猫を連れたホームレス

「墓 石」

2013年3月13日


「おぅ…おはようさん!なんだ…今日も仕事かい?」

「はい…自営なんで…仕事と休みの境なんて…なくなっちゃいました…」

「…そんなもんかねぇ…桜…綺麗なんだから…花見していきな!」

「…ちょっとビール買ってきますね!」




すっかり仲良くなった新宿中央公園のホームレスのおじさんと…

休日の午前中…お花見をした…

おじさんの隣に座ってる熊のようなホームレスが…

「あんた…よく見かけるな…毎朝…熊野神社にいってるのか…」

声をかけてくれた…

ヤダ!見られてたんだ…嬉しいな…

「はい!もう…5年近く…」

「…このあたりのイベント屋か?」

「……へ?……デザインの仕事してます。雑誌創ったり…本創ったり…」

「……」

ぼんやり…ぎくしゃくする空気…

間合いがとれず…

そこらにちらかしているホームレスたちのつまみに…目をやった…

もし…つまみを勧められたら…

たとえそれが…ゴミ箱からあさってきた残飯であったとしても…

喜んで口にするつもりだった…

でも…彼らは決して…勧めてこない…

ホームレスと僕の間には…

越えられない一線が…確実にある…

「なあ……4月によう…ここの公園の管理が民間に変わるんだ…」

おじさんが…つぶやいた…

「…オレんちも…この公園の中の全てのブルーテントも…強制撤去だ…」

「…え……どうするんですか……」

「………」

おじさんは…

目の前に聳える巨大な墓石のような建物を指差して…

「あの上の方の部屋から…オレたちが…丸見えだから…目障りなんだろ…」

かける言葉がみつからない…

わからない…わからない…

いい人たちなんだよ…

ひっそりと…おとなしく…必死に…

生きているだけなんだよ…

わからない…わからないよ…

弱者は…

どうして…いっそう追いつめられてしまうのですか…



新宿中央公園の桜が…例年見事なのは…

桜の木の下に…

息をひきとったホームレスが…眠っているから…と

聞いたことがある…

夜中にホームレスたちが埋めるんだって…

今年は…

桜が…なんだか薄く…感じた…