あたし、生きていたいんだな
少しでも心が不安定な方、悲しみに引きずられてしまいそうな方、あちら側へ引きずり込まれそうだけどどうにか踏ん張っている方へはおすすめできません。そんなあなたにはふわふわの毛布を。あとはあったかいココアも。幸せになろうね。
ここ数年、漠然とした消えてしまいたさがあった。いつからこうなったのかはわからない。波はあれどずっと消えてしまいたい感情が水面下にあって、時々表に出てきたり、見えなくなったりを繰り返していた。ここ数か月、仕事に辛さを感じるようになってからは、何もない、真っ白な無へ行きたかった。とにかく真っ暗で苦しい現状から逃げ出したかった。最悪、自分の人生を終わらせればいいと思って、ドアノブに結んだタオルをひっかけたり、職場の更衣室から窓の下を覗いたりして、死が隣にあることに安心感を覚えているような日々だった。
とはいえ、自分では大丈夫だろう、辛いけどまあなんとか乗り切れちゃうだろうくらいには思っていた。よく言われる食欲が落ちたり、睡眠が取れなくなったりというようなことはなかったからだ。胃薬とお友達になったり、すぐに涙が出るせいで職場の腫物にはなっていたけれど。
大丈夫だと思っていたのだが、家族からは限界なんじゃないのとか、仕事辞めても大丈夫だよとか言われた。それでも辞めるとか休職するとか、そんな選択肢は一切なかった。普通だと思っていたのだ。社会人はみんな仕事に行くのが苦痛だけど何とか耐えている。仕事に行くのがつらくて泣いても隠して出勤している。そう信じていた。
友人から、今の状態は普通じゃないよとか、今の仕事だけがすべてじゃないよとか言われて、ようやくこの仕事を続ける以外の選択肢が見えるようになった。
そんなこともあって、数か月ぶりに就活の時にお世話になっていた人に会いに行った。
仕事がつらいことだとか、今後の話をした。
優しさに涙が出そうになった。最近ひどく涙もろいのだ。
話し終えて建物を出ると、ここ最近常に隣にいたはずの消えたさが姿を消していた。またふらっと帰ってくるんだろうけど。
まだ生きていたいんだと思った。ずっと消えてしまいたかったのに。
本当は生きていたかったんだよな。
やりたいことは山ほど残っている。
イチゴのショートケーキを頬張りたいし、旅行にだって行きたいし、気になっている展示を見に行きたいし、好きな読みかけの本を読みたいし、育てている花が咲いたのを見て綺麗だと思いたいし、もう一度会いたい人たちに会いに行きたいし、約束をしている友人と遊びたいし、家族となんてことないような普通の話をして幸せだなって笑っていたい。
結局、出口が欲しいだけだった。真っ暗闇に差し込む光が欲しいだけだった。
花を買った。数か月ぶりに、自分のために花を買った。
明日も私が生きていくための花。
幸せになろうね。私たちきっとそのために生まれてきたんだしさ。