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膵臓がん×BRCA×オラパリブ(リムパーザ®)

本日はいつものちょっと趣向を変えて
「膵臓がん」に焦点をあててお話させていただきたいと思っています。

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▼膵臓がんとは?
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「膵臓がん」は、がんによる死亡において
男性では4位、女性では3位を占めています。
また、「膵臓がん」の5年生存率は、8-9%とされており、他のがん種と比較しても飛びぬけて悪いデータです。

現在は、2人に一人ががんになる時代とされていますが、一方、がんは治せる病気になりつつあるという話も聞いたがことがあるかと思います。
「がん」全体でいえば、5年生存率は68.4%とされています。
早期発見、早期治療による恩恵が大きく、ステージ1の乳がんや前立腺がんは、5年生存率100%なんて言うデータもあったりします。

そのような中、「膵臓がん」の5年生存率10%以下というのが、どれほど悪い数値であるか、おわかりいただけるかと思います。
そもそも早期発見が難しく、ステージ1で発見されることは稀。別のことで検査をしたらたまたま見つかったという偶然の産物であることがほとんどです。
「膵臓がん」は痛むという話をどこかで聞いたことがあるかもしれませんが、痛みで見つかった場合には、既に手術が難しいステージであることが多いようです。
幸い早めに発見され、手術で取り切れた場合でも、再発してしまう可能性も高く、
色々な面で、かなり難しい種類の「がん」です。

なんだか出だしから超ネガティブな話になってしまいましたが、本日の本題はここからです。

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▼膵臓がんに新しい抗がん剤(分子標的治療薬)が登場!
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このような背景のため、「膵臓がん」の方の多くが抗がん剤治療を受けることになります。もちろん抗がん剤治療を受けないという選択肢もありますが、担当医からは勧められると思います。

これまで、「膵臓がん」で使用する抗がん剤は、いわゆる従来の抗がん剤で、分子標的治療薬はエルロチニブというクスリ、たったの1種類しかありませんでした。
もちろん、たくさんの種類の分子標的治療薬の臨床試験が行われてきていますが、良い結果を出すことができず、いずれも実際の臨床現場までたどり着いておりません。

そのような中、膵臓がんの中でも『BRCA遺伝子変異を有する』という縛りはありますが、そのような症例に対して有効性が証明された分子標的治療薬が登場しました!
オラパリブ(商品名:リムパーザ®)という内服薬です。
(膵臓がんより先に卵巣がんで使用されています)

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▼BRCAとは?
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そのクスリのお話の前に「BRCA」についてお話させてください。
読み方は、「ビーアールシーエー」とそのまま読んだり、人によっては「ブラッカ」と読まれたりすることがあります。
BRCA1とBRCA2がありますが、人体内での働きはほぼ同じです。
BRCAは、細胞のDNAが壊れたときに修復する働きをしていますので、BRCA遺伝子に異常があると壊れたり傷ついたりしたDNAがうまく修復されず、結果として「がん細胞」ができやすくなります。

特に女性では、乳がんと卵巣がんができやすくなることがわかっています。
海外のデータですが
■乳がんについて
一般女性の約12%が一生のうちに乳がんを発症するとされています。BRCA1変異がある女性では約72%、BRCA2変異では約69%の方が80歳までに乳がんを発症すると推定されています。
■卵巣がんについて
一般女性の約1.3%が一生のうちに卵巣がんを発症するとされています。BRCA1変異がある女性では約44%、BRCA2変異では約17%が80歳までに卵巣がんを発症すると推計されています。
■その他
男性では、前立腺がんと男性乳がんのリスクが上昇することがわかっており、
男女とも膵臓がんのリスクが高くなる可能性が指摘されています。

BRCA1遺伝子に変異があることがわかったアンジェリーナ・ジョリーさんが、がんになるリスクを減らすために、がんになる前に両側の乳房と卵巣・卵管を切除したことは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?

このようなBRCA変異ですが
転移を有する膵臓がん患者さんの5~7%に見つかるとされており、今回登場したオラパリブ(リムパーザ®)の効果が期待できるというわけです。

とはいえ、BRCAに変異が見つかった場合、患者さんはもとより、患者さんの兄弟姉妹やお子さんなどに「遺伝」している可能性があるため、血縁者の方も検査を受けるかどうか(自費になってしまいますが)という別の問題が生じてしまうことにも留意が必要です。

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▼新薬について
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オラパリブ(リムパーザ®)の話に戻ります。
膵臓がんでBRCA変異があった場合、すぐにオラパリブで治療を行うわけではありません。
前段階として、プラチナ製剤を含む一次化学療法を受ける必要があります。
またその治療で効果があったという条件も必要です。
その条件がそろった場合、その後の維持療法としてオラパリブを使用することがようやくできるようになります。
日本では、膵臓がんに対して「プラチナ製剤を含む一次化学療法」としてガイドラインで推奨されている治療方法はFOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法という治療方法になります。
FOLFIRINOX療法は、オキサリプラチン(これがプラチナ製剤)、イリノテカン、5FU、レボホリナートの4剤を併用する治療法になりますので、副作用もきつい方が多い治療です。
副作用が大変な場合、いくら効果があるからと言って、ずっと続けるのはしんどいのです。
そこで、途中でオラパリブに切り替えることで、
しんどいからといってやめてしまうより、がんの進行をうまく抑えることができるよというものですね。

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▼おわりに
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新しい抗がん剤、いわゆる新薬は毎年たくさん出てきますが、どの「がん」に使えるか、効果があるかは基本的に決まっていますから、
ひとつのがん種では、数年に1つくらいの割合です。
特に膵臓がんは、かなり治療が難しいがんですから、新薬が増えてくれるとがん治療医としてもとても嬉しいです。
今回のオラパリブは、使用条件が色々あり、まだ使いどころが狭いですが、今後幅が拡がってくれることにも期待したいと思います。

膵臓がんについてのお話しでした。
最後までお読みくださりありがとうございました。

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