がんと『情報不足』
がん患者さんにとって、がんの情報は足りているのでしょうか?
それとも不足しているのでしょうか?
2013年に報告された「がん情報の不足感」実態調査というものを見つけました(http://www.qlife.co.jp/news/140117qlife_research.pdf)。
2013年の報告ですから、調査自体はそれよりも前に行われております。
つまり今から10年くらい前に調査されたものという風に考えたほうが良いでしょう。
10年前だと、今のようにスマホを持っている方はかなり少なかったはずです。
インターネット普及率は80%くらいだったようですので、インターネット検索は多くの人が可能であったという時代背景でしょうか。
国立がんセンターの『がん情報サービス』というとても素晴らしいがん情報提供サイトができたのは、Wikiによると2006年とのことでしたので、すでに閲覧可能だったようですね。
(ちなみにWikipediaは2001年からだそうです)
そんな今から10年程前はどんな状況であったかというと
「がんに関する情報」が充分にあるか?との質問に
患者さん本人:大いに足りている+やや足りている=51.8%
ご家族:大いに足りている+やや足りている=26.8%
と回答されたようです。
つまり、本人が知りたい情報はそこそこ手に入るが、
家族が知りたいと思う情報は入手しにくかったとなるかと思います。
また、男性よりも女性の方が、情報の不足感を感じており
年齢別だと、より若い世代の方が情報不足を感じていたようです。
それぞれもう少し詳しくみていきましょう。
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▼患者さん本人と家族での不足感の相違
がん患者さんがほしい情報とは、「がん治療そのもの」に関することではないでしょうか?
・手術や放射線治療、抗がん剤治療はどういうものなのか?
・やればどのくらいの確率で治るのか?
・治療のつらさはどうか?などなど
このあたりの情報は、本や新聞、インターネットでも多くの情報がでてきますし、体験記なども多い(当時から結構あったようです)ので、入手しやすかったのだと思われます。
一方、現在は逆に情報過多な印象です。
情報が多すぎて、どれを信用したらいいか?迷ってしまい、途中で情報を入手すること自体を断念してしまう人が多いのではないかなって感じています。
一方、家族が知りたい情報はどんなものでしょうか?
「がん情報サービス」が提供している「家族ががんになったとき」というパンフレットを見てみると
・がんになった患者さんへの接し方、支え方
・担当医とのコミュニケーション
・家族は第二の患者
などの項目が目を引きます。
これらのことは、確かに情報も少ないのかもしれませんが、
おそらく情報があっても「うまくいかない」ケースもあるだろうことは推測に難くなく、情報不足という側面と満足度不足という側面もあるのではないかと思いました。
10年前に比べればこれらの情報も増えてきているかと思いますが、知っていてもできない(うまく行かない)という部分に何らかの対処が必要なんだろうなぁ~って感じました。
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▼男女での不足感の相違
男性よりも女性の方が、情報不足を感じているという結果でしたね。
患者さん本人と家族は半々くらいでしたので、女性は、家族としてアンケートを受けているからということではないようです。
おそらく男性脳と女性脳の違いが反映されているような気がします(個人的な意見ですみません)。
よく「男は論理を重視し,女は感情で判断する」と言われます。
もちろん女性でも論理的で、男性でも感情が優位な方もいらっしゃることは存じ上げております。あくまでもその様な傾向がありそうだと思われているということでしょう。
本やインターネットから入手できる情報は、「論理」、主に「数字」で納得感があがり、必要な情報が入手できたと感じる人が増えるけど
「感情」となると、本やネットでは難しそうです。
現在はYouTubeなどの動画がありますので、感情が乗った情報を入手することが可能となってきておりますので、もしかしたら男女差は縮まってきているかもしれませんね。
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▼年代での不足感の相違
より若い人ほど、情報不足感が大きいという結果でした。
これは、完全に情報が不足していたことに起因していると思います。
そもそも「がん」は高齢者の病気です。60歳くらいから急に増え始めます。
がんの情報を提供しようと考えた場合、このくらいの年代を想定して内容を決めているはずです。
そうなると若い世代には、合わない、そぐわない内容が増えてきてしまうのは当然かと思います。
例えば
・医療者にはしっかりと自分の考えを伝えましょう!
→こんな年上の怖そうな医者に面と向かって正直に話すなんて絶対無理
・がん保険をうまく活用しましょう!
→がんになるなんて思ってなかったから、大した保険に入っていなかったわ・・
・介護保険制度っていうのがあるよ!
→俺の年じゃ、使えないじゃん・・・
情報はあっても、自分に適したものが少ないと感じてしまうのはやむなしと思います。
また、若い世代の「がん」は、高齢者がなりやすい「がん」とは種類が違うことも多いです。
たとえば骨肉腫は、20代に多い「がん」ですが
年間200-300人くらいとされており、そもそもとっても稀です(ちなみに胃癌は13万人くらいいます)。
もしその方たち全員が情報を発信したとしても、圧倒的に多い他のがんの情報に埋もれてしまうでしょう。
最近は(最近でもないけど)、「AYA世代」と名前を付けて、情報の強化に力がそそがれておりますので、10年前に比べるとかなり情報不足が解消されてきたと思います。
ちなみに「AYA世代」とは、Adolescent&Young Adult (思春期・若年成人)のことをいい、15歳から30歳代の患者さんのことを指します。
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▼まとめ
10年前に比べるとがんに関する情報不足はかなり解消されてきていると思います。
一部の分野では情報過多になりすぎてしまい、正しい・信頼できる情報を探すことが難しくなってしまっている現状もあります。
また、情報不足と感じてしまうものの中には、情報があるだけでは解決しにくい問題への不満足感が含まれており、今後は問題に対する解決能力を如何に向上していくかが重要かなって思いました。
世の中には、「問題解決療法」(http://grappo.jp/pst/pro/index.html)という治療方法あります。
こういうのを活用してみるのも一つの手段かもしれませんね。