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SynthesizerV表現調整テクニック講座 表現調整編 #01 表現調整の目的と基礎
こんにちは。SynthV音屋の十竜です。
この講座はなんぞや、という方はまずは導入編を読むことをおすすめします。
SynthesizerV表現調整テクニック講座 導入編
※本記事は日本語を使用しています。英語・中国語でも応用可能ですが、解釈が大き変わる場合もあるのでご注意ください
表現調整編 #01 表現調整の目的と基礎
曲を聴いたときに、歌が上手い、感情がこもっている、また逆に素朴、無機質といったような様々な感覚を得られます。しかしこれらはピッチ変化だけで表現しきれるものではなく、声の張り方、息使いなど、様々な要素が絡み合うことで実現されます。
表現調整編では、こういったノート・ピッチ以外の要素で歌声にさらなる表現を加えるテクニックを解説します。
表現に関するパラメータ
ピアノロール下部にはパラメータウインドウがあり、ここに表現調整に関連するものが含まれています。ここには「テンション」「ブレス」「有声/無声音」「ジェンダー」「トーンシフト」というパラメータが用意されており、これらを駆使して歌唱にさらなる表現付けを行います。
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もちろん、これら全てを常時使用するわけではありません。一瞬の効果を与えるためにパラメータを編集するということも多々あります。
また、これらのパラメータはボーカルスタイル等を設定する歌声パネルにもあります。まずはベースとなる歌声を調整してからノート調整、ピッチ調整、表現調整をしていきます。
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各パラメータの効果
先程紹介したパラメータが歌声にどんな影響を与えるのかを見ていきましょう。
今回は実際に聞いてみないわかりにくいので動画の方とあわせて読み進めてください。
テンション
テンションで与えられる効果は「声の張り方」で、その歌声が力強い声なのか、それとも落ち着いた声なのかをコントロールします。通常、楽曲中で声の張りは逐一変化するので、楽曲全体を通して調整するパラメータとなります。
ブレス
ブレスでは「息の量」をコントロールします。息の成分の量、といった方がわかりやすいかもしれません。歌声に含まれる息の量を変えることで、より強く乾いた声、しっとりと囁くような声等の調整を行います。全体を通して調整する他、ノートの両端でインパクトを強める、だんだん声色を弱くする、といった表現にも利用します。
有声/無声音
声帯を振動させて発音するか、わかりやすく言うなら喉を使って発音するかを調整します。デフォルトは1であり、下げた時の効果としてはどんどん弱々しく、かすれたような声に変化します。
全体を通して使うものではないですが、ノート開始の発音にさらに深みを持たせたり、ノートの終わりで声を抜くといった表現で活用します。
ジェンダー
大元の声質を変化させます。女声に振ればどんどん幼く際立った声になり、男声に振れば野太い声になります。通常はボーカルスタイルで楽曲に合わせて設定しますが、局所的な強調や特殊な表現をする場合にオートメーションを書くことがあります。
トーンシフト
同じ高さの歌声でも明るさが違う、なんとなく高さが違う、というような感覚があるかと思いますが、トーンシフトはそういった部分を調整します。
声の強弱や明暗にさらに深みをもたせる、というような使い方が考えられます。
調整の順番
これらの効果を理解したところで、どの順番で調整すべきかという疑問は残ります。
あくまで私の手順ですが、次のような順番で行います。
ボーカルスタイル調整
ノート調整・ピッチ調整
テンション
ブレス
有声/無声化
その他表現パラメータ
最初はボーカルスタイルで全体を通しての歌声の基準を決め、ノート調整・ピッチ調整を行います。その後、テンションで声の減り張り、ブレスで息使い、有声/無声化で細かい調整をしています。
表現調整でどこまで変わるか
ここまで表現調整は何を目的にしていて、そのパラメータがどんな効果があるのかを解説しました。しかし、これらを駆使すると最終的にどんな結果になるかは想像しにくいかもしれません。
次の動画では表現調整の手順を踏んだ場合の結果を確認できます。
…と言っても極端な振り方はそう多くやらないので、わかりにくい部分はあるかもしれません。
表現調整編で中心に扱うパラメータ
最後に表現調整編で中心として解説するパラメータについてお話しします。
多くのパラメータがあるからといって、これら全てを恒常的に使用するわけではありません。使用頻度の高いものから一瞬の表現に用いたりと様々です。
そのため、表現調整編では最も使用される「テンション」「ブレス」、次点で頻度の高い「有声/無声化」から始め、その後にそれ以外のパラメータも含めた細かなテクニックに触れていこうと思います。