がんと『水素水』
前回の「アルカリイオン水」に関してのお話で、「アルカリイオン水」の主な効果はそのアルカリ性にあるわけではなく、「アルカリイオン水」に含まれている「水素」によるのではないかとさせていただきましたので、今回はその「水素」に着目した「水素水」なるものは、「がん」にどのような効果が期待されているのかというお話をさせていただければと思います。
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▼そもそも水素水とは?
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水素水には公的な定義はないようですが、一般的に水素分子や水素イオンを含んだ水のことを水素水と呼んでいるようです。
定義があいまいなためか、つくり方も各社それぞれのようで、
・水に水素ガスを充填したもの
・水にマグネシウムもしくはアルミニウムと酸化カルシウムを化学反応させて水素を発生させたもの
・水を電気分解して水素を発生させたもの
などの生成方法があるようですね。
また、どのくらいの水素が含まれていれば水素水となるかも時に決まりはないようですので、含まれている水素の濃度も各社それぞれのようです。
名称も、ただの「水素水」としているものもあれば、「活性水素水」や「還元水素水」という名前で販売されているものもあるようです。
「還元水素水」は、電気分解を利用して生成されたものをそのように呼ぶようです。
「活性水素水」は、水素原子が溶け込んでいるといわれている水のことのようですが、水素原子は極めて特殊な環境下でしか存在できないことになっており、安定的に水に溶け込んでいることはありえないと科学的に否定的とされており、「トンデモ科学」と考えられています。
つまり、「水素水」には3種類あります。
①水素分子(H2)が普通の水よりも高濃度に溶け込んだもの(濃度の規定はなし)
②水素イオン(H+)が溶け込んだもの(電気分解などによる)
③水素原子(H)が溶け込んだもの
とはいえ、③は科学的に否定的なようですから
実際には①と②の2種類があると考えられます。
「水素って水に溶けたっけ?」って疑問が湧いてきましたが、1気圧下で水1リットルに1.6mgの水素分子(H2)が溶けるようです。そして、この濃度の80分の1(0.02mg/L)で細胞に抗酸化作用を発揮するとされており、「水素水」を飲むことが科学的に全く意味がないことというわけではなさそうです(実際に人体にどのような影響が出るかは別の問題ですが)。
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▼アルカリイオン水と水素水の違いは?
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前回お話しした「アルカリイオン水」と「水素水」の違いは何なのでしょうか?
「アルカリイオン水」にも色々とありますが、胃腸障害改善効果などが証明されたものは、「『アルカリイオン整水器』を用いて、水道水を電気分解し、陰性極側より生成されるpH9~10の飲用アルカリ性電解水」というものでしたね。
ですので、上の②(電気分解などにより)水素イオン(H+)が溶け込んだものの「水素水」は、「アルカリイオン水」とほぼ同様と考えられます。
「ほぼ」としたのは、「アルカリイオン水」の方が「アルカリイオン整水器」を用いるという前提があるため、「アルカリイオン整水器」以外の方法で水を電気分解して水素イオン(H-) を増やしたものであれば「水素水」と呼ばれますが、正式な「アルカリイオン水」ではないので、「ほぼ」と表現いたしました(ちょっと難解ですね)。
そして「水素水」にはもう一つあります。上の①(水素分子(H2)が普通の水よりも高濃度に溶け込んだもの)のものですね。
こちらの「水素水」は、「アルカリイオン水」とは別物と考える必要がありますが、水素水①と水素水②で効果が異なるのかどうかは今のところハッキリとしませんし、一般的には同じものとして扱われていることが多いようです(もちろん水素水の研究をしている方は明確に違うものとして扱われていると思いますが)。
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▼がんと水素水
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「水素水」に期待されている効果の第1は、抗酸化作用です(こちらは前回「アルカリイオン水」のときにもお話しさせていただきました)。
さらに、水素分子(H2)は細胞レベルで作用することができるようです。
細胞レベルで作用するとは、細胞膜を通り抜け、細胞核の中に移行したり、ミトコンドリアに作用できることが示されています。
その結果、抗酸化作用以外に、抗炎症作用やアポトーシスへの作用なども期待できるようです。
また、脳は脳血管関門という特殊なバリアで外部からの刺激(クスリなどを含めて)から守られる構造になっていますが、どうやら水素分子(H2)はこの脳血管関門も通り抜けることができるようで、脳疾患への応用も研究されています。
「がん」に対する研究もかなり盛んなようです。
細胞実験レベルですが、大腸がん細胞に5FU(大腸がんでよく使用される抗がん剤ですね)を水素水を併用したところ、5FUの効果が増強された。さらに動物実験でも同様の効果が認められたとのことです[PeerJ. 2015; 3: e859. doi: 10.7717/peerj.859]。
ヒトではどうかというと、「水素水」ではなく「水素ガス」を吸入した研究ですが、熊本県の玉名地域保健医療センターにて、ステージⅣの大腸がん患者さん55名を対象にした臨床研究の報告があります[Oncol Rep. 2019 Jan;41(1):301-311.]。
水素ガスを吸入した群では、PD-1陽性のCD8陽性T細胞が減少した(PD-1陽性のCD8陽性T細胞が多いほど予後不良の報告がある)。そして、その結果、患者さんの予後が改善したとのことです。
「水素水」を飲んで同じような結果になるかは不明ですし、もちろん上の臨床研究もエビデンスレベルの高い追加研究が必要です。
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▼まとめ
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「水(water)」はやっぱり奥が深いですね~
たかが水、されど水
「水素水」は2種類あることは注意が必要ですね~
さらに「水素」は水として飲むより、「気体」のまま吸入する方法が提唱されており、そのような器具も販売されているようです。
臨床研究も、気体の水素の方が最近主流な印象です。
水飲むより、吸う方が簡単で、それで効果があるのであれば、なおいいですね。
今後の成果に期待しましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。