がんと『人生会議』 その5
『人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)』って、実際にはどうやるの?
についてお話ししています。
今回はSTEP4についてお話ししていきたいと思います。
―――――――――――――――――――――――――
▼人生会議の大まかな流れ
―――――――――――――――――――――――――
『人生会議』は、次の5つのSTEPで行っていきます。
STEP1:大切にしていることを考える
STEP2:代理人を選ぶ
STEP3:質問する、調べる
STEP4:話し合う
STEP5:書き留めておく
「完璧主義」は手放して、納得度が60%以上なら上出来というくらいで進めていきましょう。
時と場合に応じて、何度も繰り返して考えていくことも大切です。
―――――――――――――――――――――――――
▼STEP 4:話し合う
―――――――――――――――――――――――――
これまでのSTEPで、かなり沢山のわかったこと、気がついたことがあったのではないでしょうか?
自分が知らなかったこと、知っていてもあまり深く考えていなかったことなどもあったことでしょう。
また、ドクターへの質問では、想定以上に厳しい話になってしまった方もいらっしゃったかもしれません。
そんなこんなで、STEP1で考えていたことから、大きくズレが生じている方も多いと思います。人によっては、「代理人」を別の人にした方が良いかもということになったかもしれませんね。
「いや、ほとんど変わっていない」という方は、これまでしっかりと「人生」について考えて来られた方だと思いますので、これからも引き続きその調子でお願いいたします。
とはいえ、この「STEP4:話し合う」は、どのような方も省略してはダメです。
同じ話しを聴いた人たちの間であっても、意見が異なる可能性は十分ありますし、もし自分に何かあった際に対応するのはその方でしょうから、その人としっかり話し合って、意見をすりあわせておくことはとっても重要なプロセスです。。
―――――――――――――――――――――――――
▼何を話し合う?
―――――――――――――――――――――――――
基本的には「これから」のことであれば、どんなことでも良いと思います。
とはいえ、「どんなことでもいい」「何でも良い」と言われると逆に何も話せなくなってしまったり、本当は話し合っておいた方が良いことが抜けてしまうかもしれませんので、これは話しておきましょうということを列挙しておきます。
・希望する医療やケアについて
・余命などについて、どこまで知りたいか
・葬儀やお墓について
・財産の処分方法について
それぞれもう少し詳しくみていきましょう。
―――――――――――――――――――――――――
▼希望する医療やケアについて
―――――――――――――――――――――――――
「人生会議」の中心ともいえる事項です。
「人生会議」を考える前には、ほとんど考えていなかったことと思いますし、少し考えていた方であっても、かなり漠然としたものであったはずですが、ここまでのSTEPを経てきている皆さんであれば、かなり具体的な話し合いができると思います。
・延命治療を受けたいのか、不要か
・苦痛が伴う治療(抗がん剤治療など)をどこまで受けるのか
・寝たきりかそれに近い状態の場合、過ごしたい場所(入院か、自宅か)
家族やよく知っている人との話し合いですので、「もしこういう事態に陥った時はどうする?」のような、細かなことも話しておくと、いざという時でも慌てないで済むことが多いかなと思います。
―――――――――――――――――――――――――
▼余命などについて、どこまで知りたいか
―――――――――――――――――――――――――
「余命」に関して、知りたいと考える患者さんは過半数を超えるといわれています。
一方、家族の立場から考えるとかなり多くの方が「患者本人に予後・余命」などの厳しい話はしないでほしいと答えます(患者本人に知られない限り、家族としては予後・余命を知っておきたいと考える方が大半ですが)。
ですので、患者さんが一人で受診した際に「余命を聞きたい」と申し出があったので、担当医が「およそ●●ヶ月くらいでしょうか」なんて答えた場合、後々家族から大変厳しい苦情がくる場合があったりします。
「先生の説明を聞いて以来、とても落ち込んでしまって、ずっと暗い顔をしています。どう責任をとってくれるのですか!」
僕は余命に関して「わからない」としか答えないようにしているので、自分でこのような場面に遭遇することはほぼありませんが、世間的にはこのような事は度々耳にします。
患者さんとしては、もっと長い余命を期待していた(おそらく告げられた年月の数倍~10倍ほど)のでしょうが、その期待が叶わず、大きく期待を裏切られショックを受ける。その姿を見て家族が慌てるという構図になっています。
つまり、「余命を聞きたい」という願望には、その後に訪れるであろうショックに見合うだけの「聞いて良かった」がないと釣り合いません。
「何となく聞きたいと思ったから聞いた」ではダメだということです。
ですので「余命を聞きたいけど、聞いてみてもいいだろうか?」と相談しておく事は重要です。
「孫の結婚式に出席できるのか?」「子供が成人するまで見守れるだろうか?」「今の仕事にどのくらいまで関われるのだろうか?」
相談した結果、こういういついつまでは大丈夫かのような「何となく」以上の理由が色々と見つかる事も期待できます。
そして担当医も、3ヶ月や6ヶ月先の予定に関しては、おおよそどのくらいの確率で達成可能かの推測は十分可能だと思います。
「孫が結婚するまでは生きていたい」とおっしゃった方によくよく伺ってみると、「孫はまだ高校生だ」とのことで、いつ結婚するかわからない(そもそも結婚するかどうかもわからない)状況において何とお答えしたら良いか困った経験があります。
「私が死ぬまでに結婚しなさい」とお孫さんが結婚を強制されるのも何だか違う気がしますね。
―――――――――――――――――――――――――
▼亡くなった後のことに関して
―――――――――――――――――――――――――
葬儀や財産の処分方法など、患者さん本人が亡くなった後のことに関しては、患者さん自身というよりは、残された家族にとって重要です。
家族にとって重要だからとはいえ、家族からは話題を出しにくい事だと思います。
「何だお前!オレに早く死んでほしいと思っているのか!」とか言われてしまうと、もう二度と話題にすることができなくなってしまいます。
ですので、患者さんが話したいタイミングで、患者さんの方から話題として出してみることをオススメいたします。
話し始める前は大丈夫と思っていても、話してみたらやっぱり自分の死後の話しは落ち込むような感じがあれば、無理せず途中で辞めてもいいと思います。
たとえ途中で辞めたとしても、一度話しておけば大まかな方針はわかったでしょうし、「やっぱりこうしたい」が出てきた時にまた話せばいいかなと思います。
―――――――――――――――――――――――――
▼折角なので・・・
―――――――――――――――――――――――――
折角家族と相談できる貴重な機会なので、気分が上がる相談もたくさんしていただきたいと思います。
・定年したらやりたいこと
・一生に一度はやってみたいこと
・どこどこに旅行に行きたい
・子供が成人したら、沖縄やハワイに移住しようか
・毎日映画やドラマを見てすごそう
・グルメツアーにも行ってみたいな
・喫茶店、バーを開きたい
などなど
―――――――――――――――――――――――――
▼まとめ
―――――――――――――――――――――――――
人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)を、具体的にどう行っていけばいいのか?
5つのSTEPのうちの4つ目までお話させていただきました。。
どうしても「死」に関する話題が避けられず、雰囲気が暗くなりがちです。しかし雰囲気が暗いと、内容まで悲観的になりがちです。時に明るい話題も交えつつ、相談できた方が良い内容になりそうだと思いました。
次回はいよいよLast STEPです。
乞うご期待!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。