キジン、ヘンジン。ひとり生きる魂に、愛の歌を

「変わってるって言われてたでしょ」
「言われたね」
「いつも言われるの?」
「まぁ、よく言われるかな」
「気にならないの?」
「まったく」
「それって強がり?」
「そう見える?」
「見えないね」
「だって本当に気にならないからね」
「僕も言われるんだよ」
「変わってるって?」
「うん」
「気になるのかい?」
「ならないよ」
「じゃあ僕と一緒じゃないか」
「違うよ」
「どうして?」
「だって僕は人間じゃないもん」
「なら僕は、いったい何と話しているんだろう」
「キジン」
「キジン?」
「ヘンジンかもしれないけど」
「それは人間のことじゃないの?」
「ううん。そういう生き物の名前なんだよ。だって『お前は人間じゃない』って言われたことあるもん」
「誰が言ったのそんなこと」
「忘れちゃったけど。だから気にならないんだ。僕は人間じゃないから」
「…それ、僕にくれないかな?」
「どれ?」
「片方だけでいいよ。君の持っているその名前、僕も欲しくなった」
「人間なのに?」
「人間じゃないかもしれない」
「僕と同じ?」
「そうだね」
「キジン?」
「うん」
「ヘンジン?」
「うん」
「本当に欲しいの?」
「うん」
「欲しがりだなぁ」
「君が持っているとね、なんだか良いものに見えてくる」
「しょうがない。1個だけだよ?どっちがいいの?」
「どちらでもいいよ。僕に似合う方を選んでくれ」
「じゃあヘンジン」
「ヘンジンか。僕にぴったりだ」
「おそろいだね」
「あぁ、おそろい」