がんと『運』
同じ抗がん剤治療を受けても、すごく良く効く人もいれば、全く効果が出ない人がいます。
中には、治らないといわれていた進行がんが完治してしまう方も非常に少ないながら存在します。
これらの違いはどこから生じるのでしょうか?
年齢、性別はほとんど関連がないとされています。
「お金」を持っているかどうか?もおそらくは関連しないでしょう(関連がないと信じたい)。
それまでの人生でどのくらいの「徳」を積んできたかどうか?がもし関連するのだとすると、僕は抗がん剤が効かないだろうからはじめから受けないという選択が正しいということになってしまいそうです。
とはいえ、「徳」とか言われてしまうと、これから抗がん剤治療を受ける人に挽回の余地がなくなってしまうので、「徳」は関連がない方が助かります。
抗がん剤が効くか効かないかは、結局の所「運」がほとんどではないかと僕は考えています。
有り体に言えば「抗がん剤治療は『運』が9割」とでもなるのでしょうか。
「運」と言われると、「徳」と同じように、自分ではどうすることもできないとあきらめてしまう方が多いかもしれませんが、朗報です!
「幸運」には方程式があり、その方程式に従ってスキルを伸ばすことで運のつかむ能力を鍛えることができるようです。(『運の方程式』 鈴木祐著、出版:アスコム)
『運』を鍛えれば、抗がん剤治療の効果もでやすくなる!?
ご興味がございましたら、引き続き下の文章もご一読ください。
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▼昔と今
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僕が腫瘍内科医になった20年くらい前は「胃がん」が抗がん剤で小さくなる確率(奏効率)は10%くらいだったと記憶しています。当時抗がん剤治療でがんがすごく小さくなることはとても珍しかったので、そのような事例があると、学会や勉強会などでは症例発表されていましたし、僕自身も発表したのを懐かしく思い出します。逆に言うと、当時は抗がん剤でがんが小さくなることが珍しく、抗がん剤治療を行ってもがんが大きくなってしまうことが普通だったわけです。
その後、現在まで改良が繰り返された結果、現在では進行胃がんにおける奏効率は60%程度まで上昇してきましたので、がんが小さくなる方も珍しくはなくなりましたし、学会でも「がんが小さくなった」というだけでは発表として取り上げてもらえなくなりました。
一方で、全く効果が出ず、抗がん剤治療をスタートしてから最初のCT検査で「残念ながら効果がえられず『がん』が大きくなってしまっているようです」という説明をする状況は、昔に比べればかなり少なくはなりましたが、まだあることには変わりありません。
そういう状況になると患者さんからは、「つらい副作用に耐えて頑張って受けたのに、効果がないとはどういうことだ!」「抗がん剤の選択が間違っていたのではないか?」とお叱りを受けることもあります。
「抗がん剤の効果がでなかったのは、私の何が悪かったのでしょうか?」と、自分を責めてしまう方もいらっしゃいます。
どちらの場合でも、「効果が出るか出ないかは、『運』なので仕方がないです・・・」とお答えしておりました。
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▼効果が出る人とでない人の『差』
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同じ抗がん剤治療を受けてもらっても、すごく良く効く人もいれば、全く効果が出ない人がいます。
さて、これらの違いはどこから生じるのでしょうか?
昔から抗がん剤治療の効果を予測しよう(使用する前から効くのか効かないのか判断できれば便利)という考えは皆が持っており、これまでもたくさんの研究が行われてきました。
患者さんのがん細胞を実験室で培養して、そこに抗がん剤を投与して効果をみることで、実際に患者さんに投与する前に効果がわかるのではないか?という研究は、かなり良さそうではありますが、実際には効果を予測することはできなかったようです。
近年は、がんの「遺伝子」の差ではないかと考えるのが最も優勢です。
ある特定の遺伝子変異を持つがん(ALK陽性肺がんなど)に対して、特定の抗がん剤(主に分子標的治療薬)が特に効果的であることがわかってきています。ALK陽性肺がんにALK阻害薬を投与すると、ほとんどの場合で「がん」の縮小がみられます。
しかし、そのような特定の遺伝子変異がある人は少なく(ALK変異は、肺がんの2~5%とされています)、多くの方は一般的な抗がん剤治療を受けているのが現状です。
たとえ特定の遺伝子変異があり、それに適した抗がん剤治療が行われたとしても、数は少なくなりますが、残念ながら効果が得られない人がいることには変わりがありません。
結局の所、冒頭に述べたように、「運」の要素が多分にあるのだと僕は考えています。
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▼『運』は鍛えられる!?
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「『運』であれば仕方がない・・・」
「受けてみて効果がなかったらあきらめるしかない・・・」
僕もこれまではこのように考えていましたし、実際に「(効果が出なかったことに対して)何が悪かったのでしょうか?」と質問されれば、「これは『運』だから、別に○○さんが悪いわけではないです。」と答えていました。
しかし、サイエンスライター鈴木祐さんの著書『運の方程式』によると、近年『運』を科学的視点から見た研究が進み、良い偶然を引き寄せる方法がわかってきたといいます。
もちろん、「良い偶然」=「抗がん剤治療を受けてがんが小さくなる」確率が100%になるわけではない。つまり、それでもがんが大きくなってしまう方がいることには変わりはないのでしょうが、『運』が鍛えられるのであれば、少しでも勝率を高めるために頑張ってみる価値があるのではないかと僕は考えています。
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▼『運』の方程式:幸運=(行動×多様+察知)×回復
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『運』の方程式とは
幸運=(行動×多様+察知)×回復
とのことだそうです。
括弧とかけ算、足し算が含まれており、なかなか複雑な作りをしていますが、
変数はたったの4つです。
幸運をつかみ取るためには、たくさん行動すること、そしてその行動も一つのことだけをひたすら繰り返すのではなく、様々なことにチャレンジしてみる(多様性)ことで、チャンスが舞い込んでくる確率が増える。
そうして巡ってきたチャンスを察知して、うまく活かすわけです。
とはいえ、大きなチャンスはそうそう訪れるわけではありませんから、多様な行動を繰り返し行う必要がありますし、1回1回はある意味「失敗」なわけですから、一度の失敗で挫けてしまうことなく、何度も立ち直る事も重要となります(回復)。
かの発明王エジソンも、「電球」を発明するために、約2000個ものフィラメントを試した、つまり2000回もの失敗をしたことはとても有名です。
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▼「その2」につづきます
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長くなってしまったので、今回はいったんこの辺で終わりにしたいと思います。
抗がん剤治療において、この『運の方程式』がどのように関連してくるのかについては
次回にさせてください。
また『運の方程式』に関して、もっと詳しく知りたいという方やご興味をもたれた方がおりましたら、下にリンクを貼っておきますので、現物をご購入の上ご一読いただけますと嬉しいです。
『運の方程式』 鈴木祐著、出版:アスコム
amazon→https://amzn.to/3l9ohqZ
楽天→https://a.r10.to/h6tn2E
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。