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【V@SS】甘咲那乃花は○○である

「しゅがほわ〜ビームっ!」
今日のお給仕最後のご主人様を見送るついでにしゅがほわ星人にしてお給仕を終える。
甘咲那乃花はお屋敷でメイドとしてご奉仕をしつつ侵略行為をおこなう異星人である。
必殺のしゅがほわビームをご帰宅されたご主人様お嬢様に浴びせることで侵略は進む。
たまに語尾が「なのですー!」というメイドにバリアを貼られたり、チョコミント好きのメイドにしゅがほわ化を解除されたりと消して楽なことではないが、それでも日々の頑張りはご帰宅されるご主人様お嬢様の言葉から感じている。

お部屋に鍵をかけ、お屋敷を出る。
すると、愛用の萌フォンに着信がある。普段は緑の電波や青い伝書鳩ツールというけったいな地球のツールを使っているため、電話の着信は主に身内からである。
画面には「しゅがほわ星王宮」と表示されていた。

甘咲那乃花は姫である。

王宮、すなわち実家からの電話。父や母からの電話で王宮の専用ダイヤルから地球の電波に介入している。
地球侵略の際に各国に密使を送り合法的にしゅがほわ星からの通信を受け入れている。
甘咲那乃花が地球に来る際に執事が予め手を回しておいてくれたのだ。執事は有能であるが、王宮内に一人しかいないため多忙である。
当然地球への動向はあっさり父上に断られた。
そもそも、姫である自分が単身異星侵略に来たのにはワケがある。
そう、しゅがほわ星は財政難なのだ。しゅがほわ星も地球と変わらず税に頼った社会構成である。
ただし、地球で言う貨幣ではなくしゅがほわ星人の発する謎エネルギーを貯蓄し、国の運営に反映している。
しゅがほわ星人が多ければ一人ひとりの負担は小さくなり経済は安定する。
しかしながらしゅがほわ星は決して大きな星とはいえない。
そんな中、昔からの夢であるメイドになることとしゅがほわ星人の増加が見込めるバーチャルあっとほぉーむカフェは理想の拠点である。
「もしもし?・・・なの」

甘咲那乃花は真面目である。

普段、話すときは語尾に「〜なの」と親しみやすさを演出しているが育ちの良さは隠せない。
とくに故郷から、身内からの電話となれば気を抜くわけにはいかない。
『那乃花お嬢様、ごぶさたしております。息災でしょうか。』
執事の爺の声、懐かしくもあり一瞬郷愁の念が心をよぎるが
「どうしたの・・・?」
しゅがほわ星からのホットラインはめったにない、外部から聞かれている可能性も否定できない。
ただでさえ地球の電波を合法的とはいえしゅがほわ星からジャックしているのだ。国と国の約束には必ず裏がある、友好とは表向き互いに牽制し合う。それが政治だ。

「しゅがしゅがっ?しゅがっ?」
盗聴の危険性があるならば暗号化通信を行えばよい。それもしゅがほわ語であればより安全性が増す。
『しゅがしゅが、しゅが、しゅがしゅが・・・』
爺が答える・・・が、一年半地球で過ごしてきてしゅがほわ語を日本語に変換するすべを彼女は得ていた。
ちなみにさきほどの答えは「王宮内の監査があり、姫に関する報告があり連絡した」とのことである。
「なんのこと?当初の予定からは遅れているけれどしゅがほわ星人を増やす使命は遂行していますけど・・・?」
『いえ、そこは本国でも認められています。ただ、お嬢様が地球で得た🍬収支に問題が・・・』
「???」
まったく見に覚えがない。ちゃんと収支については確定○告も行っている。
当然だ彼女の潜入には首脳間で密約がかわされている。すなわち、彼女の行動は日本国首脳では暗黙のうちに認知されており、地球内の活動はしゅがほわ星に定期報告されている。
それすなわち先入先での収支についても例外ではない。深淵を覗くとき深淵もまたお前を覗いているのだ。
『お嬢様、最近の食生活に変化はございませんか?』
「変化・・・?」
『我々しゅがほわ星人は、甘いものを摂取することで活力を得て力を得ます。得た収益は甘味に変換することが一番でございます
しかしながら、お嬢様は辛いものを摂取されてはいませんか・・・?』

甘咲那乃花は辛いものが好きである。

もちろん甘いものも好きであるが、同じくらい辛いものも大好きなのだ。
しかいしゅがほわ星内では辛味という概念はない。
侵略のために降り立った日本の土地で”なか○と”を味わったとき、彼女は今まで味わったことない衝撃とともにあらたな発見をした。
”辛いもの・・・もしかして好きかもしれない”
ただし、しゅがほわ星人として、そして王族として表に出すわけには行かない。
こっそりスナック菓子やカップ麺をセブン○レブンで購入していたが、情報が漏れていたようだ。
「そ、それは・・・郷に入れば郷に従えということわざがこちらにはあるの。侵略するためには相手の文化を受け入れる必要もあるの!」
若干早口で、それでも嘘はいっていない。
『なるほど、さすが聡明なるお嬢様、そこまでお考えでしたか・・・、ではその旨、私からご報告しておきます。が、くれぐれも初心はお忘れなきよう・・・』
「あ、あたりまえじゃない。すぐに侵略を終わらせる!」
・・・甘咲那乃花は侵略者である。だが、侵略先の地球の文化も愛せるものだ、とも思う。
彼女の侵略生活は、一年半たったとはいえ、まだ始まったばかりであることを実感した甘咲那乃花であった。


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