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がんと『人生会議』 その6

人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)』って、実際にはどうやるの?
についてお話ししています。
今回はいよいよ最終のSTEP5についてお話ししていきたいと思います。

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▼人生会議の大まかな流れ
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『人生会議』は、次の5つのSTEPで行っていきます。

STEP1:大切にしていることを考える
STEP2:代理人を選ぶ
STEP3:質問する、調べる
STEP4:話し合う
STEP5:書き留めておく ←今回はココ!

「完璧主義」は手放して、納得度が60%以上なら上出来というくらいで進めていきましょう。
時と場合に応じて、何度かこれらを繰り返して考えていくことも大切です。
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▼STEP 5:書き留めておく
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これまで自分で考え、家族と相談し、担当医に質問したりなどして、かなり色々なことが判明してきました。
都度とったメモも結構沢山になったのではないでしょうか?
「メモはほとんどないぞ!」という方は、今後少しはメモをとるようにした方が良いかもしれませんね。
僕は「メモ」はなるべくとろう派です。
しかも、すぐに捨てずに少しとっておきましょう派です。
それはなぜか?
これから行う作業は「情報の取捨選択」が必要だからです。
STEP1~4の過程を経ることで、色々な人からの情報が集まり、それらが乱れ飛んでいる状況です。
自分に必要な情報も沢山あるでしょうけど、自分には当てはまらないものも含まれているはずです。
また、ある時点では不要と思った情報でも、その後色々な話しを聴いていくうちに、やっぱり自分に必要かもしれないと思い直す事もあるでしょう。
メモを残しておけば、情報がたまったところで取捨選択できますが、メモをしていなかった場合、特にその時点で自分には不要だと思った情報ほど記憶にも残らない傾向にありますから、忘れてしまっていることでしょう。
いざ、「まとめて一冊のノートに書き留めておこう!」とした場合、折角途中で様々な情報を入手したのに、多くを忘れてしまい、自分の記憶に残っている、特に印象が強かった厳選された情報をただ単に書くだけになってしまいます。
もちろんそれでも悪くはないのですが、「もったいない」と思います。
「書き留める」イコール「自分の人生・価値観を文字にする」作業だと考えます。
何十年と生きてきて、色々なことを経験し、その上で確立した「価値観」を短い言葉で表すのは到底不可能でしょう。
しかも結構相反するものがあったりします。
例えば僕であれば、「苦しい治療はできるだけ避けたい。安楽に過ごしたい。」という気持ちもありますが、「家族のためにある程度つらい治療も受ける時は受ける」という考えを持っています。
また、「家族が希望する治療は多少つらくても受ける」と考えていますが、「医学的に正しくない治療は、家族がどんなに希望しても受けない」とも考えています。
結局はその状況によるということになってしまうかもしれませんが、そういう矛盾を含んでいるのが「人間だもの」かなと。
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▼何を書けばいい?
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自分のノートですから、基本的には何でもいいです。
順番も自分の好きなようでいいでしょう。
前回話し合っておくと良いですよとした項目
・希望する医療やケアについて
・余命などについて、どこまで知りたいか
・葬儀やお墓について
・財産の処分方法について
に関しては、書いておくと後で家族が助かるでしょう。
書くことに漏れがあったら困るという方は、「エンディングノート(終活ノート)」というものが売っておりますので、それを活用されるのも一考です。
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▼イメージとして心に留めませんか?
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僕のオススメは、
自分の人生が閉じる時にどこで、どんな人たちに見守られながら迎えたいかを
文字にするだけではなく、下手くそでも良いので「絵」にしてほしいです。
ネットなどで見つけた写真やイラスト、雑誌の切り抜きなどで、自分のイメージに近いものを作成することも悪くはないのですが、自分で描くことでイメージ通りのものに近くなります。
そうして「絵」にしておくと、言葉だけで書いたものに比べて記憶に残りやすいですし、自分で見直した時でも、「作成した時の気持ち」を思い出しやすくなります。
この「その時の気持ち」は結構重要でして、もし今後気持ちが変化して、見直そう・考え直そうとした時、「あの時自分はこう考えていたのだ」ということがすぐにわかれば、「今の気持ちとここが違うから、ここの部分だけ修正すれば良いか」とか「考え直そうと思ったけど、根本の部分は変わっておらず、別に修正が必要ない」となるかもしれません。
見直す・考え直すは是非ことあるごとに行っていただきたいのですが、「また全部最初からやるのは面倒だなぁ」ってなってしまうと、なかなか手がつかない、先延ばしにしてしまいがちになりますので、そのハードルは下げておくにこしたことはありませんよね。
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▼「絵」にしてみると・・・
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実際に自分で描いてみると色々なことがわかります。
例えば、ベッドで横になっている自分を囲むように家族が見守っている絵を描いたとします。全員を同じ場所に描けないので、ある人は自分の真横、またある人は自分の足の方など、それぞれの人に距離感があったりします。
できた絵について、「なぜこの人はこの位置なのですか?」と質問すると、ほとんどの人が「描いている時には意識してなかった」と答えます。
しかし、実際には最後までそばにいてほしい人はより自分の近くに描かれますし、子供であっても何となく距離感がある人はやはり遠目に描かれる傾向があるようです。人物以外でも、何の気なしに書いた花瓶の花や写真立て。どんな花や誰が写っている写真が良いのか?そしてそれはなぜか?を考えることで、面白いことがわかったりします。
また是非、「絵」には色をつけてもらいたいのですが、「なぜこの部分をこの色にしたのか?」などを考えてみると、「自分って実はこんなことを考えていたのかも?」って気がついたりします。
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▼書き終わったら
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例え家族だとしても「見られるのは恥ずかしい」内容があったりしますので、隠し場所に困るという方が結構います。
とはいえ、あまり難しいところに隠してしまうと、いざという時に家族が発見できず、折角作成したのにそれが反映されない結果になってしまいます。
「自分しか暗証番号を知らない金庫」なんかは最たるものでしょう。
そう考えるといよいよどこに保管するか?難しいですね。
保管場所をどこにするか?
誰に伝えるか? なども楽しみながら決めてみてください。
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▼まとめ
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人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)を、具体的にどう行っていけばいいのか?
5つのSTEPにわけてお話ししてきました。
「人生会議」は、「死」のためではなく、より良く生きるため、死ぬまでの時間をより有意義にするためのものです。
是非ともこの5つのSTEPを、まずは一通り実践してみてください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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