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がんと『人生会議』 その4

人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)』って、実際にはどうやるの?
についてお話ししています。
STEP2までお話しさせていただきましたので、今回はSTEP3からになります。

※「予後」「余命」に関する記述を含んでいます※

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▼人生会議の大まかな流れ
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『人生会議』は、次の5つのSTEPで行っていきます。

STEP1:大切にしていることを考える
STEP2:代理人を選ぶ
STEP3:質問する、調べる
STEP4:話し合う
STEP5:書き留めておく

「完璧主義」は手放して、納得度が60%以上なら上出来というくらいで進めていきましょう。
時と場合に応じて、何度も繰り返して考えていくことも大切です。
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▼STEP 3:質問する、調べる
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これまでのSTEPで、「万が一の時、どうしたい?」について、自分自身で考え、また家族(代理人)と相談してきました。
そのようなプロセスの中で、「自分ってこんな風に考えていたんだ!」とか、「たしかに、そういう考えもあるよね!」とか、たくさんの気づきがあったのではないでしょうか。
それだけでも、「人生会議」をやってみた甲斐があったのではないかと思いますが、折角ですので、残りのSTEPを進めていきましょう!
一方で、「自分たちの中には答えがない」や「どう考えたら良いかわからない」問題もいくつか出てきたのではないでしょうか?
そこでSTEP3では、それらの問題に関して回答を得るために、担当医に質問したり、調べてみたりしましょうとしています。

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▼「何を」質問する?調べる?
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「担当医へ何を質問する?」と聞かれた時、おそらく大多数の方が真っ先に思い浮かべる質問は「自分はあとどれくらい生きられるのか?」ではないかと思います。
しかし、こと「人生会議」においては、「いつ死ぬのか?」よりも「どのように死ぬのか?」の方が重要です。
なぜなら、「人生会議」の目的は、「万が一の時、自分で意志表示できなかったらどうする?」を考えておくことです。
予想された死期とは別に何かトラブルが生じた場合への備えの意味合いが大きいからです。
ですので「いつ?」を質問してもいいのですが、是非この機会に「どのように?」を質問してみてください。
「そうはいっても、実際に何を質問すればいいのかわかりません」という方も多そうですので、以下に例をいくつか挙げておきます。
全部聞いていると、途中で担当医から「時間がないので、また後日」とか言われてしまうかもしれませんので、何回かにわけて聴くか、メモのようなものを持参して、次回の外来時にでも回答をもらうなどの工夫をしてもいいでしょう。

■質問例
・通常の経過だとどのような経過をとる?
・予期せぬことが起こるとしたら、どんなことが起こりそう?
・もしそれが起こった場合、どういう状態になる?
・寝たきりになってしまうのか?
・痛みはあるのか?
・それはどのくらいの期間か?
・どのような治療の選択肢があるのか?
・それらの治療によるメリットとデメリットは何か?
・過ごす場所の選択肢はどういう所があるのか?

ご自身の関心事はもしかしたら別の所にあるかもしれませんが、今回は「人生会議」としての質問であり、かつ質問する相手は担当医ですから、やはり「医学的」な内容を中心に質問するのが良いと思います。

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▼抗がん剤治療中の場合
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進行がんで抗がん剤治療中の方を例にとって、もう少し詳しくみていきましょう。
■通常の経過だとどのような経過をとる?
抗がん剤治療中は、がんによる症状というよりは、抗がん剤の副作用のために体調を崩すことの方が多いです。うまく副作用の調整ができれば、それなりに安定して経過できます。そして、これ以上抗がん剤治療の効果が期待できなくなり終了した後は、副作用が抜けることでかえって体調が良くなる方が多いですが、その後徐々に「がん」による症状が強くなってくるという経過が一般的です。

■予期せぬことが起こるとしたら、どんなことが起こりそう?
がんの種類や状態によって様々なことが想定されますが、「オンコロジックエマージェンシー」と呼ばれるいくつかの病態があり、がん治療中ではそのいずれかが起こることが多いです(「オンコロジックエマージェンシー」についてはまたどこか別の機会におはなしさせてください)。
どのようなことが起こるにせよ、予期せぬことが起こってしまうと、最悪命にかかわることもありますし、そこまでではなくても大きく身体に負担がかかり、その後抗がん剤治療を再開することが難しくなってしまう場合が多々あります。
つまり、抗がん剤治療がうまくいけば数年は大丈夫でしょうと言われていた方でも、ある日突然「予期せぬ事態」が起こってしまうと、「あと数年は大丈夫」な状態から、「明日をも知れぬ」状況になってしまったりしてしまうことが十分想定されるわけです。

■どのくらいの期間か?
「余命3ヶ月と言われたが、何年も元気」とか、「5年生存率●%」など、インターネット検索したり、誰かから聞いたりして、何となく「『進行がん』でも数年くらいは大丈夫」みたいな感覚を持たれているがん患者さんはたくさんいらっしゃいます。現に何年も元気にがん治療を受けている方はたくさんいらっしゃいますが、それはがん治療(抗がん剤治療)の効果のおかげです。「がん」は進行性の病気ですので、がん治療をせずに放置すれば、ほどなく「死」に至ります。このことは「がん放置療法」を推奨していた故某先生も認めていることです。そして、多くの「進行がん」は、がん治療を受けずに自然の経過にまかせていると3ヶ月から半年程度で「死」に至るとされています。
もし「予期せぬ事態」に見舞われ、命まではとられなかったにしても、その後抗がん剤治療の再開が難しいとなってしまった場合には、残されている時間はそのくらいであるということになります。その期間をどこでどのように過ごしたいのか?については、その人の価値観が大きく関わる部分だと思いますので、「自分の考え」を決めて、共有しておいた方がよいと思います。

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▼まとめ
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人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)を、具体的にどう行っていけばいいのか?
5つのSTEPのうちの3つ目までお話させていただきました。。
どうしても「死」に関する話題が避けられないので、ただでさえ重い腰がドンドン重くなってしまいそうですが、残り2つのSTEPに関しても順次お届けしていきますので、是非ともお付き合い願えればと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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