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術後補助化学療法について

なぜ手術後に抗がん剤治療を受けなければならないのか?

手術が終わり、担当医から
「がんの手術はうまくいきました」
「がんは全部取り切れました」
と言われていたのに、今日受診したら抗がん剤治療をやった方がいいって勧められました。
「なぜ手術したのに、抗がん剤治療を受けなきゃいけないんだろう?」って思いますよね。
別に手術がうまくいかなかったことを体良くごまかしているわけでは決してありません。
手術時点では目に見えない(どんな検査でも検出できない)レベルのがん細胞が残ってしまっていて、それが時間経過とともに大きくなり、再発として現れてきてしまうことが残念ながらありえます。
がんはその拡がりによって、進行度(ステージ)が決められます。
拡がりとは、がん自体の大きさであったり、根っこの深さであったり、リンパ節にもがんが拡がっていたのかいなかったのかだったり、他の臓器へ移ったりしているのかしていないのか、などで決まります。
例えば、ステージⅢの大腸がんで手術をうけた場合、どんな名医に手術してもらっても、概ね30パーセント程度の確率でがんが再発してきてしまうことが、長年の経験から判明しています。
この30パーセントの再発をなくそう、少なくしようという努力がなされてきました。
手術でがんを大きく取ってくれば再発率はさがるのか?
残念ながら答えは「いいえ」でした。
手術方法の変更でがんの再発率を今以上に低下させることは今のところ難しいと考えられています。
放射線治療はどうだろうか?
抗がん剤治療ならどうか?
など、様々な試みがなされてきて、現在最も効果的に再発率を低下させる方法が、抗がん剤治療なのです。
とはいえ、手術後に抗がん剤をすれば、再発率をゼロにできるわけでもないのです。
再発予防効果はがんの種類にもよりますが、ステージⅢ大腸がんにおいては、30パーセントの再発率を、20パーセント程度まで減少させる効果が期待されています。
30-20=10パーセントの方が、術後に抗がん剤治療を受けたことで、再発を防げたということになります。
つまり、手術後に抗がん剤治療を受けたことでがんの再発が防げた人は全体の10%。のこりの90%の人は抗がん剤治療を受ける受けないに関わらず結果は変わらない(再発しない人はしない、する人はする)ということです。


抗がん剤には副作用がありますから、できれば受けたくないと誰もが思います。
抗がん剤治療を受ける前に、誰が再発して誰が再発しないのかが予測できればいいのですが、まだそこまではわかっておりません(今後がん研究が進めばわかる日が来ると考えられていますが、現時点ではまだできません)。
元々再発率が低い(低いがゼロではない)早期がんの場合は、術後補助化学療法の効果が実感できるほどの有効性の差がないため、基本的には行わず経過観察が選択されます。
大腸がんの場合は、ステージ1-2は基本的に手術後に抗がん剤治療は不要とされており、ステージ3は術後に抗がん剤治療を行うことが推奨されています(補足:ステージ2の一部は再発率が高い事が知られており、術後補助化学療法が勧められることがあります)。
胃がんの場合は、ステージ2-3の方に手術後の抗がん剤治療を行うことが推奨されています。


あれ?ステージって「4」まであるんじゃなかったっけ?
じゃあ、「4」だった場合はどうなの?
ステージ4だった場合、手術後に抗がん剤治療を行うことで再発率が低下するかどうかのはっきりとした証拠はまだございません。
なぜ証拠がないかというと、手術前にステージ4と判断された場合には、手術以外の治療方法(例えば抗がん剤治療など)が行われることが多いため、証拠を固めるほどの症例数を集められないからです。
とはいえ、基本的にステージが上がれば上がるほど、再発率も高くなると考えられますので、ステージ3より、ステージ4の方が再発率は高くなる事が予想されます。
再発率が高いのであれば、抗がん剤治療をやった方がいいんじゃない?とは考えられていますが、どんな抗がん剤が適切なのか?(ステージ3と同じでいいのか?もっと強い抗がん剤治療が必要なのか?)、治療期間はどのくらいにしたら良いのか?(ステージ3と同じで良いのか?もっと長くした方が良いのか?)など、不明な点が多くあるため、施設ごと・担当医ごとに意見が異なる可能性があるのです。
ステージ4だった場合には、決まった答えがないので個別に相談した上で、治療方針を決定していくことになります。

少し話が逸れましたが、
現在のがん治療においては、手術だけ、放射線治療だけ、抗がん剤だけというような、●●だけという治療方法は選択肢を著しく狭め、治療の効果も限定してしまうことになりかねません。
そのような意味で、例えば「ステージ3の大腸がん」であれば、手術+術後の抗がん剤治療が現時点で最も有効な治療方法であり、手術と抗がん剤治療を別々に考えるのではなく、一セットの治療と捉えた方が受け入れやすいかもしれませんね。
また、抗がん剤治療以外にも再発率を下げる方法として、適度な運動、食生活の改善、ストレスの軽減なども一緒に行っていけるとより効果的です。
折角頑張って手術を受けたのですから、がんの再発予防にもう一踏ん張りしてみませんか?

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