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がんと「アサーション」

「アサーション」という言葉をご存じでしょうか?
僕は寡聞にしてごくごく最近まで知りませんでした。
でもこの「アサーション」は、知っているとがん治療にとても役立ちそうでしたので、是非紹介させてください。

「アサーション」とは、もともと「自己主張」という意味だったようですが、「ツタワル伝え方」と考えてください。

「ツタワル伝え方」って、伝えるってそもそもツタワル事じゃないの?と思われるかもしれませんが、伝え方には次のような4種類があります。
①ガマンの伝え方
②イヤミな伝え方
③セメル伝え方
④ツタワル伝え方 です。

おそらく多くの方は①~③のどれかの伝え方で自分の意見を伝えているのではないでしょうか?
少なくとも僕は「アサーション」を学ぶまでは、①~③のいずれかしか使っておりませんでしたし、今もそれらが多く、早く④ツタワル伝え方を使いこなせるようになりたいと思っています。

それぞれもう少し詳しく見ていきます。

①ガマンの伝え方
相手を傷つけたくないので、自分の気持ちを遠慮して言わない伝え方です。
じゃあ、伝えてないじゃんってことになりますが、でも多くの人がこの伝え方を使って、お願い事を引き受けてしまっているのではないでしょうか?
「○○さん、これやっといてくれる?」
「ハイ、わかりました・・・(今別の仕事で忙しいんだけどなぁ~、他にヒマそうにしてる人いるじゃん!何で私なの?)」っていうパターンです。
抗がん剤治療の場面でも良く見かけます。
例えばこんな感じです↓
Dr:「前回の抗がん剤の副作用は大丈夫でしたか?」
患者さん:「大丈夫でした」
この患者さんの「大丈夫」はどう大丈夫なのでしょうか?
多くの方が、途中副作用でちょっとつらい時があったけど、ここ数日は副作用も抜けてきてほぼやる前くらいに戻ったから、今日は「大丈夫(抗がん剤治療をがんばって受ける!)」という意味の大丈夫なのではと思っています。
Drは副作用がほとんどなかったという認識ですが、患者さんは途中はそこそこつらかったという状況になってしまっており、この認識のズレが後々になって大きなズレになってしまう可能性があります。

②イヤミな伝え方
相手に気づかせるように遠回しにいう事で、結果的にイヤミっぽくなってしまう伝え方です。
Dr:「すみません。お待たせいたしました。」
患者さん:「大丈夫です。たったの1時間くらいですから。お医者さんって忙しいですもんね~」
Dr:「は~、すみません。じゃあ、手短にお話しますね!」
言った方はすっきりするのかもしれませんが、言われた方は嫌な気持ちになるため、このようにイヤミで返されてしまうこともよくある会話かなと思います。
結局、お互いが嫌な気持ちになってしまいます。

③セメル伝え方
怒りを露わにして、怒鳴りつけてでも自分の意見を伝える伝え方です。
「こっちは予約の時間にきているのに、いつまで待たせるんだ!もう帰るぞ!!」
「お待たせしてすみません。ほかにもお待ちの方がいるのですが、次呼んでもらうようにしますね」
どうでしょうか?
周りの人からは、「俺の方がもっと長く待っているぞ」とか「結局、言ったもん勝ちなんだよな」とか白い目で見られてしまいますし、
担当医からは、他院(開業医など)への転院を勧められたりするかもしれません(これのせいで、もっと怒ったりする場面も院内で多々見受けられますが・・・)。

俺の勝ちだ!とか、私の負け・・ とか、主張が通っても通らなくても、通した方も通された方も、スッキリしない感じが残ります。
スッキリしない感じが残るということは、その場では勝ったかもしれないが、次回から相手がよそよそしくなったり、意見が通りにくくなったりする可能性があるということです。
「前回は私が折れたのだから、今回はあなたが折れなさいよ」みたいな感じです。

そこで
④ツタワル伝え方=アサーション(アサーティブコミュニケーション)
が重要になってきます。

どのようにしていけばいいのでしょうか?
実際には、いきなり主張を伝えるのではなく、いくつかステップをへる必要があります。

④-0:信頼関係を構築する
伝える前の準備として、相手から信頼を得る事が重要です。
伝える相手が、職場の同僚やスタッフさん、家族などであれば、日頃からの接し方が重要だという事です。
日頃から承認したり、感謝を伝えたり、勇気づけを行ったりしていれば、特にアサーションを使用しなくてもお願い事を聞いてくれるかもしれません。
「そりゃあ、そうだろう!それができないから困ってるんだ!」って思われるかもしれません。しかし、これができれば自分の主張が通りやすくなるのであれば、日頃から実践しておく価値は十分あるのではないでしょうか?

それとは別に、初対面の人だったらどうするの?って疑問がわくかもしれません。
初対面でも何となく信頼できそうだな、話しやすそうだなっていう方いますよね。
そのような方はどんな感じでしょうか?
・あなたの話を尊重しながら笑顔で聴いてくれる人
・環境や趣味などに共通点がある人
・何となく話すスピードや動作が自分と似ている人
このような特徴の方には、何となく親近感を覚え、初対面でも信頼感が湧くのではないでしょうか?
実際には、これらは技術で可能であり、その技術を使う事で、初対面の人とも信頼関係を構築する事が可能です。

④-1:「私」メッセージで伝える
私(I)メッセージとあなた(YOU)メッセージというものがあります。
あなたメッセージは、
「(あなたは)仕事が早いですね」「(あなたは)よく頑張っていますね」などのあなたを主語にして、私があなたについて思った事を言葉にするものです。
相手がうれしいこともありますが、あくまでも私の主観であるため、相手がそう思っておらず受け取りにくい場合もあります。
「(あなたは)仕事が早いですね」→本当は仕事が遅いから、徹夜してなんとかギリギリまにあったんだけどなぁ~ という場合などです。
一方、私メッセージは、
「君のおかげで(私は)大変助かりました」や「君が○○してくれて、(私は)とても嬉しく思う」など、私がどう感じたかを言葉にしているだけなので、相手も受け取らないわけにはいかないのです。

④-2:「あなた」はどう思いますか?
私メッセージである「私は、あなたが○○してくれると嬉しい」は、
あなたメッセージの「私は、あなたに○○をしてほしい」と比べてどうでしょうか?
相手がNoといえる余地があるのがわかりますでしょうか?
やる・やらないの選択権は「あなた」にある状況です。

④-3:どうしたらいいか、一緒に考えよう
私メッセージを伝えたはいいが、相手から「No」の返事だった場合、さらにもうワンステップ。
どうしたら「YES」がもらえるのか一緒に考えちゃいましょう!


例えば、抗がん剤治療で味覚障害がひどく、食欲が大きく落ちてしまった患者さんに対して家族の方が心配してこのようにお話ししているのをよく耳にします。
「一口でもいいから、食べて。折角あなたのためを思って、あなたが好きだった○○買ってきたのよ。食べないとがんもよくならないんだから。先生もそう言っていたでしょ。クスリだと思って頑張って食べて。」

これをアサーティブコミュニケーションに変換します。

「あなたに喜んでほしくて、あなたの好きな○○買ってきたのよ。味見程度でかまわないから、口にしてみて感想教えてもらえると嬉しいわ。」
「がんがよくなってくれるにこした事ないけど、あなたの身体のほうが心配なの。」
「私は、抗がん剤が大変なら、いったん休んでみても良いんじゃないかって思ってるの」
「今度受診の時私も一緒に行くから、先生にも相談してみない?」

これで変換できてますかね?
まだ勉強中なので、間違っていたらすみません。
でも、僕だったら下の方がいいなぁ~って文にしてみました。

書いていて気がつきましたが、
僕も含め、みんな言葉が足りなさすぎますよね。
当たり前ですが、気持ちは言葉にしないと伝わりません
きっと今の10倍くらい言葉にして相手に伝えれば、アサーションとか関係なくツタワル伝え方になるんじゃないかと思いました。

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