KOKIA「I believe~海の底から~」
KOKIAの「I believe~海の底から~」という曲を聴いて思ったこと。
I believe ~海の底から~ - YouTube
この楽曲は、「涙」「苦しんでる」「堕ちていっても」「憂い」「失って」などの苦しみや悲哀を連想させるネガティブな言葉が多く使われている一方で、「心地よさ」「昇ってゆく」「花を咲かせてみせる」「よかったって言える」など希望のあるポジティブな言葉も使われており、生きる苦しみと希望をテーマにしていると思われます。
生きることは苦しみも多いものですが、希望を持つことでなんとか生きていけるということだったり、あるいは苦しみと希望は表裏一体で生きることとはそれらと共にあるということでしょうか。
こうしたテーマは様々な文芸作品によくあると思いますが、楽曲の最後の部分の歌詞(以下)に自然主義哲学や生物学を思わせる広がりを感じました。
全てはこの海で産まれていったの
いつの日か還って来るその日まで
believe yourself
まずは、「全てはこの海で産まれていったの」という部分を考えてみたいとます。
「全て」とは、この曲で歌われていた生きる苦しみや希望、それを感じる人間を指すと思います。
「この海で産まれていったの」という部分は、生物の発生を示していると考えられます。生物の起源は未だ明確にはされていませんが、有力な学説の一つとして、海底の熱水噴出孔で発生した説(1)があります。
つまり、「全てはこの海で産まれていったの」という歌詞は、人間が生きて苦しみや希望を感じる根源に、生物の発生を位置づけているということだと考えます。
生物は、化学進化(2)という有機酸・アミノ酸・塩基・糖などの単純な分子からタンパク質や核酸などの複雑な高分子化合物の生成という過程を経て誕生した考えられています。
言うまでもなく単なる分子(物質)は生きておらず苦しみや希望を感じません。しかし、これらの分子が組織化され生物になり、人間にまで進化したことで複雑な感情を持ったり、こういった楽曲のような文化・芸術や社会を生み出すにいたりました。
そして、「いつの日か還って来るその日までbelieve yourself」という部分は、死ぬことで再び単なる分子(物質)となり海を含む環境へ還っていくということと、死ぬ(物質になる)までは自分を信じて生きよということを意味していると思います。
分子→生物発生→人間へ進化→感情や文化・社会の発生、という自然と文化の連続性と、社会や芸術など高度に文化を発展させた人間のような複雑な生物も分子でできており死ねば単なる物質として環境中に戻るという循環性を感じさせる唯物論的で素敵な楽曲だと思いました。
参考文献
生命の起源. 旺文社生物事典 (2011).
化学進化. 旺文社生物事典 (2011).