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がんと情報
「がん」と一言でいっても、、、
どこにできたがんなのか?(肺?胃?大腸?・・・?)
早期なのか、進行してからみつかったのか?(ステージは?)
転移があるのかないのか?(肝臓の影は、原発?転移?)
など様々な状態があります。
なので、
「近所の○○さんは大腸がんになったけど、5年たってもピンピンしている」
「●●さんは、肺がんになって1年も経たずに亡くなったって。肺がんって怖いね。」
という会話を聴いたことがあるかと思いますが、
これは、大腸がんなら5年は大丈夫で、肺がんは1年もたないという話ではないことは、「そりゃ、そうだよね!」って納得されると思いますが、いざ自分が「がん」になってしまったときはどうでしょうか?
例えば、上のような話を知っていた状態で「大腸がん」になった場合、「私も5年くらい大丈夫かな」、「まあ、俺も年だし、5年も生きれば満足だ」って、それ以外何の情報も得ずに病院にいらっしゃる方もいるかもしれません。
一方、「肺がん」になってしまった場合、「私は1年しか生きられないのか・・・」と落ち込むのではないでしょうか。
こちらの場合、その後、肺がんでも長生きした人の情報をインターネットなどで探して、
「肺がんでも5年生きてる人がいる」
「こっちには10年生きた人がいる!」
「治った人もいる!!」
という、いい情報(自分にとって都合がいい情報)を集めて安心するのだと思います。
この時点で、「肺がんで1年しか生きられなかった」という情報は、意図的に、ほぼ忘れ去られていて、「5年は生きられる」「がんでも治る」という情報で頭の中がいっぱいになります。
このような状態で、もし担当医に「進行がんですから、5年は難しいかもしれませんね。よくて●年でしょうか」なんていわれようものなら、どうでしょうか?
「世の中には5年生きた人がいる、治った人もいる。」
「どこかにこの状況を打破する方法がきっとあるはずだ!」
と考えて、さらにインターネットで情報を収集。
自分に都合が悪い情報は目に入らず、自分に都合がいい情報のみを拾い集めてしまいます。
「●●免疫療法で余命数ヶ月といわれた人が治ったらしい」とか
「○○食事療法は、副作用がなくて、抗がん剤よりも効果いいらしい」とか耳ざわりのいい宣伝文句って、やっぱり効果的なんだなってつくづく思いますね。
「人は都合の良い情報しか見えない」ことを、難しい言葉で「確証バイアス」といい、よくあることなのですが、振り込め詐欺とかに応用されてしまっているのはご存じかと思います。
本当は、
○○でがんが治った!(がんが縮小した!)
で一番多いのは手術、次いで放射線治療と抗がん剤治療だと思いますが、
それらは当たり前すぎて、インターネットを検索しても見つけられなかったり、
まじめな?飾り気のないページに淡々と記載されていたりして、目に留まらないです。
よしんば目に留まっても、
「手術の痛みでたいへんだった」とか、「抗がん剤の副作用つらい」とか、悪い情報が多いので
かえって「つらくない治療」に惹かれてしまうのかもしれません。
僕もよく
「免疫療法って、どうなんでしょう?」という質問をいただきます。
この質問には、はっきりいって、かなり大きな罠が仕掛けられています。
例えば、
「免疫療法なんて全然効果ないよ。意味ないよ。」と否定的に答えたとしましょう。
患者さんは受けてみたいという気持ちだったり、今の治療に不満がある状況のことが多いですから、否定されると嫌な気持になりますし、「違う意見=敵」と見なす人は少なからずいらっしゃいますので、その意見を述べた担当医への悪い感情にすり替わってしまったりする場合もありえます。
逆に肯定的?に「受けることは患者さんの自由です。紹介状はいつでも書きます。」と答えた場合、「見放された」ような感じを受けたり、「医者が受けていいっていうなら、この治療も効果があるのだろうから、一度受けてみようか」と考えるかもしれません。
どちらで答えても、関係性が悪くなったり、こちらの意図とは違ったとらえ方をされてしまったりする可能性があります。
なので、僕はいつもの通り「まったくわかりません」とお答えすることにしています。
現在は、情報が簡単に入手できる時代になりました。
確かにスマホやパソコンにキーワードを入力すれば、非常にたくさんの情報がすぐに入手できます。
インターネットがなかった時代にどうやって調べていたのか、僕はすでにわからなくなっており、スマホがないと何も調べられません。
とはいえ、逆に情報が多すぎて困りますし、本当に正しい情報はどれなのか?の判断が非常に難しくなってしまっています。
一昔前は、誰に聞いても同じ答えだった場合、その答えの信ぴょう性は高く感じましたし、たとえ間違っていたとしても、他の人も同じように間違っていたんだから仕方がないと半分あきらめもつきました。
インターネットの時代は全く状況が異なることに注意が必要です。
検索してでてきたどのサイトを見ても同じことが書いてあったら、みんなが言ってるから本当に違いないと思ってしまいます。
しかし、インターネットの場合は、サイトを見てもらうため(見てもらえばもらうほど広告収入が入るのはご存じかと思います)に、人目を引きそうな情報をあえて選んで載せています。つまり、掲載している内容が正しいか正しくないかよりも、人目を引くかどうか?が判断基準として優先されているという状況です。
なので、人目をひく情報は、たくさんの方が引用して、さもたくさんのサイトで紹介されているように感じますが、情報源は一つだったりします。
つまり、「たくさんの人が同じようなことを言っている」と思ったら、「ある一人の個人的な意見がたくさん拡散されている」だけという場合があるということです。
ですので、「みんな同じ答え=信ぴょう性が高い」とは言えなくなっているのが、インターネットの時代なのです。
インターネットの情報は間違っているということではなく、たくさんあるから正しいとは言えないので、情報を鵜呑みにせず、自分できちんと吟味しましょうねということです。
せっかくインターネットでがんについて調べるのであれば、「がん情報サービス」や「(国立や県立)がんセンターのホームページ」は、信頼性も高く、特にお勧めです。
また、家族や友人・知人、担当医やその他の医療者などに広く意見を聞いてみるのも良いと思います。
いずれにしても、「人は都合の良い情報しか見えない(確証バイアス)」には注意して、自分と違う意見を頭から否定するのではなく、いったんは受けとってみることも必要だと思います。