ごめんなさいで赦されること
「『ごめんなさい』と言うけれど、お前が赦されたいだけだろう? 謝罪は態度で示せばいいし、本当に悔やんでいるなら二度としなければいい。お前は自分が赦されたいという一心で、薄っぺらな言葉を吐いているだけだよ」
「ごめんなさい」
「ほら見ろ。そうやってすぐ謝る」
「ごめんなさい」
「お前は何に謝っているんだ?」
「だって怒っているから…」
「怒っているから? 私が怒っているから謝るのか? それでは怒っていなかったら? 怒った態度を見せていなければ、同じことをしていてもお前は謝らないのか? それは本当に謝罪なのか?」
「…ごめんなさい」
「出まかせを言うんじゃないよ。反省もしていないんだろう? 何も変わらないじゃないか」
「……ごめんなさい」
「壊れたテープレコーダーかお前は。何かほかに言うことは?」
「……」
「謝りたいなら他の言葉も並べてごらんよ」
「……」
「だんまりか。ほら、だから口だけだと言ったんだ。その口すら役立たずだがな。同じ言葉しか言えやしない」
「……」
「反省したいならひとりですればいい。赦されたいなら自分に誓えばいい。迷惑をかけて怒らせて、その上許容を求めるなんて一方的にもほどがある」
「……」
「泣かないことだけは褒めてやろうか」
「……」
「……なんとか言ったらどうなんだ」
「……」
「……いいかい。人間はそんなに器用な生き物じゃない。自分を赦して生きるので精一杯なんだ。他人のことなんか赦しちゃいられないのさ。だからお前の言葉に意味なんかないんだよ。『ごめんなさい』なんてつまり無意味だ。分かった?」
「……」
「あーあ。泣いてしまったらもう、褒めるところもないのにね」