ノーリミットテキサスホールデムプレイヤーに贈るポットリミットオマハ事始め
こんにちは、朝でも夜でもヒルマ(@hiruma_poker)です。
このnoteでは、ノーリミットテキサスホールデムポーカー(以下NLH)をプレイしたことがある方向けに、ポットリミットオマハホールデムポーカー(以下PLO)の「事始め」を書いていきます。ある程度基本的なポーカー用語には親しみがあるという前提で書き進めますのでご了承ください。最後に投げ銭用に100円設定していますが全文無料です。
はじめに
NLHもですがPLOも非常におもしろいポーカーなので、広めたい思いが強いです。将来「NLHでスタンダードなプレイが出来るのは当たり前で、PLOや他のミックスゲームも出来るのが格好いいポーカープレイヤー」こんな認識になれば最高です。個人的な思いだけではなく、それが日本のポーカープレイヤーのレベルアップに繋がると本気で思っています。
PLOをはじめるきっかけは2017年頃、ポーカー界隈で「これからキャッシュゲームはPLOの時代が来る」という趣旨をたくさんのプレイヤーがつぶやいていたからです。そこから「早めにPLOに備えればエッジが出るのでは」とPLOに興味を持ち勉強するようになりました。元々NLHもコンティニュエーションベットを打っていれば稼げたと言われる時代もあったそうで、ポーカーの市場というかマクロな動きに取り残されたくないなという気持ちもありました。ビジネスや相場にも似ていますね。
当時、NLHの実力がまだまだでしたし(もちろん現在も)、PLOに目移りしていいのかなと感じましたが、実際にプレイしてみるとおもしろく、のめり込んでしまいました。2018年末には弾丸でマカオのWynnに行き100/200/400HKD PLOに座り、2019年初にはロサンゼルスのCommerceで1週間5/5/10や1/2(/5)に座りました。そして2019年7月にはベトナムで開かれたAPTのPLOトーナメントで優勝することができました。あの時は応援本当にありがとうございました…!
優勝をきっかけに色々なお誘いをいただいたり良い変化があり、心からPLOをやってよかったと思っていますし、このゲームを広めたいなという気持ちが強く、このnoteを書くことにしました。
この記事を読んでいただいている方は、ある一定はPLOに興味があるけれど
1.NLHのプレイ・座学だけでも大変でPLOまで手が回らない
2.自分がPLOに向いてるか分からない
3.PLOのルールが分からない
の3つのハードルの少なくともどれかひとつには当てはまると思っています。そんな方に向けて、僕なりの意見をお伝えし、その心のハードルを少しでも下げることで、NLHのみならずぜひPLOに乗り出してもらいたいです。
PLOのプレイ・座学はNLHに活きるか
1.NLHのプレイ・座学だけでも大変でPLOまで手が回らない
この意見に対して、この字面だけで考えるとYes.としか言いようがない部分があります。しかし、これを言い換えると「時間がなくて、PLOをゼロからはじめるメリットがNLHをプレイ・座学するメリットを上回らない。」ということになるのかなと思っています。
つまり、「PLOのプレイ・座学はNLHに活きる。メリットがある。」ということが言えたらPLOをやってみようかな、という気持ちになるのではないかと考えました。
最近、こんなツイートを見かけました。
※エンペラーさんは海外トーナメント複数回優勝、多聞さんはポーカー専業
エンペラーさん・多聞さんも詳しくはこれ以上言及していませんでしたが、僕も同様に考えているので、僕なりに言語化したいなと思います。
NLHを「相対化」することで「気付き」がある。
一言で言うと、これに尽きると思います。どういうことか説明します。ポーカーには様々な要素がありますが、「NLHとPLO両方をプレイすることにより、ポーカーの要素が相対化され、それぞれの特徴が浮かび上がり、気付きに繋がり要素の理解が深まる。そしてその気付きをNLHに反映していくことでプレイが上手くなる。」のではないか、ということです。
ポーカーにおける大事な要素は何か挙げるために、David Sklanskyの大著"Theory of Poker"の目次(筆者訳)を見てみました。
Chapter 1: Beyond Beginning Poker(初心者のその先)
Chapter 2: Expectation and Hourly Rate(期待値と時給)
Chapter 3: The Fundamental Theorem of Poker(ポーカーの基本定理)
Chapter 4: The Ante Structure(アンティストラクチャー)
Chapter 5: Pot Odds(ポットオッズ)
Chapter 6: Effective Odds(エフェクティブオッズ)
Chapter 7: Implied Odds and Reverse Implied Odds(インプライドオッズとリバースインプライドオッズ)
Chapter 8: The Value of Deception(騙しの価値)
Chapter 9: Win the Big Pots Right Away(今すぐビッグポットを勝ち取れ)
Chapter 10: The Free Card (フリーカード)
Chapter 11: The Semi-Bluff(セミブラフ)
Chapter 12: Defense Against the Semi-Bluff(セミブラフへのディフェンス)
Chapter 13: Raising(レイズ)
Chapter 14: Check-Raising(チェックレイズ)
Chapter 15: Slowplaying(スロープレイ)
Chapter 16: Loose and Tight Play(ルースなプレイとタイトなプレイ)
Chapter 17: Position(ポジション)
Chapter 18: Bluffing(ブラフ)
Chapter 19: Game Theory and Bluffing(ゲーム理論とブラフ)
Chapter 20: Inducing and Stopping Bluffs(相手のブラフの引き出しと抑止)
Chapter 21: Heads-Up On The End(ヘッズアップ)
Chapter 22: Reading Hands(ハンドリーディング)
Chapter 23: The Psychology of Poker(ポーカーの心理学)
Chapter 24: Analysis at the Table(テーブル上での分析)
Chapter 25: Evaluating the Game(ゲームを評価する)
これらの要素に全面的に異論があるプレイヤーはそれほどいないと思うので、これを前提として話を進めます。ほぼすべての章で、NLH・PLO・その他ミックスゲームで比較することができますが、特に太字にした章で相対化するメリットがあるのではないかなと思います。
例えば、オッズに関する章では「ノーリミットとポットリミットの差(ベットサイズへの影響)」というテーマが浮かび上がります。なんとなく、周りに合わせてベットサイズを決めていたプレイヤーも、ポットベットすることはどのような効果を持つのかを知ることで、NLHにおいても、25%ポットベット、ハーフポットベット、ダブルポットベットといったベットサイズの使い分けに活きてくるでしょう。
もうひとつ例を挙げるとすればポジションでしょうか。PLOはハンドを4枚から2枚を使って役を作るので、NLHよりもアンダードッグサイドのアウツが多いです。つまり、フェイバリットサイドとアンダードッグサイドの入れ替わりが激しくなります。するとアウトオブポジション(以下OOP)はインポジション(以下IP)に対してどのような不利が強いられるでしょうか。
こうしたことをプレイ(実践)で感じ取って自分で考えたり、座学で知ることによって、ポーカーにおける大事な要素の理解が深まる。そんな風に感じませんか?
この章では僕が「PLOのプレイ・座学はNLHに活きる。メリットがある。」と言える理由をお伝えしました。
PLOに向いている人
2.自分がPLOに向いてるか分からない
について僕の私見でPLOが向いている人の特徴を4つ書いていきます。
①ブラファー・ベット/レイズ大好きな人
PLOはフォールドエクイティがNLHよりも大きいゲームなので、アグレッシブなプレイが肯定されるシチュエーションが多いです。もちろんチェックやコールが得なアクションの時もありますが、ブラフも多く混ぜてベット・レイズをしているNLHプレイヤーはPLOも向いていると思います。
②ドローハンド・大きい役が好きな人
本質的かと言われるとそうとは言い切れないのですが、ポーカーというゲームの楽しみ方としてこれは全然アリだと思っています。NLHに比べてドローがたくさん付くので、それを引く直前のドキドキや引けた後にコールをもらえるかのドキドキを求めている人にはぜひPLOをやってほしいです。PLOは華やかなポーカーです。
③考えることが多いほうが好きな人・考えることで人より良い判断を下せると思っている人
これはもうなんというか、そういう性分ですよね。ハンドの組み合わせもアウツも何もかもが多いので、考えることが好きな人には向いていると思います。またこれは一面でポーカーの真理というか、ある種ダークサイドのようにも思いますが、情報量や考慮する要素が多く難しいからこそ自分が考えることで人より良い判断を下せると思っている(だから良い結果に繋がる、つまり強い)人は向いています。
④NLHに疲れた人
ネガティブな理由からPLOを勧めるのは気が引けますが、
・NLHでカリカリとハンドレンジ守るのに疲れちゃった人
・NLHのMTT、結局プリフロオールイン勝つかじゃね?ってなっちゃった人
とか色々あると思います。気持ちは痛いほど分かります。
もちろんPLOがこれらの解決になる訳ではないです。しかしPLO MTTはレーキがなく比較的広いハンドレンジで参加することが肯定されやすいですし、オールインになってもエクイティが残りやすく、デッドに突っ込んだら自分のせいと思えるゲームだと思います。
この4つのどれかに当てはまる人はぜひPLOにトライしてほしいなと思います。
PLOのルールと注意点
3.PLOのルールが分からない
について、そのままルール説明していきます。
去年、専業の余語さん監修でPLOルール解説動画が出ているので動画のほうが頭に入るよという方はこちらをご覧になってください。
僕がこれから説明するルールと注意点の内容は2019年夏にイケブクロギルドさんで開催したPLO体験会のために作ったコンテンツをベースにしています。
あらためてNLHプレイヤー向けにルールを整理したのがこちらの画像です。
補足が必要なのは、ベットサイズの点でしょうか。ノーリミットは最低は1bb、最高は自分のスタックサイズまでチップのデノミが許す限りベット・レイズできます。一方でポットリミットはポットサイズまでしかベット・レイズできません。この計算は動画のほうが理解しやすいと思いますが、ここでも記します。
▼ベットの場合
カンタンです。
ポット:100
ベット額:100まで
この時相手が、100のベットにコールすることを考えると、さらに次に出来上がるポットは300(100+100+100)となり、ポットオッズは1:2となります。(オッズ3倍・必要勝率33%)
▼レイズの場合
ちょっと難しいです。
ポット:100
ベット:60
レイズ:
〔出来上がるポット額〕 ※上乗せ上限額
〔元のポット額〕100
+〔相手にベットされている額〕60
+〔相手のベットへの自分のコール額〕60
= 220
レイズ額 =〔相手にベットされている額〕+〔出来上がるポット額〕
= 60 + 220
= 280
です。
この時相手が、差額の220(280-60)をコールすることを考えると、コールした後に出来上がるポットは660(100+280+280)となり、ポットオッズは1:2となります。(オッズ3倍・必要勝率33%)
重要なことは、ポットベット・ポットレイズは相手に33%の必要勝率を課すということです。この辺りは別のnoteで触れられたらなと思います。ちなみにポットベット・ポットレイズする時「ポット」とだけ発声してディーラーの計算を待つと、ディーラーさんはちょっとイラッとするそうです(独自のヒアリング結果)。
ルールと併せ、大きな損失に繋がる注意点を2つお伝えします。
NLHプレイヤーが間違いがちなのが役判定に関わることで、1枚フラッシュ/ストレート/フルハウスがあると思ってプレイしてしまうことです。アウツがないのに、ベット・レイズはまだしもコールをしてしまうとそのハンドは絶対に勝てないので完全に無駄金です。
この例のように、Qのセットのような何か別のことに期待してボードを見てしまうと、バックドアストレート(特にガット)を見逃しがちです。ターンでオープンエンドになったというような発展であれば、アウツを意識できると思います。しかしガットが付いていて引いたことを見逃したままリバーでベストハンドなのにフォールドしてしまったり、ベット・レイズしなかったりするとそれも大きな損失、バリューの取り損ねになります。
この2つはスキルの問題ではなくルールへの対応の問題なので、気を付けていきましょう。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
1.NLHのプレイ・座学だけでも大変でPLOまで手が回らない
2.自分がPLOに向いてるか分からない
3.PLOのルールが分からない
というNLHプレイヤーが感じているであろう3つのハードルを軸にして僕なりの「PLO事始め」をお贈りさせていただきました。
たしかにPLOはNLHに比べ、ライブトーナメントの数もエントリー数も少なく、賞金も大きく膨らむことはあまりないです。キャッシュゲームのテーブルもアジアでは多くないです。
しかしPLOはダイナミックかつ繊細なゲームで、NLHを好きになった人に一度は触れてほしいという気持ちが強いです。やってみて、おもしろくないと感じたらムリにやることはないです。NLHもですが好きじゃないと続かないので。
最近、色んな方がPLOに触れ始めていて「おもしろい」という反応があり、とても嬉しく思っています。
僕が自分の言葉だけで推すより、色んなポーカープレイヤーが言ってたほうが説得力ありますよね。ぜひ皆さんもPLOをプレイしてみてください。たくさんの方と一緒にプレイできたら幸せです。
PLOをどこでやるか
綺麗な感じで締めたかったのですが宣伝になります(やむなし)。
ポーカーギルドページはこちらです。完全に初心者の人にとってはちょっと参加費が高いと思うので、参加費抑えめのトーナメントも開かれます。
この機会にぜひ参加してみてください。
新型の感染症が広まる前は、東京の中野でDDPTさんとPoker Garden(ヒルマ)共催で平日・隔週土曜にPLOのトーナメントを開催していました。こちらも近日再開予定ですので、DDPTさんと僕のTwitterアカウントをフォローして情報解禁をお待ちいただければと思います。
次回はPLO戦略のスタートラインについて書きたいと思っています。そちらもお楽しみに!
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