためにもきちんと体力作りをするべきだと思います。
外がダメなら家の中でもいいと思います。階段があれば、昇ったり降りたりで十分です。階段がない、歩く廊下もないというのなら、その場で足踏みしたっていいんです。
●みんなでやりましょう
ご家族と一緒にやりましょう。
一人でやるよりもずっと習慣になりやすいです。
やる気がない日でも、「一緒に行きましょう」という家族の声がけ一つで重い腰も上がりやすくなります。
転ぶのが心配であれば奥さんと手をつないで歩いたっていいと思います。
特に男性は、恥ずかしいと思われる方が多いかと思いますが、そういうご夫婦を見かけて思うのは『羨ましい』って思いではないでしょうか。
●できた自分を褒めてあげましょう
「今日はできなかった。」
「これだけしかできなかった。」
「最近全然できてない。」
こんな風に思っていては、続けられなくなってしまって当然です。
僕の友達に『英語の勉強を3000日も続けられている』という人がいます。
その人にどうやったらそんなに続けられるの?と尋ねたら
「やったことにする!」だそうです。
全然やってない日でも、やったことにする!
今日もやった(やってないけど)、明日もやる(やらないかもしれないけど)って考えていると自然と続けられるようになるとのこと。
全くやらなくてもやったことにしていいなら、実際にやれた日はもう花丸です。
やれた自分をもっとたくさん褒めてあげてください。
『がん』にとって、運動をすることは良いことずくめです。
やらない手はないです。
是非是非、運動する習慣を身につけていきましょう!
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