『がん』を何ととらえている?
皆さんはがんを何ととらえていますでしょうか?
どんな風にイメージしているか?といっても良いかと思います。
多くの方が、『がんとは…』
怖い
命にかかわる
痛い・苦しい
というような言葉が出てくるのではないかと思います。
また、「絵」で描こうとすれば
ギザギザ、トゲトゲの細胞で表現されることも多いと思っています。
その細胞に顔を描けば、いわゆる「悪そうな顔つき」で描かれるのをよく見かけます。
「色」としては、黒や紫、濃い青などで塗られることが多そうです。
「がん」は英語だと「Cancer(キャンサー)」というのはご存じの方も多いと思いますし、Cancerがカニ(蟹)という意味もあること知っている人が多いことでしょう。
「がん」を「カニ(のような)」と最初に表現したのは、ヒポクラテス(紀元前400年ころ)と言われています。
「がん」を直接見たときに、周囲に浸潤して拡がっている様子を見て「カニ」に似いているという、見た目での表現ですので、「がん」がギザギザしてそうとかトゲトゲしているイメージはかなり昔から根付いているのでしょうね。
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▼世論調査でも「がん」は怖い病気という認識
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このように、多くの方にとって「がん」とはイメージ的に「怖い・恐ろしい」病気です。
実際、平成26年内閣府が行った世論調査(https://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-gantaisaku/2-1.html)では、がんを怖いと思う人の割合は74.4%であったとのことです。
そして、がんを怖いと思う人の割合は、大都市では比較的低く、中都市では高くなる傾向があるとのことでした。
これは、情報量の差が原因なのかなって個人的に考えています。
人間は、よくわからないもの、知らないものに恐怖や不安を覚える傾向にありますので、「がん」とはどういうものなのか?を知っていれば知っているほど、がんにいだく怖さは薄れるのだと思います。
こういう風に書くと、「俺の知り合いが『がん』でとても苦しんで、あっという間に亡くなったから、『がん』のことはよく知っているが怖いと思うぞ」という方がいらっしゃいますが、これは「がん」を知っているのではなく「がん患者さんの一例」を知っているにすぎませんから、もっと多くのがん患者さんと接したりなどで情報量を増やせば怖さが和らぐのだと思います。
世論調査に戻ります。
男性と女性では、男性の方が「怖いと思わない」割合が多く、女性の方が「怖い思う」割合が多かったようです。
世代では、70歳以上で「怖いと思わない」割合が多く、20代では「怖いと思う」割合が高めであったとのことです。
怖いと思う理由に関して、20~30代では「死に至る可能性があるから」という回答が比較的多く、やはり「死」につながるイメージから「怖さ」が来ている部分が大きそうです。
興味深いですね。
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▼物事の捉え方:楽観的と悲観的
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世の中には「物事」を楽観的にとらえる人と悲観的にとらえる人がいますが、「がん」という病気になり、楽観的にとらえられる人はごく少数派ではないと思います。
「がん」に限らず、楽観的なのと悲観的なのと、どちらがいいかは結構難しいのではないかと思います。
なんでも楽観的にとらえて、あまり計画や準備をせず、とりあえずやってみようとして、失敗することもよく経験します。このような場合、悲観的に考えて念入りに計画したり準備したりする人の方が成功率が高そうな印象があります。
とはいえ、なんでも悲観的にとらえてしまうと、せっかくのチャンスに考えすぎて二の足を踏み、結局チャンスを逃してしまったという話もよく聞きますし、逆に後先考えずにチャンスだと思ったから行動し大成功!楽観的で良かった!なんて逸話もよく聞きます。
長生きするという観点でいえば、悲観的よりも楽観的な方がいいようです。
(https://gigazine.net/news/20190901-optimist-long-life/)
楽観主義者の場合、平均寿命が11~15%長く、85歳以上まで生きられる可能性が高いとのことです。
(原著はこちら(英文):https://doi.org/10.1073/pnas.1900712116)
本研究以外でも、楽観主義者の方が心血管イベントなどを含む慢性疾患の発症リスクが35%も低く、死亡率も14%低いなどの報告があるようです。
では、「がん患者さん」の場合はどうなのでしょうか?
メイヨー(Mayo)クリニックで肺がんの治療を受けた534名の調査です。ミネソタ多面人格テスト(Minnesota Multiphasic Personality Inventory : MMPI)にて、楽観的か悲観的かにわけ、生存期間を比較したところ、悲観的と判断された人に比べ楽観的とされた人は、6か月以上長く生存できたという結果でした。
(J Thorac Oncol. 2010;5(3):326-332. doi:10.1097/JTO.0b013e3181ce70e8)
また、乳がん患者において、悲観的な人に比べ楽観的な人の方が生活の質(QoL)が高いという報告も複数あります。
「がん」においても、悲観的よりは楽観的な人の方がいろいろな面でがん治療がうまく生きそうな感じでしょうか。
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▼がんのイメージ療法:サイモントン療法
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「がんのイメージ療法」として有名な「サイモントン療法」をご存じでしょうか?
このサイモントン療法では、「がん」を自身の本質から外れていること知らせてくれる「メッセンジャー」としてとらえましょうとされています。
「がん」は、あなたのこれまでの生活、思考などがあなたの身体に合っていないから、これ以上そのままを継続すると危険だよという「サイン」であるという考え方です。
「怖いもの・恐ろしいもの」「死を連想させるもの」、つまり「敵」とか「憎むべきもの」という風にとらえるのではなく、危険を知らせてくれる「味方」「親切なもの」ととらえてみたらどうでしょうか?というものです。
サイモントン療法の考えに基づくと、「がん」を手術で切除しても、がんになる前の生活や思考に戻ってしまうと「がん」がまたメッセンジャーとして知らせに来ることになるので、きちんと自分の本質を見極め、そちらに戻るようにすることで「がん」は去っていくという考え方につながります。
とても興味深い考え方だなぁ~って思いますね。
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▼まとめ
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「がん」に悪いイメージを持っている方がほとんどだと思いますが、悪いイメージを持ち続けることは、『がん』の経過にあまり良い影響を与えない可能性がありそうです。
進行がんから治癒に至った人や統合医療やホリスティック医療に携わっている方の本を拝見すると、多くの人が、がんを「メッセンジャー」だったり、「何か大切なものを教えてくれるもの」など、敵ではなく味方としてとらえているようです。
実際にはなかなかその境地に到達することは難しそうですが、少なくとも極端な悪いイメージは手放せると過ごしやすくなりそうですねというお話でした。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。