来春笑う生徒像

今のところ,毎日投稿が続けられていて,調子にのっているやまもとです。本日は現役生/既卒生を問わず,私の今までの指導経験から「受験に成功する生徒像」について綴ってみたいと思います。逆に「失敗する生徒像」は私の大先輩の守屋佑真先生(@yumamoriya)のTwitterの投稿「ありがち受験生図鑑」(2020.04.12時点でNo. 48まで更新)を参考にしてください。これに複数当てはまる人はヤバいです。

●一定レベルの知識が貯まるまでは「気合と根性」,でも難関大に行くにはソレだけではダメ

 英語は語学である以上,一定量の語彙や最低限の文法知識が必要であることはいうまでもありません。そして,誤解のないように言っておきたいのですが,「このレベルの知識獲得をラクして切り抜ける方法」など存在しません。(そういう怪しい情報を撒き散らす同業者は存在しますが,能力のない人かみなさんを私利のために騙そうとする存在なので注意してください)。世の中にうまい話なんて存在しないのです。例えば語彙ならば共通テストに頻出のレベルの語彙(ざっくり1000語程度)を知らなくて英文が読めないのは当然です。ただし,その一定量が蓄積された後には,暗記量を大幅に減らす方法は存在します。それは後ほど紹介します。
 ただ,知識が増えるばかりで頭でっかちになるのも危険。旧帝大や一橋,神大などのいわゆる「難関大」を目指す受験生には知識そのものよりも,設問を見て,必要な知識にアクセスする「観察力」(私はこの能力を「見えないものを見ようとするチカラ」と呼んでいます)が要求されています。その際たる大学が東大であり,東大の問題というのは解くとすごく難しく感じるのですが,解説を聞くと「なんだそんなことかよ」と聞かれている知識事態は拍子抜けするような内容だということがよくあります。これは東大が「きちんと問題を読んでいるか」,「目の前の問題と自分の知識がつながらないときにどう方針をたてて対処していくか」の能力を測っているからにほかなりません。他の難関大も多かれ少なかれこういう側面があります。この能力は知識量と比例して伸びるわけではなく,受験生活初期からいい思考回路を持っている人もいれば,入試直前にも「見えない」人もいます。この能力は「意識を働かせて問題を見続ける」しかないのです。しかし,多くの受験生は「英語は暗記勝負」と思い込んでいる。この意識を変えられるかどうかが中級レベルに上がれるかどうかのポイントです。

●抽象化を意識する

英語の暗記モノが苦手な人が暗記量を減らすときに意識すべきこと,それは「抽象」と「具体」を使い分けて暗記をするということ。
テキストに載っている1つ1つの「具体=断片の知識」を丸暗記するのには限界があります。だから,「一見バラバラに見えるものの共通点を見出し,同じ扱いができるもの」を見つける=「抽象化」をすることを意識して暗記に取り組むとうまくいきますよ。
例えば,品詞と文型なんかはその最たるもの。「名詞」「形容詞」「副詞」という同じ仕事をする言葉をグルーピングし,動詞を後ろにどのようなカタチを取るかによってグルーピングする。そうすると同じ扱いができるといった感じです。
しかし,「抽象化」が万能なわけではありません。いわゆる「丸暗記」のほうが得をする場面も当然あります。使い分けのイメージは以下の通り。
【日常的に使う知識】 抽象レベル < 具体レベル
【使う頻度が低い知識/暗記量が多すぎる知識】 抽象レベル > 具体レベル
たとえば,算数の「九九」を頭を使って計算をしている日本人はいないはずです。非常によく使う1ケタ✕1ケタの掛け算は覚えたほうが得策なので,小2で徹底的に叩き込まれるのです。英語においても基本動詞の語法や各文型の代表動詞などは暗記してしまったほうが早いです。このように抽象的理解と丸暗記をうまく使い分けることがコツだったりします。

●素直な生徒(言われたことを何も変えずにやる)

 これも毎年思うのですが,各講師が授業で「こういうことやるといいよ」的なことを何も疑わず,言われたとおりにやる生徒は伸びます。たとえば「夏までにこのレベルの生徒はこの問題集をこのペースでやってね」と授業内で話したときに,翌週にその問題集を用意して始めている生徒の比率は大受の100人近いコマでも2ケタいるかどうか。こういうところで「微差」がついてきます。あとは勝手に期日変えるとか,やり方変えるとか。ある程度実力がついてきて,自分で先を予見できる能力がついてから,アレンジや修正を加えることは重要なスキルですが,学習初期は毎年何百~何千人の生徒を送り出して成功事例/失敗事例を見てきている講師を信じてほしいな,とも思います。実際,言われたことをちゃんとやる生徒は結果出てるよ。

●「メンター」となる講師を見つける

 私は開講時に毎年生徒に言っていることがあります。それは『(河合塾の大学受験科の場合)私を含めて最低4人の先生が君たちの担当をするので,「自分はこの講師に将来を預けられる」と思える先生を見つけて,その先生を信じてついていきなさい。それが私でなくてもいいから』です。予備校ですから,先生もたくさんいるし,生徒もたくさんいます。その中でどうしても合う,合わないの「相性」はでてきます。それでも4人いる担当講師のなかから1人,信じてついていける講師を見つけている生徒は強い。講師の立場としても,自分のことを頼って来てくれる生徒がいるというのは嬉しいものですし,指導に熱が入るものです。
私の大好きなアーティストがライブの最後のMCで「(アーティストとファンは)魔法の掛け合い」だということをよく言います。アーティストが輝けるのはファンの応援があるからで,これがなければアーティストは存在意義がない。逆に自分が大好きなアーティストを見てファンは元気をもらって変える,という趣旨です。私は予備校の講師と生徒の関係もこういう側面があると思っています。われわれはもちろん100%の準備を行って講義を行うわけですが,やっぱり毎回ちゃんと予習をして,真剣な眼差しで受講し,ちゃんと復習してるのが感じられるクラスには「もっとしてあげられることはないか」と考えるようになるものです。われわれの限界値を突破させる原動力は生徒のみなさんにほかなりません。

●「できる」のハードルを下げない

 最後に一番伝えたいことになるのですが,受験でうまく行かない生徒の特徴の1つに「できる」の認識のレベルが低いことが挙げられます。
例えば語彙。私は全受験生に高2の終わり(大受生は悪くとも5月連休明け)までに共通テストレベルの語彙をちゃんと習得するように言います。そうすると,ちょっと勉強した風の生徒が講師室に来るんです。「◯◯の単語帳3周は終わってるんですけど〜」って。私は性格が悪いので,「そうなんだ~,じゃあ確認してあげよう」って言って,(プライドをぶっ壊したいので)あえて一番最初の章から何個か語をピックアップして,見出し語以外の意味,品詞変化,同義語,同義熟語,対義語,対義熟語,類義表現,結びつく前置詞などを聞くことにしています。そうなると8割~9割の生徒は半泣きになるか,ふてくされます(笑)。「このレベルまでやってからもっかい相談おいで」というパターンがほとんどです。そう殆どの生徒は「ちゃんと」終わってないのです。だって長文で本文と選択肢が同じ語で出てくるなんて稀じゃん!逆説の後ろに空所でてきたらどうすんのよ!って思うんだけど,そこまで考えてない人が大半。その意識を変えることがあなたを合格に1歩前進させます。
受験学年の生徒は「できる」と言えるハードルを自分の考えてる2倍は高く設定すべき。後半伸び悩む受験生の多くはできる認定をするハードルが低いです。結果,9月以降伸びにブレーキがかかることが多い。このことを意識するだけでも授業を受けるときのスタンスが変わり、成果が変わるはず。

長くなりましたが,すべて重要なことですので,意識してみてね!

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